【ルベーグ積分】測度論が難しいのはストーリーが悪いのでは?

[2025/11/24 更新]

測度論に苦手意識を持つ人は多いようです。私もその一人で、学生の頃に結構勉強したつもりでしたが、この記事を書くときには全て忘れていました。振り返ってみると、測度論はルベーグの収束定理やフビニの定理のようなインパクトのある定理に目を取られがちであり、かつ話の流れが掴みにくいわりに個々の命題の証明はちまちましていて飽きてしまうというのが原因だったように思います。そしてその要因の一つは、「測度というものがありまして、、、」と物語が突然始まってしまうことにあるような気がしています。

ルベーグ積分論の教科書の流れは、多少の前後はあれど概ね以下の通りだと思います。

  1. 測度の定義、ルベーグ積分の定義
  2. 収束定理の証明
  3. 測度の構成法
  4. 直積測度の構成とフビニの定理
  5. ルベーグ測度の構成 & ルベーグ積分とリーマン積分の関係

個人的にはルベーグ積分の面白さは、$\mathbb{R}$ や $\mathbb{R}^n$ ではなく「一般の空間 $X$」への積分の一般化にあると思っています。そしてこれはリーマン積分との明確な違いです。しかし、測度の話から始めると具体例として $\mathbb{R}$ や $\mathbb{R}^n$ の部分集合の長さ、体積を挙げざるを得ず、学習者が「$\mathbb{R}^n$ 上の積分」というコンテキストから逃れにくくなってしまいます。

また、測度をどう構成するか、というのが測度論の最も重要かつ大変なところであると思われますが、「$\mathbb{R}^n$ 上の積分」というコンテキストの中にいると、こんなに仰々しくちまちましたこと何でやらなきゃいけないんだろう、リーマン積分で何がいかんのだ、という気がしてきてそれ以降を学ぶ理由がわからなくなります。

そこでこの記事では、一般の空間 $X$ 上へ積分の一般化を物語の起点とし、その定義に必要な集合関数の性質を抽出して、測度を導入します。このような流れにすると、測度の構成や本当にリーマン積分の一般化になっているかという問題がより興味を惹く問題になると思います。(ただしこの記事はあくまでお話であり、数学的な厳密性は保証しません。)

調査の過程でルベーグ積分の歴史の文献 ([藤田]) とダニエル積分に関する文献 ([山上]) を見つけたのでリンクだけ貼っておきます。

※注意: 本記事では測度論の用語を定義なしに用いる場合があります。

一般の空間上の積分をどう定義するか?

リーマン積分は $\mathbb{R}^n$ 上の関数 $g: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}$ に対し定義されました。これを一般の空間 (あるいはだたの集合) $X$ 上の関数

$$f: X \to \mathbb{R} $$

に対して定義することを考えましょう。

リーマン積分のおさらい

まずリーマン積分をおさらいしましょう。区間 $I = (a, b]$ 上の関数 $g: I \to \mathbb{R}$ に対し、$I$ の細分

$$a = a_0 < a_1 < \dots < a_{n-1} < a_n = b$$

と2種類の和

$$\underline{s_n}(g) = \sum_{i = 0}^{n-1} \left( \inf_{x \in (a_i, a_{i+1}]} g(x) \right) \mu((a_i, a_{i+1}])$$

$$\overline{s_n} (g) = \sum_{i = 0}^{n-1} \left( \sup_{x \in (a_i, a_{i+1}]} g(x) \right) \mu((a_i, a_{i+1}])$$

を考え、細分の極限をとったときに両方の値が一致すれば、その値を $g$ の積分値とするのでした。ただし、$\mu((a_i, a_{i+1}]) = a_{i+1}-a_i$ であり、区間 $(a_i, a_{i+1}]$ の長さを表します。このように、リーマン積分では定義域 $I \subset \mathbb{R}$ の区間による分割を ( $I \subset \mathbb{R}^n$ の場合は区間の直積集合による分割を ) 用いることで積分を定義します。

一般の空間 $X$ での積分

一般の空間 $X$ ではこのような標準的な分割方法がないため、上記の方法では積分を定義することができません。空間に応じてそれぞれ分割方法を考え、それぞれの場合に積分を定義することは可能かもしれませんが、面倒です。( ちなみに多様体の場合は微分形式の積分がリーマン式で定義できます。 リーマン式での定義が難しいものの例としては、位相群上のハール測度や Giry モナドなどがあります。他にももっとあると思います。)

そこで積分したい関数の値域が $\mathbb{R}$ であることに目をつけると、値域の分割によって積分を定義する (グラフで描くと、横に分割する) というアイディアが、一般の空間上の積分を定義するのに非常に合理的であると考えられます。その方針で、非負関数 $f: X \to \mathbb{R}$ に対する上記の和 $\underline{s_n}(f)$ を書き直すと、$\mathbb{R}$ の分割

$$0 = a_0 < a_1 < \dots < a_{n-1} < a_n = \infty$$

に対し

$$\underline{s_n} (f) = \sum_{i = 0}^{n-1} \left( \inf_{x \in {f}^{-1}((a_i, a_{i+1}])} f(x) \right) \mu \left({f}^{-1}((a_i, a_{i+1}] ) \right)$$

となります。$\mu \left({f}^{-1}((a_i, a_{i+1}] ) \right)$ をどう定義するか、という問題はさておき、とりあえず

  1. $\mu \left(f^{-1}((a_i, a_{i+1}] ) \right)$ という値が定まれば、$\underline{s_n}(f)$ が定まる
  2. $\underline{s_n}(f)$ が細分の極限の取り方によらなければ積分が定義できそう

ということがわかります。($\overline{s_n}(f)$ を考えない理由は後ほど述べます。)

$\mu$ は ${f}^{-1}((a_i, a_{i+1}] )$ の面積に相当するものなので、

$$\mu \left(f^{-1}((a_i, a_{i+1}] ) \right) > 0,$$

$$\begin{align*} & \mu \left(f^{-1}((a_k, a_{k+1}]) \cup f^{-1}((a_i, a_{i+1}]) \right) \\ = \ &\mu \left(f^{-1}((a_k, a_{k+1}])\right) + \mu \left(f^{-1}((a_i, a_{i+1}]) \right) \quad (i \neq k) \end{align*}$$

が成り立つとします。

2 に関しては、$f \geq 0$ であれば $\underline{s_n}(f)$ は細分を細かくするほど大きくなるので、ありとあらゆる細分の極大値と定義しておけば値が確定します。理論上はそうしておいた方が良いかもしれません。一般の関数に関しては、$f$ を $f = f_{+} -f_{-}$ $(f_{+}, f_{-} \geq 0)$ と分解して考えれば、両方の細分の極大値が無限大でない限り値が確定します。

[追記] ちなみに $\underline{s_n} (f)$ よりも小さい

$$\underline{s^{\prime}_n}(f) = \sum_{i = 0}^{n-1} a_i \mu \left({f}^{-1}((a_i, a_{i+1}] ) \right)$$

を考えても良いです。また、”横に分割する” という発想からは、(高さ $a_{i+1} -a_i$ の) 横に平べったい図形の和

$$\sum_{i = 0}^{n-1} (a_{i+1} -a_i) \mu \left({f}^{-1}((a_{i+1}, \infty]) \right)$$

をとる方法も考えられますが、$\mu$ が $A \cap B = \emptyset$ $\Rightarrow$ $\mu(A \cup B) = \mu(A) + \mu(B)$ という性質を持ち、無限と $0$ の積は $\infty \cdot 0 = 0$ を満たすというルールを設ければ $\underline{s^{\prime}_n} (f)$ に一致します。

$\mu$ の持つべき性質

積分の基本的な性質として、線形性と非負性 (被可積分関数が任意の点で非負であれば積分値が非負であること) が挙げられます。この観点で $\mu$ が持つべき性質を考えましょう。

ただ毎回 $f^{-1}((a_i, a_{i+1}])$ と書くのは面倒なので、少し記号を整理しましょう。$\mathcal{P}(X)$ を $X$ の部分集合全体の集合とし、

$$\mathfrak{M}_f = \{f^{-1}((a, b]) \mid a, b \in \mathbb{R}, \ a < b\} \subset \mathcal{P}(X)$$

とします。そして $\mu$ は集合関数 $\mu: \mathfrak{M}_f \to \mathbb{R} \cup \{+\infty\}$ と考えます。また、$f = f_+ -f_{-}$ $(f_+, f_{-} \geq 0)$ と分解し、$\underline{s_n}(f_{+})$, $\underline{s_n}(f_{-})$ のありとあらゆる分割の極大値の差を $F(f)$ と表します。

ここまでは特定の $f$ のみを考えてきましたが、$\mu$ は $X$ 上の積分を定義するためのものである以上、$\mu$ は特定の $f$ に依存するものではなく、$\mathfrak{M}_f$ に含まれない $X$ の部分集合に対しても定義できるべきです。ただ、どこまで広くできるかは自明ではないので、$\mu$ の定義域を $\mathfrak{M}$ とおいて、$\mathfrak{M}_f \subset \mathfrak{M}$ となる $f$ だけを積分の対象とします。

( $\mathfrak{M}$ が大きければ大きいほど積分可能な関数が増えるため、$\mathfrak{M}$ はなるべく大きいことが望ましいです。では $\mathfrak{M} = \mathcal{P}(X)$ とすればいいのではないかと思われるかもしれませんが、一般的にはできないことが知られています。例えばルベーグ測度には非可測集合が存在してしまいます。)

$A \subset X$ に対して関数 $1_A(x)$ を、$x \in A$ のとき $1$、そうでないとき $0$ であるものとします。$A \in \mathfrak{M}$ に対して定義から

$$\underline{s_n}(1_A) = \mu(A)$$

が、細分をある程度細かくすることで成り立ちます。したがって $F(1_A) = \mu(A)$ になります。このとき、積分の非負性から

$$\mu(A) \geq 0$$

が成り立たなければなりません。

積分は線形性をもつはずなので、$A, B \in \mathfrak{M}$ に対して

$$F(1_A + 1_B) = F(1_A) + F(1_B)$$

が成り立つべきです。$A \cap B = \emptyset$ ならば

\begin{align} F(1_A + 1_B) &= \mu(A \cup B), \\ F(1_A + 1_B) &= F(1_A) + F(1_B) \\ &= \mu(A) + \mu(B) \end{align}

なので

$$\mu(A \cup B) = \mu(A) + \mu(B)$$

が成り立つべきです。

$B = \emptyset$ とすれば、$1_B \equiv 0$ なので

$$\mu(\emptyset) = F(0) = 0$$

も成り立つべきです。よって $\underline{s_n}$ の極限として積分を定義するには、最低限 $\mu$ に上記のような性質を仮定する必要があります。整理すると、

  1. $\mu(A) \geq 0$
  2. $A \cap B = \emptyset$ ならば $\mu(A \cup B) = \mu(A) + \mu(B)$
  3. $\mu(\emptyset) = 0$

を満たす必要があります。

再び線形性から、$A, B \in \mathfrak{M}$, $A \cap B \neq \emptyset$ である場合に $1_A + 1_B$ を考えると、$x \in A \cap B$ で $1_A(x) + 1_B(x) = 2$、それ以外では $1$ または $0$ なので、値域を十分細分したときの $2$ を含む区間の逆像は $A \cap B$ になります。よって $1_A + 1_B$ が積分できるためには $A \cap B \in \mathfrak{M}$ であることが必要です。さらに

$$\begin{align*} 1_{A\setminus B} &= 1_{A} -1_{A \cap B} \\ 1_{A \cup B} &= 1_{A} + 1_{B} -1_{A \cap B} \\ \end{align*}$$

なので、$A\setminus B, A \cup B \in \mathfrak{M}$ も、積分が線形性を持つには必要な条件であることがわかります。$\mu$ に関しては

\begin{align} F(1_{A \cup B}) &= F(1_A + 1_B -1_{A \cap B}) = F(1_A) + F(1_B) -F(1_{A \cap B}) \\ F(1_{A \setminus B}) &= F(1_A -1_{A \cap B}) = F(1_A) -F(1_{A \cap B}) \end{align}

が成り立つので、

\begin{align} \mu(A \cup B) &= \mu(A) + \mu(B) -\mu(A \cap B) \\ \mu(A \setminus B) &= \mu(A) -\mu(A \cap B) \end{align}

を満たして欲しいです。

最後に次のような連続性を考えます。

  • $A_1 \subset \cdots \subset A_n \subset \cdots$ ならば $\bigcup_{n=1}^{\infty} A_n \in \mathfrak{M}$
  • $\mu(\bigcup_{n=1}^{\infty} A_n) = \lim \mu (A_n)$

これを $\mu$ の性質として仮定する根拠はありませんが、この条件が理論上邪魔にならないならば仮定するべきです。実際邪魔にならず、それどころか収束定理の要となります。

測度と積分の定義

測度の定義

以上を考慮しつつ、測度の定義について述べましょう。

定義. $\sigma$-加法族、可測空間、可測集合

$X$ を集合とし、$\mathfrak{M}$ をその部分集合族とする. $\mathfrak{M}$ が以下の条件を満たすとき, $\mathfrak{M}$ を $\sigma$-加法族という.

  1. $X, \emptyset \in \mathfrak{M}$
  2. $A \in \mathfrak{M} \Rightarrow X \setminus A \in \mathfrak{M}$
  3. $A_n \in \mathfrak{M} \> (n = 1, 2, \cdots) \Rightarrow \bigcup_{n=1}^{\infty} A_n \in \mathfrak{M}$

組 $(X, \mathfrak{M})$ を可測空間という。また、$\mathfrak{M}$ の元を可測集合という。$\Box$

定義. 測度

$(X, \mathfrak{M})$ を可測空間とする. $\mathfrak{M}$ 上の関数 $\mu$ が以下の条件を満たすとき, $\mu$ を測度という.

  1. $A \in \mathfrak{M}$ に対し、$0 \leq \mu(A) \leq +\infty$, $\mu(\emptyset) = 0$.
  2. $A_n \in \mathfrak{M} \> (n = 1, 2, \cdots)$ で $A_n \cap A_m = \emptyset$ $(n \neq m)$ ならば
    $$\mu(\bigcup_{n = 1}^{\infty} A_n) = \sum_{n=1}^{\infty} \mu(A_n)$$
    が成り立つ.

三つ組 $(X, \mathfrak{M}, \mu)$ を測度空間という. $\Box$

定義について少し補足します。先ほど、$A, B \in \mathfrak{M}$ ならば $A \cap B$, $A \setminus B$, $A \cup B$ が $\mathfrak{M}$ に含まれるべきと述べましたが、それらは $\sigma$-加法族の定義から簡単に導かれます。$\sigma$-加法族の条件3は、条件1と2のもとで以下の 2 つの条件が成り立つことと同値です。

  • $A, B \in \mathfrak{M}$ ならば $A \cap B \in \mathfrak{M}$
  • $A_n \in \mathfrak{M} \> (n = 1, 2, \cdots)$ で $A_1 \subset \cdots \subset A_n \subset \cdots$ ならば $\bigcup_{n=1}^{\infty} A_n \in \mathfrak{M}$

証明は簡単なので省略します。上記の言い換えは測度論の教科書内で暗黙的に使われることがあります。ちなみに、ディンキン族や単調族といった、$\sigma$-加法族を弱めた集合族があり、〇〇の条件のもとでそれらが $\sigma$-加法族になる、というような定理が教科書に出てきますが、このような言い換えを知っていると理解が楽になると思います。

完備化

先ほど、測度 $\mu$ の定義域はできるだけ大きい方がいいと述べましたが、測度が明らかに $0$ と思しき集合に対して測度を拡張することができます。

$$\overline{\mathfrak{M}} = \{ A \subset X \mid B_1 \subset A \subset B_2, \mu(B_1) = \mu(B_2) \text{
となる} B_1, B_2 \in \mathfrak{M} \text{が存在する}\}$$

とし、$\overline{\mu}(A) = \mu(B_1) \ (= \mu(B_2))$ とおくと、$(X, \overline{\mathfrak{M}}, \overline{\mu})$ は測度空間となります。これを完備化と言います。これによって、$\mu(N) = 0$ を満たす $N \in \mathfrak{M}$ の部分集合すべてが $\overline{\mu}$ の定義域となります。

積分の定義

積分の定義自体はそれほど難しくないので、軽く触れる程度にします。積分の定義を簡単にいうと、単関数の積分を定義し、その下からの極限として非負関数の積分を定義します。非負でない関数や複素数値関数の場合は関数を適当に分割し、積分の線形性を利用することで定義します。

もう少し詳しく説明します。$\varphi: X \to \mathbb{R}$ が有限個の値しか取らないとき、$\varphi$ を単関数といいます。$\varphi$ を非負単関数とし、$\varphi$ のとる値を $0 \leq a_1 \leq \cdots \leq a_n$ とします。$\varphi^{-1}(a_i) \in \mathfrak{M}$ であるとき、$\varphi$ の積分を

$$\int_X \varphi d\mu = \sum_{i} a_i \mu(\varphi^{-1}(a_i))$$

と定義します。

$\mathbb{R}$ の任意の区間 $(a, b]$ を含む最小の $\sigma$-加法族を $\mathfrak{B}(\mathbb{R})$ と書き、$\mathbb{R}$ のボレル集合族といいます。定義から、任意の $a \in \mathbb{R}$ に対し $\{a\} \in \mathfrak{B}(\mathbb{R})$ です。$f: X \to \mathbb{R}$ が任意の $B \in \mathfrak{B}(\mathbb{R})$ に対して $f^{-1}(B) \in \mathfrak{M}$ であるとき、$f$ を可測関数といいます。単関数 $\varphi$ が $\varphi^{-1}(a_i) \in \mathfrak{M}$ を満たすことは $\varphi$ が可測であると言い換えられます。

非負可測関数 $f$ に対しての積分は、可測非負単関数の非減少列 $\{\varphi_n\}$ で $\lim_{n \to \infty} \varphi_n(x) = f(x)$ (各点収束) を満たすものに対し、

$$\int_X f d\mu = \lim_{n \to \infty} \int_X \varphi_n d\mu$$

と定義します。これは単関数の取り方によりません (証明は自明ではありませんが、省略します) 。$\{\varphi_n\}$ が非減少列である点に関しては、そう仮定しないと、$\mu(X) = \infty$ の場合に $\int \varphi_n d\mu = \infty$ で $\varphi_n(x) \to 0$ となる列を簡単に作れてしまい、列の取り方によって値が異なってしまうからです (これが $\overline{s_n} (f)$ を考えなかった理由です)。

単関数の非減少列のつくり方は、$\underline{s_n} (f)$ の定義を参考に単関数

$$\underline{f_n} = \sum_{i = 0}^{n-1} \left( \inf_{x \in {f}^{-1}((a_i, a_{i+1}])} f(x) \right) 1_{{f}^{-1}((a_i, a_{i+1}] )}$$

をつくり、$f$ に各点収束するように分割

$$0 = a_0 < a_1 < \dots < a_{n-1} < a_n = \infty$$

を細かくする方法がありますし、分割をより明示的にとる方法もあります。大体の教科書には載っていると思います。

測度の構成

測度を定義するモチベーションを、積分が定義できる空間の一般化としていましたから、様々な集合上で測度を構成できなければ意味がありません。最低でも $\mathbb{R}$ 上の測度ぐらいは構成できなければ、$\mathbb{R}$ 上の積分さえ定義できません。幸い、測度を構成する良い方法があります。

外測度の方法

外測度と呼ばれる、測度より緩い条件をもつ $\mathcal{P}(X)$ 上の関数を定義し、その定義域を制限することで測度を構成することができます。

定義. 外測度

$X$ を集合とする. $\mathcal{P}(X)$ 上の関数 $\Gamma$ で以下の性質を満たすものを外測度という.

  1. $0 \leq \Gamma(A) \leq \infty$, $\> \Gamma(\emptyset) = 0$
  2. $A \subset B \Rightarrow \Gamma(A) \leq \Gamma(B)$
  3. $\Gamma(\bigcup_{n = 1}^{\infty} A_n) \leq \sum_{n=1}^{\infty} \Gamma(A_n)$

 $\Box$

測度との違いは、”すべての部分集合上”で定義されていることと、条件3の $A_n$ たちが非交和でも等式が成り立たないことです。条件2は測度の場合も成り立ちます。

このとき、次の定理が成り立ちます。

定理. 1

$\Gamma$ を $X$ 上の外測度とし, $\mathfrak{M}_{\Gamma}$ を任意の $A \subset X$ に対して以下の条件を満たす集合 $E \subset X$ 全体とする.

$$\Gamma(A \cap E) + \Gamma(A \cap (X \setminus E)) = \Gamma(A)$$

このとき $(X, \mathfrak{M}_{\Gamma}, \Gamma)$ は測度空間となる. $\Box$

簡単な例を挙げます。$X = \{1, 2, 3\}$ とし、

\begin{align} &\Gamma(\{1\}) = 1 \\ &\Gamma(\{2\}) = \Gamma(\{3\}) = 2 \\ &\Gamma(\{2, 3\}) = 2 \\ &\Gamma(\{1, 3\}) = \Gamma(\{1, 2\}) = 3 \\ &\Gamma(\{1, 2, 3\}) = 3 \end{align}

とします。$\Gamma$ は $X$ 上の外測度になりますが、$\Gamma(\{1, 2, 3\}) < \Gamma(\{1, 2\}) + \Gamma(\{3\}) = 5$ なので測度ではありません。計算すると、

$$\mathfrak{M}_{\Gamma} = \{\emptyset, \{1\}, \{2, 3\}, \{1, 2, 3\}\}$$

となり、$(X, \mathfrak{M}_{\Gamma}, \Gamma)$ が測度になることも簡単な計算でわかります。

この方法の問題は、$\mathfrak{M}_{\Gamma}$ の大きさが一般的には保証されていないことです。場合によっては $\mathfrak{M}_{\Gamma} = \{\emptyset, X\}$ になることもあります。個々の状況に応じて $\mathfrak{M}_{\Gamma}$ が十分な大きさであることを示す必要があります。

有限加法的測度の拡張と一意性

$\sigma$-加法族の条件3を有限の場合に制限したものを有限加法族、測度の定義域を有限加法族にし、条件2を有限の場合に制限したものを有限加法的測度といいます。集合 $X$ 上の有限加法族 $\mathfrak{F}$ と有限加法的測度 $m$ の組 $(X, \mathfrak{F}, m)$ を有限加法的測度空間といいます。

$\sigma$-加法族でない有限加法族の例は、$\mathbb{R}$ 上の半開区間 $(a, b]$ $(-\infty \leq a \leq b \leq \infty)$ の有限和全体の集合です。これは一点集合 $\{a\}$ を含まないので $\sigma$-加法族ではありません。

外測度による構成の最も基本的な応用は、有限加法的測度空間を測度空間に拡張することです。つまり、$\mathfrak{F} \subset \mathfrak{M}$ を満たす $\sigma$-加法族 $\mathfrak{M}$ と、 $\mu |_{\mathfrak{F}} = m$ を満たす $\mathfrak{M}$ 上の測度 $\mu$ を構成することです。拡張というとその一意性も気になるところですが、適当な条件のもと拡張の一意性を示すことができます。

外測度は、$A \subset X$ に対して

$$\Gamma(A) = \inf \left\{ \sum_{n=1}^{\infty} m(E_n) \mid \bigcup_{n=1}^{\infty} E_n \supset A, E_n \in \mathfrak{F} \right\}$$

で定義します。先ほど述べたようにこれだけでは $\mathfrak{M}_{\Gamma}$ が十分な大きさであること、つまり $\mathfrak{F} \subset \mathfrak{M}_{\Gamma}$ であることは保証されません。とりあえず、測度を拡張するという観点から、以下の条件が必要であることがわかります。

$$\text{非交和 } E = \bigcup_{n = 1}^{\infty} E_n \text{ が } E \in \mathfrak{F} \text{ を満たすならば } m(E) = \sum_{n=1}^{\infty} m(E_n).$$

つまり、加算個の非交和が $\mathfrak{F}$ に (一般には含まれないが) もし含まれていれば、測度と同じ条件を満たす必要があります。この条件を満たすとき、$m$ は完全加法的であるといいます。逆に $m$ が完全加法的であれば、$\mathfrak{F} \subset \mathfrak{M}_{\Gamma}$ となります。これを E.Hopfの拡張定理といいます。

一意性については $\sigma$-有限、つまり $X_k \in \mathfrak{F}$ で、

\begin{align*} &X_1 \subset \cdots \subset X_k \subset \cdots, \\ &m(X_k) < \infty, \\ &X = \bigcup_{k=1}^{\infty} X_k \end{align*}

満たすものが存在することが十分条件となります。ただし、拡張の一意性は $\sigma(\mathfrak{F})$ 、つまり $\mathfrak{F}$ を含む最小の $\sigma$-加法族 (の完備化) までで、それ以上に拡張できるかは知りません。

$(X, \mathfrak{F}, m)$ が $\sigma$-有限より強く、$m(X) < \infty$ であるときに一意性を示します。$\mu$ を $m$ の $\sigma(\mathfrak{F})$ への拡張とします。$A \in \sigma(\mathfrak{F}), E_n \in \mathfrak{F}$, $A \subset \bigcup_{n=1}^{\infty} E_n$ としたとき、

$$\mu(A) \leq \mu(\bigcup_{n=1}^{\infty} E_n) \leq \sum_{n=1}^{\infty} m(E_n)$$

と $\Gamma$ の定義から、$\mu(A) \leq \Gamma(A)$ が成り立ちます。$A$ を $X \setminus A$ に置き換えて、$\mu(X \setminus A) \leq \Gamma(X \setminus A)$ を得ますが、$\mu(X) = \Gamma(X) = m(X) < \infty$ なので、$\mu(A) \geq \Gamma(A)$ が成り立ちます。よって $\mu(A) = \Gamma(A)$ が成り立ちます。

$\sigma$-有限のときは、$X$ を $X_k$ に置き換えて極限を取ればよいです。

有限加法的測度の拡張の例として、ルベーグ測度と直積測度を挙げます。

ルベーグ測度

$X = \mathbb{R}^n$ とし、有限加法族 $\mathfrak{J}_n$ を、$(a_1, b_1] \times \cdots \times (a_n, b_n]$ の有限和集合全体からなる集合とします。また、

$$m((a_1, b_1] \times \cdots \times (a_n, b_n]) = (b_1-a_1) \cdots (b_n-a_n)$$

とします。$(\mathbb{R}^n, \mathfrak{J}_n, m)$ が $\sigma$-有限であることは明らかです。$m$ が完全加法的であることはおおよそ以下のように示されます。

$I_1, \cdots, I_k, \cdots \in \mathfrak{J}_n$, $I_i \cap I_j = \emptyset$ とし、$A = \bigcup_{k=1}^{\infty} I_k$ とおきます。

$m(A) = \infty$ のとき、任意の $r \in \mathbb{R}$ に対し $J \in \mathfrak{J}_n$, $m(J) > r$ かつ閉包 $ \bar{J}$ がコンパクトで、$\bar{J} \subset \mathring{A}$ を満たす集合 $J$ が存在します ($\mathring{A}$ は $A$ の内点集合)。コンパクト性から十分大きな $N \in \mathbb{N}$ に対して $\bar{J} \subset \bigcup_{k=1}^{N} \mathring{I_k}$ なので、$\sum_{k=1}^{\infty} m(I_k) = \infty$です。

$m(A)$ が有限のときは、$A \in \mathfrak{J}_n$ であることから$A$ は $(a_1, b_1] \times \cdots \times (a_n, b_n]$ という形の集合の有限個の非交和であり、各々は有界集合です。すると、任意の $\varepsilon \in \mathbb{R}$ に対し、 $J \in \mathfrak{J}_n$ かつ $\bar{J} \subset \mathring{A}$ で $m(A)-m(J) < \varepsilon$ を満たし、$\bar{J}$ がコンパクトとなる集合 $J$ が存在します。先ほどと同様の議論で十分大きな $N$ に対し $\bar{J} \subset \bigcup_{k=1}^{N} \mathring{I_k}$ なので、$m(A) < \sum_{k=1}^{N} m(I_k) + \varepsilon$ が成り立ちます。$\varepsilon$ は任意なので、$m(A) \leq \sum_{k=1}^{\infty} m(I_k)$ が成り立ちます。逆の不等式は $I_i \cap I_j = \emptyset$ から $m(A) \geq \sum_{k=1}^{N} m(I_k)$ なので、$N \to \infty$ で成立します。

$(\mathbb{R}^n, \mathfrak{J}_n, m)$ の $\sigma(\mathfrak{J}_n)$ への拡張を完備化した測度をルベーグ測度といいます。

直積測度

$(X, \mathfrak{M}_X, \mu)$ , $(Y, \mathfrak{M}_Y, \nu)$ を測度空間とします。$X \times Y$ 上の有限加法族 $\mathfrak{F}$ を $E \times F$ ($E \in \mathfrak{M}_X$, $F \in \mathfrak{M}_Y$) の有限和集合全体からなる集合とします。実際は $E \times F$ の有限非交和全体としても問題ありません (図示すれば簡単にわかります)。 $\mathfrak{F}$ 上の関数 $m$ を $m(E \times F) = \mu(E)\nu(F)$ とします。

$(X, \mathfrak{M}_X, \mu)$ , $(Y, \mathfrak{M}_Y, \nu)$ の両方が $\sigma$-有限ならば、 $(X \times Y, \mathfrak{F}, m)$ も $\sigma$-有限であることは明らかです。

$m$ が完全加法的であることはおおよそ以下のように示されます。

$E_1, \cdots ,E_i, \cdots \in \mathfrak{M}_X$, $F_1, \cdots ,F_i, \cdots \in \mathfrak{M}_Y$ で、$(E_i \times F_i) \cap (E_j \times F_j) = \emptyset$ であるとし、$A = \bigcup_{i = 1}^{\infty} E_i \times F_i$ とします。$A \in \mathfrak{F}$ なので、$A$ は別の表現 $A = \bigcup_{k=1}^{N} E^{\prime}_k \times F^{\prime}_k$ を持ちます。また、

$$1_A= \sum_{k=1}^{N} 1_{E^{\prime}_k} 1_{F^{\prime}_k} = \sum_{i=1}^{\infty} 1_{E_i} 1_{F_i}$$

が成り立ちます。後ろの2つの関数は $x \in X$ を固定したときに $\mathfrak{M}_{Y}$ に関して可測なので、$y$ について積分します。積分後の関数は $\mathfrak{M}_X$ に関して可測なので $x$ について積分します。すると、

$$m(A) = \sum_{k=1}^{N} \mu(E^{\prime}_k) \nu(F^{\prime}_k) = \sum_{i=1}^{\infty} \mu(E_i) \nu(F_i)$$

が成り立ちます。

$(X \times Y, \mathfrak{F}, m)$ を $\sigma(\mathfrak{F})$ に拡張した測度を直積測度といいます。

直積測度に関する有名な定理にFubiniの定理がありますが、それを示すには、測度の値をもう少し精査する必要があります。

ハウスドルフ測度

リーマン多様体のようなきれいな距離空間であれば、(球と同相になる程度に小さい) 半径 $r$ の球の測度を (多様体の次元の) 球の体積と定めることで測度が定義できそうな気がします。このアイディアを発展させて、直径の小さい集合で覆うことで、任意の距離空間に測度を定義できます。

$(X, d)$ を距離空間とします。$A \subset X$ の直径を

$$d(A) = \sup\{d(x, y) \mid x, y \in X \}$$

とします。$\rho(t)$ を区間 $[0, 1]$ 上の非負非減少関数で $\rho(0) = 0$ を満たすものとします。$0 < \varepsilon < 1$ に対し

$$\Gamma_{\rho,\ \varepsilon} = \inf \left \{ \sum_{i} \rho(d(A_i)) \mid A \subset \bigcup_i A_i, \ d(A_i) < \varepsilon \right \}$$

と定義します。$\varepsilon \to 0$ で $\Gamma_{\rho,\ \varepsilon}$ は非減少であり、($+\infty$ の場合を含めて) 極限が存在するため、

$$\Gamma_{\rho} = \lim_{\varepsilon \to 0} \Gamma_{\rho,\ \varepsilon}(A)$$

とおくと、$\Gamma_{\rho}$ は外測度になります。これを $\rho$ に付随したハウスドルフ外測度といいます。

$\mathfrak{M}_{\Gamma_{\rho}}$ はすべての開集合を含むことが知られており、開集合を含む最小の $\sigma$-加法族 $\mathfrak{B}(X)$ 上に$\Gamma_{\rho}$ を制限した測度を $\mu_{\rho}$ とおいて、$\rho$ に付随したハウスドルフ測度といいます。

$\mathbb{R}^n$ の距離を

$$d(x, y) = \sqrt{(x_1-y_1)^2 + \cdots + (x_n-y_n)^2}$$

とし、$\rho(t) = t^n$ としたとき、ハウスドルフ測度はルベーグ測度の定数倍と一致するようです。

まとめ

測度の定義から構成までの流れを、積分できる空間を広げるという動機からまとめてみました。統計学のKLダイバージェンスとの関係で、ラドン=ニコディムの定理にも触れたかったのですが、不勉強のためコンパクトにまとめるのが難しく、記事が長くなるので省略しました。

この記事を書いてみて、測度論は関連する話題が多く、改めて教科書で順を追って勉強すると注意すべき点が拡散してしまうように感じました。かといって、この記事のように積分の一般化を出発点とするのが良いのかというと、難しいところです。気になるトピックに合わせて自分でストーリーを組み替えて、必要な部分を勉強するというのが良いのかもしれません。Wikipediaに意外と証明が載っていたりするので、トピックを限定して勉強するには向いていると思います。

積分の収束定理には全く触れませんでしたが、収束定理の応用のためには、収束定理の証明→ルベーグ積分とリーマン積分の関係→フーリエ変換や $L^p$ 空間、という流れで、必要な時に必要な分を勉強すれば良いのではないでしょうか。

参考文献

小谷 眞一. 測度と確率

吉田 伸生. ルベーグ積分入門 使うための理論と演習

藤田 博司. ルベーグの積分論の登場とその前後

山上 滋. ルベーグ積分2018


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