ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第8回(12月2日)

今回は、京都大学OCWで3回生向けに後期に行われたガロア理論の講義の第8回の内容の要約をします。ガロアの基本定理を証明します。

  1. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:目次
  2. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第1回(10月7日)
  3. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第2回(10月14日)
  4. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第3回(10月21日)2限
  5. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第3回(10月21日)3限
  6. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第4回(10月28日)
  7. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第5回(11月4日)
  8. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第6回(11月11日)
  9. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第7回(11月18日)
  10. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第8回(12月2日)← 今回
  11. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第9回(12月9日)

アルティンの補題 (00:08 ~)

今日はガロアの基本定理を証明します。アルティンの補題を使わずに、有限次分離拡大が単拡大であるという事実を使って証明する方法がありますが、不変式の計算にアルティンの補題があると便利なので、アルティンの補題を証明して、それを使ってガロアの基本定理を証明します。

体への群の作用 (01:09 ~)

定義. 忠実な作用 (01:09 ~)

$G$ を群, $K$ を体とする. $G$ の $K$ への作用とは, 写像

$$G \times K \ni (g, x) \mapsto \rho(g) (x) \in K$$

で, $g, h \in G$, $x \in K$ に対し

$$\rho(gh) (x) = \rho(g)(\rho(h) (x))$$

が成り立ち, $\rho(g)$ が $K$ の自己同型であるもののことである. (群の準同型 $\rho: G \to \operatorname{Hom}_{K}^{al}(K)$ が与えられることと同値.) $\rho$ が忠実 (faithful) であるとは, $\rho(g) = \mathrm{id}_K$ なら $g = 1$ が成り立つことである. ($\operatorname{Ker} \rho = \{1\}$ と同値.) $\Box$

(03:19 ~) $\rho(1)$ が恒等写像であることは

$$\rho(1)(x) = \rho(1 \cdot 1)(x) = \rho(1)(\rho(1)(x))$$

であることと $\rho(1)$ が全単射であることからわかります。

例. 1 (6:55 ~)

$G = \mathfrak{S}_n$, $k$ を体, $K = k(x_1, \cdots, x_n)$ とし, $\sigma \in \mathfrak{S}_n$ に対して $\sigma(x_i) = x_{\sigma(i)}$ と定めると, これは環の $k$ 自己同型

$$\rho(\sigma) : k[x_1, \cdots, x_n] \to k[x_1, \cdots, x_n]$$

を定める. これが $K$ 上の自己同型に拡張できること, $\rho$ が自己同型群への準同型であることを確かめる. 拡張できることは有理式を考えても良いが, ここでは局所化の普遍性を用いる. $A = k[x_1, \cdots, x_n]$, $S = A \setminus \{0\}$ とすれば, これは乗法的集合で, $K = S^{-1} A$ となる. $0 \notin \rho(S)$ であり,

$$\rho(\sigma): A \to A \hookrightarrow K$$

による $S$ の像は全て単元なので, 局所化の普遍性により以下の図式を可換にする $\rho^{\prime}(\sigma): K \to K$ がただ一つ定まる.

\[ \xymatrix{ A \ar@{^{(}->}[r] \ar[d]_{\rho(\sigma)} & K \ar@{.>}[ld]^{\rho^{\prime}(\sigma)} \\ K } \]

このように定義された $\rho^{\prime}$ が $K$ の作用であるか ($\rho^{\prime}(\sigma \tau) = \rho^{\prime}(\sigma)\rho(\tau)$ などを満たすか) を確認する必要がある. (動画では $\rho^{\prime}(\sigma)$ と $\rho(\sigma)$ を区別していませんが、ここでは区別します. ) $\rho^{\prime}(1) = \mathrm{id}_K$ は (上の図式から) 明らか. $\sigma, \tau \in \mathfrak{S}_n$ に対して

\begin{align} \rho(\sigma \tau)(x_i) &= x_{\sigma \tau(i)} = \rho(\sigma)(x_{\tau(i)}) \\ &= \rho(\sigma)(\rho(\tau)(x_{i})) \end{align}

なので, $A$ 上では $\rho(\sigma \tau) = \rho(\sigma)\rho(\tau)$ が成り立つ. 普遍性から $\rho^{\prime}(\sigma \tau) = \rho^{\prime}(\sigma)\rho^{\prime}(\tau)$ も成り立つ. (動画中では分数にしたときに、分母でも成り立つからと説明されていますが、それは有理式を考えていることになります. おそらく普遍性を用いて示す予定だったのだと思います.) よって

\begin{align} \rho^{\prime}( \sigma^{-1}) \rho^{\prime}( \sigma) &= \rho^{\prime}( \sigma^{-1} \sigma^{-1}) \\ &= \rho^{\prime}(1) = \mathrm{id}_K \end{align}

から, $\rho^{\prime}( \sigma)$ が全単射であることがわかる. 以上で $\rho^{\prime}: \mathfrak{S}_n \to \operatorname{Aut}_k^{al}K$ が群の準同型であることがわかった. ($\rho^{\prime}(\sigma)$ が $k$ 準同型であることは $k \hookrightarrow A$ が $\rho(\sigma)$ で不変であることと, 普遍性を示す図式の可換性からわかる)

もし $\rho^{\prime}(\sigma) = \mathrm{id}_K$ なら, 任意の $i$ に対して

$$x_{\sigma(i)} = \rho^{\prime}(\sigma)(x_i) = x_i$$

なので $\sigma = 1$. よって $\rho^{\prime}$ は忠実な作用である. $\Box$

(15:32 ~) アルティンの補題を証明した後、普遍式が基本対称式になって、ガロア群が $\mathfrak{S}_n$ であることがわかります。方程式論は最後にやるつもりですが、方程式論でガロア群が $\mathfrak{S}_n$ になって、$n$ が 5 以上のときは可解でないということから、方程式が冪根で解けないということに繋がります。

例. 2 (16:20 ~)

$n > 0$ とし $\zeta = e^{\frac{2\pi \sqrt{-1}}{n}}$ とする. $K = \mathbb{C}(x, y)$ に対し, $\sigma(x) = \zeta x$, $\sigma(y) = \zeta^{-1}y$ となる $\sigma \in \operatorname{Aut}_{\mathbb{C}}^{al} \mathbb{C}(x, y)$ が存在する (先程の例と同様のことをすれば良い). $\sigma^n = 1$, $1 \leq i < n$ ならば $\sigma^i \neq 1$ であることから $\langle \sigma \rangle \subset \operatorname{Aut}_{\mathbb{C}}^{al} \mathbb{C}(x, y)$ は $\mathbb{Z} / n \mathbb{Z}$ に同型で, $ \mathbb{C}(x, y)$ に忠実に作用する. $\Box$

基本対称式の復習 (19:48 ~)

$A$ を環, $x_1, \cdots, x_n \in A$ としたとき,

\begin{align} s_1 &= x_1 + \cdots + x_n \\ s_i &= \sum_{j_1 < \cdots < j_i} x_{j_1} \cdots x_{j_i} \\ s_n &= x_1 \cdots x_n \end{align}

と定める. $s_1, \cdots, s_n$ を基本対称式という.

アルティンの補題の証明 (21:58 ~)

定理. アルティン (Artin) の補題 (21:58 ~)

$L$ を体, $G$ を有限群とし, $G$ が $L$ に忠実に作用するとする. その作用を $\rho$ とおく. 不変体 $K$ を

$$K = L^{G} = \{x \in L \mid \forall g \in G, \ \rho(g) x = x\}$$

と定めると, $L / K$ はガロア拡大で, $\mathrm{Gal}(L / K) \simeq G$ が成り立つ. (特に,

$$[L:K] = |\mathrm{Gal}(L / K)| = |G|$$

が成り立つ)

(証明の概要) : 分離拡大であることを示す. $x \in L$ に対して

$$\{\rho(\sigma)(x) \mid \sigma \in G\} = \{x_1, \cdots, x_n\}$$

とおく. ただし $x_i \neq x_j$ $(i \neq j)$ とする. このとき $s_1 \cdots, s_n$ を $x_1, \cdots, x_n$ の基本対称式とし

$$f(t) = t^n -s_1t^{n-1} + \cdots + (-1)^n s_n$$

とおくと, (根と係数の関係から) 任意の $i$ に対して $f(x_i) = 0$ が成り立つ. 特に $f(x) = 0$. また, 任意の $\tau \in G$ に対して, $\rho(\tau)(x_i)$ はある $x_j$ に一致するので, $\rho(\tau)(s_i) = s_i$, つまり $s_i \in K$ である. よって $f(t) \in K[t]$ である. 根 $x_1, \cdots, x_n$ は全て異なるので, $f(t)$ は分離多項式. よって $L / K$ は分離的. (代数拡大でもある.)

$f(t)$ の構成から, $f(t)$ の次数は $|G|$ 以下である. ここでもし $[L : K] > G$ であれば, $x_1, \cdots, x_m \in L$ $(m > |G|)$ で, $K$ 上一次独立であるものが存在する. このとき $K(x_1, \cdots, x_m) / K$ 有限次分離拡大である. これは前回示した定理より, ある $\alpha \in K(x_1, \cdots, x_m)$ が存在して $K(x_1, \cdots, x_m) = K(\alpha)$ となる. このとき $[K(\alpha): K] > |G|$ となり, 矛盾. よって $[L : K] \leq |G|$ である.

$L/K$ は有限次分離拡大なので $L = K(\alpha)$ となる $\alpha \in L$ が存在する.

$$\{\rho(\sigma)(\alpha) \mid \sigma \in G\} = \{\alpha_1, \cdots, \alpha_n\}$$

とおく. $s^{\prime}_1, \cdots, s^{\prime}_n$ を $\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ の基本対称式とし,

$$\bar{f}(t) = t^n -s^{\prime}_1 t^{n-1} + \cdots $$

と定めると, $\bar{f}(t)$ は $\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ を根に持つ. $\alpha$ の最小多項式は $\bar{f}$ の約元であり, その根は $\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ のどれかなので, $\alpha$ の共役は全て $L$ に含まれ, $L / K$ が正規拡大, つまりガロア拡大であることがわかる.

(ここからは講義の証明と異なります (38:30 ~)) $\rho(\sigma)$ は定義から $\rho(\sigma)|_K = \mathrm{id}_K$ であり, $L$ 上の $K$ 自己同型なので $\rho(\sigma) \in \mathrm{Gal}(L/K)$ である. 作用が忠実なので $\rho: G \to \mathrm{Gal}(L/K)$ は単射であり,

$$|G| \leq |\mathrm{Gal}(L/K)| = [L:K]$$

となる. 先程 $[L : K] \leq |G|$ を示したので, $|G| = |\mathrm{Gal}(L/K)|$ であり, $\rho$ は全単射になる. 特に $G \simeq \mathrm{Gal}(L/K)$. $\Box$

例. 基本対称式は対称式を生成する (39:36 ~)

$L = k (x_1, \cdots, x_n)$, $G = \mathfrak{S}_n$ とおくと, (先程の例から) $G$ は $L$ に忠実に作用する. このとき $K = L^{G}$ は

$$K = k(s_1, \cdots, s_n)$$

であることを示す. 基本対称式は $G$ の作用で不変なので $F = k(s_1, \cdots, s_n)$ とおけば $F \subset K$. アルティンの補題から $[L : K] = |G| = n!$ が成り立つ. このとき $[L : F] \leq n!$ を示せば,

$$[L:K] \geq [L:F] = [L :K][K:F]$$

から $[K:F] = 0$ が成り立ち. $F = K$ が示される. よって $[L : F] \leq n!$ を示す.

$k \subset F$ なので, $L = F(x_1, \cdots, x_n)$ が成り立つ. $x_1, \cdots, x_n$ は全て

$$f(t) = t^n -s_1 t^{n-1} + \cdots +(-1)^n s_n \in F[t]$$

の根である. $x_1, \cdots, x_n$ は全て異なるので, $L/F$ は分離拡大. また, $L$ は $F$ 上 $f(t)$ の最小分解体なので $L / F$ 正規拡大. (講義中で示していない気がするので後で補足します.) よって $L / F$ はガロア拡大である. $[L : F] = |\mathrm{Gal}(L / F)|$ なので $|\mathrm{Gal}(L / F)| \leq n!$ を示せば良い.

$\sigma \in \mathrm{Gal}(L / F)$ は生成元の行き先のみで決まり, $\sigma(f(x_i)) = f(\sigma(x_i)) = 0$ なので, $\sigma$ は $\{x_1, \cdots, x_n\}$ の置換を引き起こし, $|\mathrm{Gal}(L / F)| \leq |\mathfrak{S}_n| = n!$ となる. これで $F = K$ が示された. $\Box$

(補足) 証明中に、$L /K$ がある多項式の最小分解体である $\Rightarrow$ 正規拡大であることを用いましたが、$L /K$ がある多項式の最小分解体 $\Leftrightarrow$ $L / K$ は有限次正規拡大、を証明します。

($\Rightarrow$) $L$ を $f(x) \in K[x]$ の最小分解体とします。$f(x)$ の $\overline{K}$ での全ての根を $\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ とおきます。このとき $L = K(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)$ で、これは有限次拡大です。任意の $\varphi \in \operatorname{Hom}_K^{al}(L, \overline{K})$ に対して $\varphi(f(\alpha_i)) = f(\varphi(\alpha_i)) = 0$ なので、$\varphi(L) \subset L$ が成り立ちます。以前示した命題より、$L / K$ は正規拡大です。

($\Leftarrow$) $L / K$ を有限次正規拡大とします。有限次拡大なので、$\alpha_1, \cdots, \alpha_n \in L$ が存在して $L = K(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)$ となります。$f_i(x) \in K[x]$ を $\alpha_i$ の $K$ 上の最小多項式とし、$f(x) = \prod_{i=1}^n f_i(x)$ とおきます。$L / K$ は正規なので、定義から $f(x)$ の根は全て $L$ に含まれます。つまり $L$ は $f(x)$ の分解体です。最小性は、$L$ が $f(x)$ の根 (の一部) で生成されることからわかります。 $\Box$

(48:30 ~) 上記のことは、環レベルでも正しいことが知られています。つまり、

$$k[x_1, \cdots, x_n]^{\mathfrak{S}_n} = k[s_1, \cdots, s_n]$$

が成り立ちます。この証明は講義では省略します。

ガロアの基本定理 (49:30 ~)

定義. (49:38 ~)

$L / K$ を有限次ガロア拡大とする.

  1. $L \supset M \supset K$ に対して $H(M) = \mathrm{Gal}(L / M)$ とおく. これは $H(M) \subset \mathrm{Gal}(L / K)$ を満たす.
  2. 部分群 $H \subset \mathrm{Gal}(L / K)$ に対して $M_H = L^H$ とおき, $H$ の不変体という.$\Box$

(51:35 ~) 定義のときに $L \supset M \supset K$ の $L / M$ がガロア拡大であるとしてしまいましたが、これは次のようにわかります。$\alpha \in L$ は $K$ 上分離的なので、$K$ 上分離的な多項式の根になります。その多項式は $M$ 上の多項式なので $M$ 上分離的です。また、$L / K$ は正規なので $\alpha$ の $K$ 上の共役 (つまり $\alpha$ の $K$ 上の最小多項式 $f(x)$ の根) は全て $L$ に含まれますが、$\alpha$ の $M$ 上の共役も ($\alpha$ の $M$ 上の最小多項式が $f(x)$ を割り切るので) 全て $L$ に含まれます。よって $L / M$ は正規です。

定理. ガロアの基本定理 (52:17 ~)

$L / K$ を有限次ガロア拡大, $G = \mathrm{Gal}(L / K)$ とし, $\mathbb{M}$ を $L / K$ の中間体全体の集合, $\mathbb{H}$ を $G$ の部分群全体の集合とする. このとき

  1. $\mathbb{M}$ と $\mathbb{H}$ の間の写像
    \begin{align} \mathbb{M} \ni M &\longmapsto H(M) \in \mathbb{H} \\ \mathbb{H} \ni H &\longmapsto M_H \in \mathbb{M} \\ \end{align}
    は互いに逆写像になる.
  2. 上の対応で、包含関係が逆になる. つまり $M_1, M_2 \in \mathbb{M}$ にそれぞれ対応する群を $H_1, H_2 \in \mathbb{H}$ とおくと,
    $$M_1 \subset M_2 \Leftrightarrow H_1 \supset H_2$$
    が成り立つ. また,
    \begin{align}M_1 \cdot M_2 &\longleftrightarrow H_1 \cap H_2, \\ M_1 \cap M_2 & \longleftrightarrow \langle H_1, H_2 \rangle\end{align}
    という対応が成り立つ.
  3. $M \in\mathbb{M}$ に対応する群を $H \in \mathbb{H}$ とおく. このとき $\sigma \in G$ に対して $\sigma(M) \in \mathbb{M}$ は $\sigma H \sigma^{-1}$ に対応する. さらに,
    $$M / K \textrm{ がガロア拡大} \Leftrightarrow H \triangleleft G \ (\textrm{正規部分群})$$
    が成り立つ. このとき, $\sigma \in G$ の $M$ への制限写像 $\mathrm{Gal}(L / K) \to \mathrm{Gal}(M / K)$ により,
    $$G / H \simeq \mathrm{Gal}(M / K)$$
    が得られる.

(証明の概要) : (1) を示す. $M_{H(M)} = M$ かつ $H(M_H) = H$ を示せば良い. $M \in \mathbb{M}$ とする. $M_{H(M)}$ を考えると, $H(M)$ は $M$ を固定する $L$ の自己同型全体, $M_{H(M)}$ は $H(M)$ によって固定される $L$ の元全体なので, $M_{H(M)} \supset M$. $\mathrm{Gal}(L / K)$ は $L$ に忠実に作用するので, $H(M)$ も $L$ に忠実に作用する. アルティンの補題から,

$$[L : M_{H(M)}] = |H(M)| = |\mathrm{Gal}(L / M)| = [L : M]$$

が成り立つ. $M_{H(M)} \supset M$ かつ拡大次数が等しいので, $M_{H(M)} = M$ が成り立つ.

$H \in \mathbb{H}$ とする. $M_H$ は $H$ で不変な $L$ の元全体, $H(M_H)$ はそれを不変にする $L$ の自己同型全体なので, $H \subset H(M_H)$. 定義から $H(M_H) = \mathrm{Gal}(L / M_H)$ であり, $H$ は $L$ に忠実に作用するので, アルティンの補題から

$$|H| = [L : M_H] = | \mathrm{Gal}(L / M_H)| = |H(M_H)|$$

となる. $|H(M_H)| < \infty$ なので, $H(M_H) = H$ となる. これで (1) が示された.

(2) を示す. $M_1 \subset M_2$ とする. $H(M_2)$ は $M_2$ を固定する $L$ の自己同型で, これは $M_1$ も固定するので $H(M_1) \supset H(M_2)$. 逆に $H_1 \supset H_2$ とすると, $M_{H_1}$ は $H_1$ で固定される $L$ の元で, それは $H_2$ によっても固定されるので, $M_{H_1} \subset M_{H_2}$.

$M_1, M_2 \in \mathbb{M}$ に対応する群それぞれを $H_1, H_2 \in \mathbb{H}$ とおく. $M_1, M_2$ はともに $H_1 \cap H_2$ で固定される. よって $H_1 \cap H_2$ の不変体 $M_{H_1 \cap H_2}$ は $M_1$, $M_2$ を含むので, $M_1 \cdot M_2 \subset M_{H_1 \cap H_2}$ となる. $M_1 \cdot M_2$ に対応する群を $H$ とおけば, $H \supset H_1 \cap H_2$. 一方, $H$ は $M_1$ と $M_2$ を固定するので, $H \subset H_1 \cap H_2$. よって $H = H_1 \cap H_2$, つまり $M_1 \cdot M_2$ と $H_1 \cap H_2$ が対応する.

(補足) $M_1 \cap M_2$ が $\langle H_1, H_2\rangle$ に対応することの証明が省略されたので補足します. $M_1 \cap M_2$ は $H_1, H_2$ で固定されるので, $\langle H_1, H_2\rangle$ でも固定される. よって $H(M_1 \cap M_2) \supset \langle H_1, H_2\rangle$. 一方 $M_{\langle H_1, H_2\rangle}$ は, $H_1$ と $H_2$ で固定されるので $M_{\langle H_1, H_2\rangle} \subset M_1, M_2$, つまり $M_{\langle H_1, H_2\rangle} \subset M_1 \cap M_2$ となる. 従って $H(M_1 \cap M_2) \subset \langle H_1, H_2\rangle$. これで $H(M_1 \cap M_2) = \langle H_1, H_2\rangle$, つまり $M_1 \cap M_2$ と $\langle H_1, H_2\rangle$ が対応することがわかる. これで (2) が示された.

(3) を示す. $\sigma(M)$ を固定する群を考える. $\tau \in \mathrm{Gal}(L / K)$ が $\sigma(M)$ を固定するならば, 任意の $x \in M$ に対して $\tau(\sigma(x)) = \sigma(x)$ つまり $\sigma^{-1}\tau\sigma(x) = x$ が成り立つ. よって

\begin{align} & \tau \in H_{\sigma(M)} \\ \Leftrightarrow \ & \sigma^{-1}\tau\sigma \in H_M \\ \Leftrightarrow \ & \tau \in \sigma H_M \sigma^{-1} \end{align}

つまり $H_{\sigma(M)} = \sigma H_M \sigma^{-1}$ となる.

特に, $\sigma(M) = M$ と $\sigma H_M \sigma^{-1} = H_M$ が同値である. ここで, $M / K$ がガロア拡大ならば, 任意の $\sigma \in \mathrm{Gal}(L / K)$ に対して $\sigma(M) = M$ なので, $H_M$ は $\mathrm{Gal}(L / K)$ の正規部分群になる. 逆に $H_M \triangleleft \mathrm{Gal}(L / K)$ とする. 任意の $\sigma^{\prime} \in \mathrm{Hom}_K^{al}(M, \overline{K})$ は代数閉包の一意性の証明と同様の方法で $\mathrm{Hom}_K^{al}(L, \overline{K})$ に拡張できるが, $L / K$ がガロア拡大なので, $\sigma^{\prime}(L) \subset L$, さらに以前示した命題から $\sigma^{\prime} \in \mathrm{Gal}(L/K)$. $H_M$ が正規部分群なので, $\sigma^{\prime} H_M {\sigma^{\prime}}^{-1} = H_M$ つまり $\sigma^{\prime}(M) = M$ となり, $M/K$ が正規拡大であることがわかる. 分離拡大であることは明らかなので, $M / K$ はガロア拡大.

最後に、写像

$$\mathrm{Gal}(L / K) \ni \sigma \mapsto \sigma|_M \in \mathrm{Gal}(M / K)$$

を考える. これが群準同型であることは明らかで, 全射であることは $M$ の自己準同型を $L$ の自己準同型に拡張できることからわかる. この写像の核は $\sigma|_M = 1$ を満たす元全体, つまり $H_M$ なので

$$\mathrm{Gal}(L / K) / H_M \simeq \mathrm{Gal}(M / K)$$

が成り立つ. $\Box$

次回は例を少しやって、3次多項式、できれば4次多項式のガロア群の話をします。

次回

ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第9回(12月9日)