主束の接続と曲率 : 最短解説(接続の幾何2)

本記事は接続の捩れを理解することを目的としたシリーズ記事、接続の幾何シリーズの2回目の記事です。前回は一般のファイバー束上の接続を定義し、それがベクトル束の共変微分の接続の一般化であることを確認しました。

今回は主束の接続について深掘りし、曲率とそれが $0$ であるときの性質について記載します。曲率自体は捩れの理解には直接的には不要だと思いますが、主束の接続に関わる、リー群や接続形式などの概念は必要ですので、それらをまとめ、それらに関わる簡単な話題として曲率について述べることにしました。

準備

主束の接続の曲率を定義するのに必要な概念についてまとめます。

リー群

まず、リー群についての最低限の事項をまとめます。

定義. リー群

$C^{\infty}$ 多様体 $G$ が群構造を持ち, 群の積とる写像

$$G \times G \ni (g_1, g_2) \mapsto g_1 g_2 \in G$$

と逆元をとる写像

$$G \ni g \mapsto g^{-1} \in G$$

が $C^{\infty}$ 写像であるとき, $G$ をリー群という. $\Box$

$C^{\omega}$ 級とする定義もありますが、リー群の一般論より、$C^{0}$-構造から $C^{\omega}$-構造が一意的に得られるので、そこは気にする必要がありません。

群の演算が $C^{\infty}$ 級であることから、単位元 $e \in G$ の近傍と任意の点 $g \in G$ の近傍は、$g$ をかける演算で同相になります。左から $g$ をかける写像を $L_g: G \to G$ とかくと、その単位元での微分 $(L_g)_*: T_eG \to T_g G$ は $T_e G$ と $T_g G$ の同型を与えます。よって $X_e \in T_e G$ に対し $X(g) = (L_g)_* X_e$ とおくことで、単位元上の接ベクトルから $G$ 上のベクトル場が得られます。

このように得られたベクトル場 $X$ は、任意の $g^{\prime} \in G$ に対して、

$$(L_{g^{\prime}})_* X(g) = (L_{g^{\prime}})_* (L_g)_* X_e = (L_{g^{\prime}} \circ L_g)_* X_e = (L_{g^{\prime}g})_* X_e = X(g^{\prime}g)$$

であるから、各点で $(L_{g^{\prime}})_* X = X$ となり、左作用の微分に関して不変です。逆に、左作用に関して不変なベクトル場はこのように得られるものに限ります。よって、単位元の接空間 $T_eG$ と左不変なベクトル場全体の集合は同一視されます。これを $\mathfrak{g}$ と書き、$G$ のリー代数と言います。

同様に右作用についても同様のことを考えることができますが、省略します。

括弧積の左不変性

$A, B \in \mathfrak{g}$ に対し括弧積 $[A, B]$ は $\mathfrak{g}$ の元であること、つまり $[A, B]$ が左作用で不変であるを確認しましょう。そのためには、一般に多様体 $M$ 上の自己同型 $\phi$ と $M$ 上のベクトル場 $A$ に対し、ベクトル場の押し出し $\phi_*(A)$ を各点の微分の像をとることで定義したとき、任意の$M$ 上のベクトル場 $A, B$ に対し

$$\phi_* ([A, B]) = [\phi_*(A), \phi_*(B)]$$

が成り立つことを示せば良いです。ベクトル場の押し出しは、$A_x = \sum_{i = 1}^n A_i(x) \frac{\partial}{\partial x_i}$ と局所表示し、$\phi(x) = y$ としたとき、

$$\phi_*(A)_y = \sum_{i = 1}^n A_i(\phi^{-1} (y)) \phi_* \left(\frac{\partial}{\partial x_i}\right)$$

と表されます。また、$B_x = \sum_{i = 1}^n B_i(x) \frac{\partial}{\partial x_i}$ と局所表示したとき、

$$[A, B]_x = \sum_{i, j = 1}^n \left( A_i(x) \frac{\partial B_j}{\partial x_i}(x)-B_i (x) \frac{\partial A_j}{\partial x_i} (x) \right)\frac{\partial}{\partial x_j} $$

で与えられます。よって、

$$\phi_* ([A, B])_y = \sum_{i, j = 1}^n \left( A_i(\phi^{-1}(y)) \frac{\partial B_j}{\partial x_i}(\phi^{-1}(y))-B_i (\phi^{-1}(y)) \frac{\partial A_j}{\partial x_i} (\phi^{-1}(y)) \right) \phi_* \left(\frac{\partial}{\partial x_j}\right) $$

となります。一方、

\begin{align} [\phi_*(A), \phi_*(B)]_y = \sum_{i, j = 1}^n & \left( A_i(\phi^{-1} (y)) \phi_* \left(\frac{\partial}{\partial x_i} \right) B_j(\phi^{-1}(y)) \right. \\ & \qquad \left. -B_i (\phi^{-1} (y)) \phi_* \left(\frac{\partial}{\partial x_i} \right) A_j (\phi^{-1}(y)) \right) \phi_* \left(\frac{\partial}{\partial x_j} \right) \end{align}

となりますが、$\phi_* \left(\frac{\partial}{\partial x_i} \right) B_j(\phi^{-1}(y))$ は微分の定義から $\frac{\partial B_j}{\partial x_i}(\phi^{-1}(y))$ に一致し、$\phi_* \left(\frac{\partial}{\partial x_i} \right) A_j (\phi^{-1}(y))$ も同様に$\frac{\partial A_j}{\partial x_i}(\phi^{-1}(y))$ に一致します。よって、式を眺めると、

$$\phi_* ([A, B]) = [\phi_*(A), \phi_*(B)]$$

が成り立ちます。これを左作用の場合に適用すると、$A, B \in \mathfrak{g}$ に対し

$${L_g}_*([A, B]) = [{L_g}_*(A), {L_g}_*(B)] = [A, B]$$

となり、$[A, B] \in \mathfrak{g}$ となります。(もっと簡単に示せるような気がします。)

左不変ベクトル場のフローと右作用

左不変ベクトル場 $A$ のフロー $\varphi_t$ が、ある $g(t): \mathbb{R} \to G$ により、

$$\varphi_t (h) = h g(t)$$

と表されることを確認しましょう。単位元 $e$ の近傍 $U$ を適当にとり、$\varphi_t(e)$ が $U$ に含まれているとします。任意の $h \in G$ に対し、$h$ の近傍 $h(U)$ を $h^{-1}$ を左からの積により単位元の近傍に移す写像 $h^{-1}: h(U) \to U$ は、$A$ が左不変であることから、$A$ の積分曲線をピッタリ移します。よって、

$$h^{-1} \varphi_t(h) = \varphi_t (e)$$

となります。つまり、$g(t) = \varphi_t(e)$ とすれば、

$$\varphi_t(h) = h \varphi_t (e) = h g(t)$$

となります。これで左不変なベクトル場のフローが右作用で表されることが示されました。

構造定数

$B_1, \dots, B_m$ を $\mathfrak{g}$ の基底とすると、それらの括弧積 $[B_i, B_j]$ も左不変なので、

$$[B_i, B_j] = \sum_{k}c^k_{ij}B_k $$

と一意的に表すことができます。$c^k_{ij}$ をリー代数 $\mathfrak{g}$ の基底 $B_1, \dots, B_m$ に関する構造定数と言います。

ベクトル空間に値をとる微分形式

多様体 $M$ 上の $k$ 形式 $\omega \in A^k(M)$ は、各点 $p \in M$ で余接ベクトル空間 $T_p^* M$ の$k$ 次の外積 $\Lambda^k T_p^* M$ の元 $\omega_p$、つまり、交代的な多重線型写像

$$\omega_p : \overbrace{T_p M \times \cdots \times T_pM}^{k \text{個}} \to \mathbb{R}$$

を対応させるものです。$V$ をベクトル空間とし、各点で $\omega_p \in \Lambda^k T_p^* M$ の代わりに $\omega_p \otimes v_p \in \Lambda^k T_p^* M \otimes V$ を対応させると、各点で交代的な多重線型写像

$$\omega_p \otimes v_p: \overbrace{T_p M \times \cdots \times T_pM}^{k \text{個}} \to V$$

が得られます。これを $V$ に値をとる $M$ 上の $k$ 形式といいます。

$V$ に値をとる $M$ 上の $k$ 形式全体の集合を $A^k(M; V)$ と書きます。$V$ の基底 $v_1, \dots, v_r$ を一つ選べば、$\omega \in A^k(M; V)$ は $r$ 個の $k$ 形式 $\omega_1, \dots, \omega_r \in A^k(M)$ により、テンソル記号 $\otimes$ を省略して

$$\omega = \sum_{i = 0}^r \omega_i v_i$$

と表されます。$\omega \in A^k(M; V)$ の外微分 $d \omega \in A^{k+1}(M; V)$ を、$d \omega = \sum_i d\omega_i v_i$ となるように定義します。

外積も定義されます。$V, W$ をベクトル空間とし、$\omega \in A^k(M; V)$、$\eta \in A^l(M; W)$ とします。$v_1, \dots, v_r$ を $V$ の基底とし、$w_1, \dots, w_s$ を $W$ の基底とし、$\omega = \sum_i \omega_i v_i$、$\eta = \sum_j \eta_j w_j$ と表されるとします。このとき、$w \wedge \eta = \sum_{i, j} \omega_i \wedge \eta_j v_i \otimes w_j$ となるように定義します。

$V$ がリー群 $G$ のリー代数 $\mathfrak{g}$ であるときは、括弧積 $[-,-]: V \otimes V \to V$ を外微分に合成することで、$\omega, \eta \in A^k(M; V)$ の括弧積 $[\omega, \eta]$ が定義されます。$\omega = \sum_i \omega_i v_i$、$\eta = \sum_j \eta_j v_j$ と表されるすると、

$$[\omega, \eta] = \sum_{i,j} \omega_i \wedge \eta_j [v_i, v_j]$$

となります。$\omega \in A^1(M; V)$ に対しては、$X, Y$ を $M$ のベクトル場として、

$$[\omega, \omega](X, Y) = \frac{1}{2} \left\{[\omega(X), \omega(Y)] -[\omega(Y), \omega(X)] \right\} = [\omega(X), \omega(Y)]$$

となります。最初の等式は微分形式に普通にベクトル場を適用して得られます。2番目の等式は括弧積の反対称性から得られます。

Maurer-Cartan形式

リー群 $G$ 上の左不変ベクトル場 $\mathfrak{g}$ をリー群 $G$ のリー代数といいました。ここではリー群上の左不変な微分形式を考えます。

$\omega \in A^k(G)$ の、左作用 $L_g$ による引き戻し $L_g^* \omega$ を

$$L_g^* \omega(X_1, \dots, X_k) = \omega((L_g)_* X_1, \dots, (L_g)_* X_k)$$

で定まるものとします。$L_g^* \omega = \omega$ を満たす微分形式を左不変な微分形式と言います。左不変な $k$ 形式 $\omega$ の $g \in G$ での値を $\omega_g$ とし、$X_1, \dots, X_k \in T_g G$ としたとき、

$$\omega_g(X_1, \dots, X_k) = L_{g^{-1}}^* \omega_g (X_1, \dots, X_k) = \omega_e((L_{g^{-1}})_* X_1, \dots, (L_{g^{-1}})_* X_k)$$

であるため、左不変な微分形式は単位元の値のみで決まります。$\mathfrak{g}$ が単位元の値のみで決まることから、$\mathfrak{g}$ の双対空間 $\mathfrak{g}^*$ は左不変な $1$ 形式全体と同一視できます。左不変な $1$ 形式をMaurer-Cartan形式と言います。

$\mathfrak{g}$ の括弧積が構造定数によって表されたように、Maurer-Cartan形式も外微分を構造定数によって表すことができます。まず、一般の $1$ 形式 $\omega$ に対し、

$$d\omega (X, Y) = \frac{1}{2} \left\{ X\omega(Y) -Y\omega(X) -\omega([X, Y])\right\}$$

ですが、$X, Y \in \mathfrak{g}$, $\omega \in \mathfrak{g}^*$ とすると、$\omega(X), \omega(Y)$ は定数になりますので、$Y\omega(X) = X\omega(Y) = 0$ であり、

$$d\omega (X, Y) = -\frac{1}{2} \omega([X, Y])$$

となります。$B_1, \dots, B_m$ を $\mathfrak{g}$ の基底とし、$\omega_1, \dots, \omega_m$ をその双対基底とすると、

$$d\omega_k (B_i, B_j) = -\frac{1}{2} \omega_k([B_i, B_j]) = -\frac{1}{2} \omega_k \left(\sum_k c^k_{ij} B_k\right) = -\frac{1}{2} c^k_{ij}$$

となります。一方、

\begin{align} -\frac{1}{2} \sum_{i,j} c^k_{ij} \omega_i \wedge \omega_j (B_i, B_j) & = -\frac{1}{2} \Bigl\{ \frac{1}{2} c^k_{ij} \bigl(\omega_i(B_i)\omega_j(B_j) -\omega_i(B_j)\omega_j(B_i)\bigr) \Bigl. \\ & \qquad \qquad \Bigl. + \frac{1}{2} c^k_{ji}\bigl(\omega_j(B_i)\omega_i(B_j) -\omega_j(B_j)\omega_i(B_i) \bigr) \Bigr\} \\ & = -\frac{1}{2} \left(\frac{1}{2} c^k_{ij} -\frac{1}{2} c^k_{ji} \right) \\ & = -\frac{1}{2} c^k_{ij} \end{align}

ですので、

$$d\omega_k = -\frac{1}{2} \sum_{i,j} c^k_{ij} \omega_i \wedge \omega_j$$

となります。これをMaurer-Cartan方程式と言います。

$\mathfrak{g}$ に値を持つ微分形式についても同様の方程式を得ることができます。$\omega \in A^1(G; \mathfrak{g})$ を $G$ 上の $\mathfrak{g}$ に値をとる $1$ 形式で、任意の $A \in \mathfrak{g}$ に対して $\omega(A) = A$ を満たすものとします。上記の基底で表すと

$$\omega = \sum_i \omega_i B_i$$

となります。外微分は先ほどの計算から

$$d\omega(B_i, B_j) = \sum_k d\omega_k (B_i, B_j) B_k = -\frac{1}{2} \sum_k c^k_{ij} B_k$$

となりますが、一方で

$$-\frac{1}{2} [\omega, \omega](B_i, B_j) = -\frac{1}{2} [\omega(B_i), \omega(B_j)] = -\frac{1}{2} [B_i, B_j] = -\frac{1}{2} \sum_k c^k_{ij} B_k$$

ですので、

$$d\omega = -\frac{1}{2} [\omega, \omega]$$

となります。この $\omega$ のMaurer-Cartan形式と言います。

Maurer-Cartan形式と右作用

$\omega \in A^1(G; \mathfrak{g})$ をMaurer-Cartan形式とします。定義から左作用 $L_g$ に対し $L_g^* \omega = \omega$ ですが、右作用 $R_g$ に対し $R_g^* \omega$ はどう表現されるでしょうか。

$A \in \mathfrak{g}$ に対し $R_g^* \omega(A) = \omega((R_g)_* A)$ ですので、$(R_g)_* A$ が左不変であれば、$R_g^* \omega(A) = (R_g)_* A$ となります。$(R_g)_* A$ が左不変であることは、右作用と左作用が可換であることからわかります。

ここで、$\iota_g$ を $G \ni h \mapsto ghg^{-1}$ と定義される写像とし、その単位元の微分を $\mathrm{Ad}(g)$ とおくと、それは $GL(\mathfrak{g})$ の元を与えます。($\mathrm{Ad}: G \to GL(\mathfrak{g})$ を随伴表現といいます。) $(R_g)_* A = (R_g)_* \circ (L_{g^{-1}})_* A = \mathrm{Ad}(g^{-1}) A$ ですので、

$$R_g^* \omega(A) = \omega(\mathrm{Ad}(g^{-1})A) = \mathrm{Ad}(g^{-1})\omega(A)$$

となります (右辺は $\omega(A)$ に $\mathrm{Ad}(g^{-1})$ を作用させるという意味です)。よって

$$R_g^* \omega = \mathrm{Ad}(g^{-1})\omega$$

となります。

主束の接続

主束の接続の定義

$\xi = (P, \pi, B, G)$ を Lie 群 $G$ をファイバーとする主束とします。主束には $G$ の右作用がありますので、$g \in G$ の $P$ への右作用を $R_g$ とおきます。$u, u^{\prime} \in \pi^{-1}(b)$ とし、$u^{\prime} = ug$ を満たすとします。右作用の微分 $(R_g)_*|_{T_uP}: T_uP \to T_{u^{\prime}} P$ は垂直方向 $V_u$ を垂直方向 $V_{u^{\prime}}$ に移します。実際、$\pi \circ R_g = \pi$ の両辺の微分を取れば $\pi_* \circ (R_g)_* = \pi_*$ であり、垂直方向は $\pi_*$ の核であったので、$(R_g)_*$ で保たれます。$R_{g^{-1}}$ が逆写像であることから、全単射であることもわかります。

一方で、$\xi$ 上の接続 $\{H_u\}_{u \in P}$ が与えられたとき、水平方向は一般には右作用で保たれません。しかし、主束の場合は右作用がある以上それで不変なものを考えるのが自然です。よって主束の接続を、ファイバー束として見たときの接続で、かつ右作用で不変であるもの、つまり

$$(R_g)_* H_u = H_{ug}$$

を満たすものとします。

接続形式

$\pi: P \to B$ を $G$ をファイバーとする主束とし、$\{H_u\}_{u \in P}$ を接続とします。すぐ後に確認しますが、各点の垂直方向 $V_u$ は左不変ベクトル場 $\mathfrak{g}$ と同一視できます。それによって、接続を $P$ 上の $\mathfrak{g}$ に値をとる微分形式によって表現できます。

まずは垂直方向が $\mathfrak{g}$ と同一視できることを確認しますが、その前に注意として、ファイバー $G$ には単位元の概念が定まりません。というのも、単位元が座標変換で保たれないからです。なのでファイバーは、 $G$ と同相でかつ $G$ が作用しますが、正確には群構造を持ちません。それゆえ、$\mathfrak{g}$ を単位元の接空間とはみなさず、$G$ の左不変ベクトル場とみなします。また、ファイバーの元を何かに作用させることは (少なくともこの記事では) 考えません。

前置きが長くなりましたが、同一視の要素としては以下となります。

  1. $b \in B$, $u \in \pi^{-1}(b)$ に対し、$V_u \simeq T_u \pi^{-1}(b)$ である。
  2. 自明化により、各点 $b$ 上で同型 $i_b: G \overset{\simeq}{\to} \pi^{-1}(b)$ が存在する。
  3. 別の自明化での同型は、ある元 $g \in G$ の左作用を除いて一致する。

1 は、$\pi^{-1}(b) \hookrightarrow P$ の微分が単射であること、次元的に全射であることからわかります。2 は自明化の定義から明らかでしょう。3 も変換関数を考えれば明らかです。各点 $u \in P$ で $\mathfrak{g} \simeq T_u \pi^{-1}(b)$ であれば、1 から $V_u \simeq \mathfrak{g}$ が得られますので、同型写像 $\mathfrak{g} \to T_u \pi^{-1}(b)$ を以下の図式

\begin{xy} \xymatrix@C=15pt { A \ar@{}[r]|\in & \mathfrak{g} \ar[rrr]^-{(i_b)_*|_{i_b^{-1}(u)}} \ar[d] & & & T_u \pi^{-1}(b) \ar@{}[r]|\ni \ar[d] & (i_b)_* A_{i_b^{-1}(u)} \\ i_b^{-1}(u) \ar@{}[r]|\in & G \ar[rrr]_-{i_b} & & & \pi^{-1}(b) \ar@{}[r]|\ni & u } \end{xy}

の上部で定義します。つまり、左不変ベクトル場 $A \in \mathfrak{g}$ に対し、$A_{i_b^{-1}(u)}$ の $i_b$ の微分の像 $(i_b)_* A_{i_b^{-1}(u)}$ を対応させる写像で定義します。これは明らかに全単射で、さらに、別の自明化で得られる同型を用いても、3 より左作用の違いしかないため、同じ同型が得られます。これで $V_u \simeq \mathfrak{g}$ が得られました。

このことからさらに、$A \in \mathfrak{g}$ に対して各点 $u \in P$ で上記の同型 $\mathfrak{g} \simeq V_u$ をとることで、$P$ 上のベクトル場 $A^*$ が誘導されることがわかります。このようなベクトル場を基本ベクトル場と言います。

$P$ 上の接続 $\{H_u\}$ が与えられたとします。このとき、各点 $u \in P$ で直和分解 $T_uP = V_u \oplus H_u$ から得られる $V_u$ への射影

$$T_u P \to V_u \simeq \mathfrak{g}$$

は $P$ 上の $\mathfrak{g}$ に値をとる $1$ 形式とみなせます。これを $\omega \in A^1(P; \mathfrak{g})$ とおくと、水平方向 $H_u$ は

$$H_u = \{X \in T_u P \mid \omega(X) = 0\}$$

で与えられます。この $\omega$ を接続形式といいます。

定義から明らかに、接続形式の各ファイバーへの制限 (つまり $i_b^*(\omega)$ ) は、Maurer-Cartan形式となります。また、それと同値ですが、

$$\omega(A^*) = A$$

を満たします。また、右作用 $R_g: P \to P$ に対して $(R_g)_* H_u = H_{ug}$ ですので、$R_g^* \omega$ は任意の水平ベクトルに対して $0$ になります。垂直ベクトルに対してはMaurer-Cartan形式で成り立つ等式 $R_g^* \omega = \mathrm{Ad}(g^{-1}) \omega$ がありますが、水平ベクトルに対しても同じ等式が成り立つ ($0$ が $0$ に移る) といえますので、全体としても

$$R_g^* \omega = \mathrm{Ad}(g^{-1}) \omega$$

が成り立ちます。

逆に、$P$ 上の $1$ 形式が以下の2つの条件

  1. $\omega(A^*) = A$
  2. $R_g^* \omega = \mathrm{Ad}(g^{-1}) \omega$

を満たせば接続形式になります。つまり、$\{H_u\}$ を $\omega(X) = 0$ を満たす接ベクトル全体としたとき $\{H_u\}$ が接続の性質を満たします。それを確認しましょう。

まず条件1から垂直ベクトル $X$ に対し $\omega(X) = X$ ですので、垂直ベクトルの中で $\omega(X) = 0$ となるのは $X = 0$ のみです。よって、直和分解 $T_u P = V_u \oplus H_u$ が成立します。次に条件2から、任意の接ベクトル $X$ に対して

$$\omega(X) = 0 \Leftrightarrow R_g^* \omega(X) = 0 \Leftrightarrow \omega((R_g)_* X) = 0$$

ですので、$(R_g)_* H_u = H_{ug}$ となります。

接続形式と曲率

自明な主束 $M \times G$ の場合、 $\pi_2$ を $G$ への射影、$\omega_0$ を $G$ の Maurer-Cartan 形式とし、$M \times G$ 上の接続形式を $\omega = \pi_2^* \omega_0$ と定めると、Maurer-Cartan 方程式により

$$d \omega = -\frac{1}{2}[\omega, \omega]$$

となります。一般の主束 $P$ 上でも、ファイバー上では Maurer-Cartan 方程式を満たしますが、水平方向については満たすとは限りません。そこで、

$$d\omega = -\frac{1}{2}[\omega, \omega] + \Omega$$

により $P$ 上の $\mathfrak{g}$ に値をとる $2$ 形式 $\Omega$ を定義します。$\Omega$ を曲率形式、上記の式を構造方程式といいます。

$P$ 上のベクトル場 $X$ に対し、各点の垂直成分をとったものを $X_v$ と書き、$X$ の垂直成分と言います。同様に、各点の水平成分をとったものを $X_h$ と書き、$X$ の水平成分と言います。

曲率は以下の2つの性質を持ちます。

  1. $P$ 上のベクトル場 $X, Y$ に対し、どちらかが垂直なベクトル場であれば、$\Omega(X, Y) = 0$。
  2. $P$ 上の任意のベクトル場 $X, Y$ に対し、$\Omega(X, Y) = d\omega(X_h, Y_h) = -\frac{1}{2}\omega([X_h, X_v])$ 。

これらを示しましょう。まず、$X, Y$ が垂直なベクトル場として、$\Omega(X, Y) = 0$ を示します。

$u \in P$ を固定すると、ある $A, B \in \mathfrak{g}$ が存在して、$X_u = A^*_u$, $Y_u = B^*_u$ となります。二つの基本ベクトル場 $A^*, B^*$ に対し、$[A^*, B^*] = [A, B]^*$ が成り立ちます。これは基本ベクトル場が各ファイバー上での左ベクトル場であることからわかります。

曲率の定義から

\begin{align} \Omega(X_u, Y_u) &= d\omega(A^*, B^*) + \frac{1}{2} [\omega, \omega](A^*,B^*) \\ &= \frac{1}{2}\{A^* \omega(B^*) -B^* \omega(A^*) -\omega([A^*, B^*])\} + \frac{1}{2}[\omega(A^*), \omega(B^*)] \\ &= \frac{1}{2}\{A^* \omega(B^*) -B^* \omega(A^*)\} -\frac{1}{2}[A, B] + \frac{1}{2}[A, B] \\ &= 0 \end{align}

ただし、最後の等式では $\omega(B^*)$ が定数関数であることから $A^* \omega(B^*) = 0$ であることを用いました。$B^* \omega(A^*)$ も同様です。ちなみに $\omega(B^*)$, $\omega(A^*)$ は $\mathfrak{g}$ 値の関数ですが、それへの $A^*$ や $B^*$ の作用は、適当に基底をとり各成分に対して作用させることで定義されます。基底の取り方によらないことは簡単に確かめられます。

各 $u \in P$ でこれが成り立つので、$X, Y$ が垂直なベクトル場のとき、$\Omega(X, Y) = 0$ が成り立ちます。

次に、$X$ が垂直ベクトル場、$Y$ が水平ベクトル場として、$\Omega(X, Y) = 0$ を示します。先ほどと同様に、$X_u = A^*_u$ となる基本ベクトル場 $A^*$ を取ります。$u \in P$ で

\begin{align} \Omega(X, Y) &= d \omega(A^*, Y) + \frac{1}{2} [\omega(A^*), \overbrace{\omega(Y)}^{=0}] \\ &= \frac{1}{2} \{A^* \overbrace{\omega(Y)}^{=0} -Y \overbrace{\omega(A^*)}^{=\text{定数関数}} -\omega([A^*, Y])\} \\ &= -\frac{1}{2} \omega([A^*, Y]) \end{align}

となります。よって $[A, Y]$ が水平なベクトル場であることを示せば十分です。左不変なベクトル場のフローは $g_t \in G$ の右作用で表されるので、

$$[A^*, Y] = \lim_{t \to 0} \frac{(R_{g_{-t}})_* Y -Y}{t}$$

となり、$Y$ が水平であるから $(R_{g_{-t}})_* Y$ も水平であるため、$[A^*, Y]$ も水平となります。よって $\Omega(A, Y)$ は $u \in P$ で $0$ となります。したがって、任意の $u \in P$ で $\Omega(X, Y) = 0$ となります。

$X$ が水平、$Y$ が垂直のときは $\Omega(X, Y) = -\Omega(Y, X)$ であるため、$\Omega(X, Y) = 0$ となります。以上で 1. が示されました。

次に 2. を示しましょう。$X = X_h + X_v$, $Y = Y_h + Y_v$ と分解すると、

\begin{align} \Omega(X, Y) &= \Omega(X_v, Y_v) + \Omega(X_h, Y_v) + \Omega(X_v, Y_h) + \Omega(X_h, Y_h) \\ &= \Omega(X_h, Y_h) \\ & = d\omega(X_h, Y_h) + \frac{1}{2} [\overbrace{\omega(X_h)}^{=0}, \overbrace{\omega(Y_h)}^{=0}] \\ & = d\omega(X_h, Y_h) \\ & = \frac{1}{2}\{X_h \overbrace{\omega(Y_h)}^{=0} -Y_h \overbrace{\omega(X_h)}^{=0} -\omega([X_h, Y_h])\} \\ & = -\frac{1}{2} \omega([X_h, Y_h]) \end{align}

となり、2. が示されました。

ちなみに以上の証明から、$d \omega$ を 水平成分に制限したものが $\Omega$ であることがわかります。

曲率の平坦性とフロべニウスの定理

接続 $\omega$ は、曲率形式 $\Omega$ が恒等的に $0$ であるとき平坦な接続といいます。水平なベクトル場 $X$, $Y$ に対し、

$$\Omega(X, Y) = -\frac{1}{2} \omega([X, Y])$$

が成り立ちますので、平坦な接続であることと、平坦なベクトル場が括弧積について閉じていることが同値になります。

フロべニウスの定理から、それは接続 $\{H_u\}$ が完全積分可能であること、つまり任意の $u \in P$ の近傍 $U$ 上で部分多様体 $N$ が存在し、任意の点 $p \in N$ で $T_pN = H_p$ が成り立ちます。

この性質により、平行移動が道のホモトピーにのみ依存することが示されますが、省略します。

まとめ

主束の接続と曲率について解説しましたが、思ったよりも長くなってしまいました。主束の曲率とベクトル束の曲率の関係についても述べようと思いましたが、それは別の機会に持ち越します。

次回は捩れについて、接続形式のように、ある主束上の微分形式として表現し、それについて詳しく述べようと思います。

参考文献

[森田1]. 森田茂之 微分形式の幾何学 (岩波オンデマンドブックス)