捩れテンソル (捩率テンソル) について調べて、矢野健太郎先生の「接続の幾何学」という本を呼んでいたら、なぜ捩れテンソルが現れる理由が分かりにくいのかわかった気がしました。本記事ではそれを紹介しようと思います。
現代的なリーマン幾何学の教科書ではまず接続を定義し、それを用いて測地線を定義します。一方、本記事では[矢野]や[西川]を参考に、変分法により測地線を定義し、それから接続を考えます。捩れテンソルをなぜ現れるのかは、この方法の方がわかりやすいと思います。
ただし、変分法を行う際に数学的な厳密性は考えないこととします。
目次
曲線の最短性
曲線の長さと変分法
$M$ を $n$ 次元多様体とし、$g$ をそのリーマン計量とします。$c: [0, 1] \to M$ を滑らかな曲線とし、適当な局所座標系 $(x_1, \dots, x_n)$ 上で
$$c(t) = (c_1(t), \dots, c_n(t))$$
と表せたとします。このとき、
$$c_* \left(\frac{\partial}{\partial t} \right) = \frac{d c_1}{dt}\frac{\partial}{\partial x_1} + \cdots + \frac{d c_n}{dt} \frac{\partial}{\partial x_n}$$
となります。$g_{ij}(x) = g_x(\frac{\partial}{\partial x_i}, \frac{\partial}{\partial x_j})$ とおくと、$c$ の長さ $s$ は
$$s = \int_{0}^{1} \sqrt{\sum_{i, j = 1}^n g_{ij}(c(t)) \frac{d c_i}{dt} \frac{d c_j}{dt}} dt$$
で与えられます。$\frac{d c_i}{dt} = \dot{c}_i$ とおき、接ベクトルの自明化の座標を $(\xi_1, \dots, \xi_n)$ とおいて、$(x_1, \dots, x_n, \xi_1, \dots, \xi_n)$ 上の関数 $F$ を
$$F(x, \xi) = \sqrt{\sum_{i, j}^n g_{ij}(x) \xi_i \xi_j}$$
とおくと、$s = \int_{0}^{1} F(c, \dot{c}) dt$ とかけます。これの曲線 $c$ に関する変分をとりましょう。
ここで簡単のため、$c$ は一つの局所座標近傍に含まれているものとします。滑らかな関数 $v: [0, 1] \to \mathbb{R}^n$ で、$v(0) = v(1) = 0$ を満たすものを一つとり、
$$c_{\varepsilon} (t) = c(t) + \varepsilon v(t)$$
を考えます。$s_{\varepsilon}$ を $c_{\varepsilon}$ の長さとすると、
$$s_{\varepsilon} = \int_0^{1} F(c + \varepsilon v, \dot{c} + \varepsilon \dot{v}) dt$$
です。これを $\varepsilon$ について微分すると、
\begin{align} \left. \frac{d}{d \varepsilon} s_{\varepsilon} \right|_{\varepsilon = 0} = \int_{0}^{1} \left\{ \sum_{i = 1}^{n} \frac{\partial F}{\partial x_i}(c, \dot{c})v_i + \sum_{i = 1}^{n} \frac{\partial F}{\partial \xi_i} (c, \dot{c})\dot{v}_i \right\} dt \tag{*} \end{align}
となります。(この微分が存在し、この値であることをきちんと証明するには、関数空間
$$\{f \in C^{\infty}([0, 1], \mathbb{R}^n) \mid f(0) = f(1) = 0\}$$
に適当なノルムを設定し、ある極限が存在することを示す必要があります。積分との交換可能性も示す必要があります。)
さらに、式 $(*)$ の右辺の第2項に部分積分を適用し、$v(0) = v(1) = 0$ に注意すると、
\begin{align} \int_{0}^{1} \sum_{i=0}^{n} \frac{\partial F}{\partial \xi_i} (c, \dot{c})\dot{v}_i dt =& \left[ \sum_{i=0}^{n} \frac{\partial F}{\partial \xi_{i}}(c, \dot{c}) v_i(t) \right]^{1}_{0} \\ & \quad -\int_{0}^{1} \sum_{i=0}^{n} \left(\frac{d}{dt} \frac{\partial F}{\partial \xi_{i}} (c, \dot{c})\right) v_i(t) dt \\ =& -\int_{0}^{1} \sum_{i=0}^{n} \left(\frac{d}{dt} \frac{\partial F}{\partial \xi_{i}} (c, \dot{c})\right) v_i(t) dt \end{align}
となりますので、式 $(*)$ の右辺は
$$ \sum_{i=0}^n \int_{0}^{1} \left\{ \frac{\partial F}{\partial x_i}(c, \dot{c}) -\left(\frac{d}{dt} \frac{\partial F}{\partial \xi_{i}} (c, \dot{c})\right) \right\}v_i(t) dt$$
となります。
曲線の最短性と測地線方程式
もし曲線 $c$ が $c(0)$ と $c(1)$ を結ぶ最短線であれば、任意の $v$ に対して
$$\left. \frac{d}{d\varepsilon} s_{\varepsilon} \right|_{\varepsilon = 0} = 0$$
を満たします。よって任意の $0 \leq i \leq n$ に対して
$$\left(\frac{d}{dt} \frac{\partial F}{\partial \xi_{i}} (c, \dot{c})\right) -\frac{\partial F}{\partial x_i}(c, \dot{c}) = 0$$
が成り立ちます。$F$ の定義から計算すると、
\begin{align} \frac{\partial F}{\partial x_{\alpha}}(c, \dot{c}) =& \frac{1}{2F} \sum_{i, j = 0}^{n} \frac{\partial g_{ij}}{\partial x_{\alpha}}(c(t)) \dot{c}_i \dot{c}_j \\ \frac{\partial F}{\partial \xi_{\alpha}}(c, \dot{c}) =& \frac{1}{F} \sum_{i = 0}^n g_{\alpha i}(c(t)) \dot{c}_i \\ \frac{d}{dt} \frac{\partial F}{\partial \xi_{\alpha}}(c, \dot{c}) =& -\frac{1}{F^2}\frac{dF}{dt} \sum_{i=0}^n g_{\alpha i}(c(t)) \dot{c}_i \\ & +\frac{1}{F} \sum_{i, j = 0}^n \frac{\partial g_{\alpha i}}{\partial x_j}(c(t)) \dot{c}_j \dot{c}_i +\frac{1}{F} \sum_{i = 0}^n g_{\alpha i}(c(t)) \ddot{c}_i \end{align}
となります。$t$ を弧長パラメータ $s$ に変えると、
\begin{align} F = 1, & \;\; \frac{dF}{dt}= 0, \\ \frac{dc}{dt} = \frac{ds}{dt} \frac{dc}{ds}, & \;\; \frac{d^2 c}{d t^2} = \left(\frac{ds}{dt}\right)^2 \frac{d^2 c}{d s^2} \end{align}
が成り立ちますので、
\begin{align} & \left(\frac{d}{dt} \frac{\partial F}{\partial \xi_{\alpha}}(c, \dot{c})\right) -\frac{\partial F}{\partial x_{\alpha}}(c, \dot{c}) = 0 \\ \iff & \sum_{i = 0}^n g_{\alpha i}(c(t)) \frac{d^2 c_i}{ds^2} + \frac{1}{2} \sum_{i, j = 0}^n \left( \frac{\partial g_{\alpha i}}{\partial x_j} +\frac{\partial g_{\alpha j}}{\partial x_i} -\frac{\partial g_{ij}}{\partial x_{\alpha}} \right) \frac{dc_i}{ds} \frac{dc_j}{ds} = 0 \end{align}
となります。$g_{ij}(x)$ の逆行列を $g^{ij}(x)$ とおき、$g^{k \alpha}(x)$ をかけると、$\sum_{\alpha=1}^n g^{k \alpha}(x) g_{\alpha i}(x) = \delta_{i}^k$ なので
$$\frac{d^2c_k}{ds^2} + \sum_{i,j = 0}^n \frac{1}{2} \sum_{\alpha = 0}^n g^{k \alpha} \left( \frac{\partial g_{\alpha i}}{\partial x_j} +\frac{\partial g_{\alpha j}}{\partial x_i} -\frac{\partial g_{ij}}{\partial x_{\alpha}} \right) \frac{dc_i}{ds} \frac{dc_j}{ds} = 0 $$
となります。
$$\genfrac{\{}{\}}{0pt}{}{k}{ij} = \frac{1}{2} \sum_{\alpha = 0}^n g^{k \alpha} \left( \frac{\partial g_{\alpha i}}{\partial x_j} +\frac{\partial g_{\alpha j}}{\partial x_i} -\frac{\partial g_{ij}}{\partial x_{\alpha}} \right) $$
とおくと、
$$ \frac{d^2c_k}{ds^2} + \sum_{i,j = 0}^n \genfrac{\{}{\}}{0pt}{}{k}{ij} \frac{dc_i}{ds} \frac{dc_j}{ds} = 0 \tag{**} $$
と表されます。式 $(**)$ を満たす曲線 $c$ を測地線と言います。
測地線方程式は最短線の持つ局所的な性質を表しており、局所的には測地線=最短線です。しかし、大域的には測地線でも最短線ではない場合があります。例えば東京と大阪をつなぐ測地線には日本の上を通るものと地球の裏側を通るものがありますが、地球の裏側を通る方は最短線ではありません (むしろ最長であり、それゆえ微分が $0$ になります)。
局所的に最短であることは、リーマン計量のみに依存します。
曲線の真っ直ぐさ
リーマン多様体のような曲がった空間の中で、曲線が真っ直ぐであることをどう定義すべきか悩ましいですが、リーマン幾何学の一般の教科書では、曲線に沿って動いたときに”加速度”がかからないこととされています。例えばあなたが車に乗っているとして、車が右に曲がると左向きに力 (=加速度) がかかります。曲線に沿って等速に動いた時、そのような力がかからないことを真っ直ぐであるとします。
$M$ をリーマン多様体、$c: [0, 1] \to M$ を滑らかな曲線とします。加速度は速度の微分であり、速度は $c$ の微分によって得られます。$c$ の微分は定義できますが、速度の微分を定義しようと思うと、別の点の接空間上のベクトルを比較することになり、異なる接空間の間の同型が定まらないと加速度を定義できません。
異なる接空間の間の同型を与えるよく知られる方法は、接続を与えることです。
接続を用いた真っ直ぐの定義
通常の多様体の接続については以下の記事で解説していますのでご存じない場合はこちらをご参照ください。
曲線 $c$ に沿った平行移動を
$$\Pi^t_{t_0}: T_{c(t_0)}M \to T_{c(t)} M$$
とおきます。$c(t_0)$ での加速度は速度の微分なので、真っ直ぐである条件は
$$\lim_{t \to t_0} \frac{\Pi^{t_0}_{t} \dot{c}(t) -\dot{c}(t_0)}{t -t_0} = \nabla_{\dot{c}} \dot{c} = 0 $$
となります。
$$\dot{c} = \sum_{i = 1}^n \frac{d c_i}{d t} \frac{\partial }{\partial x_i}$$
とおき、$\nabla_{\frac{\partial }{\partial x_i}} \frac{\partial }{\partial x_j} = \sum_k \Gamma^k_{ij}\frac{\partial }{\partial x_k}$ とおくと、$\nabla_{\dot{c}} \dot{c}$ の第 $k$ 成分は
$$\frac{d^2 c_k}{dt^2} + \sum_{i, j = 0}^n \Gamma^k_{ij} \frac{dc_i}{dt} \frac{dc_j}{dt}$$
となります。これは先ほど求めた測地線の方程式と酷似しており、 $\Gamma^k_{ij} = \genfrac{\{}{\}}{0pt}{}{k}{ij}$ であれば、真っ直ぐであることと測地線であることは同値になります。
ちなみに[矢野]では $M$ をユークリッド空間に埋め込むことで異なる接空間の間の同型を得ており、さらにそれが $\genfrac{\{}{\}}{0pt}{}{k}{ij}$ により定義される接続であることを証明していますが、計算が間違っている (というか意味が取れない) 箇所があります。
内積を保つ接続
平行移動によってベクトルの長さが変わってしまうと、等速で進んでいるのに前後に加速度がかかるという謎の現象が発生してしまいます。例えば弧長パラメータを媒介変数に取れば、速度は常に $1$ になりますが、平行移動によってベクトルの長さが変わってしまうと $\nabla_{\dot{c}} \dot{c}$ は長さの変更分により $0$ になりません。
よって、リーマン多様体での平行移動は長さを保つこと、さらに強く、内積を保つことを仮定します。つまり、任意の $u, v \in T_{c(t_0)}M$ と任意の $t$ に対し、
$$g_{c(t)}(\Pi^t_{t_0} u, \Pi^t_{t_0} v) = g_{c(t_0)}(u, v)$$
が成り立つことを仮定します。これを満たすことと、
$$ \frac{d}{dt} g_{c(t)}(\Pi^t_{t_0} u, \Pi^t_{t_0} v) = 0 $$
が任意の $t$ で成立することは同値です。精査するために、任意の $X, Y$ を $c$ 上のベクトル場に対して、同様の微分を計算してみましょう。
\begin{align} \frac{d}{dt} g_{c(t)}(X, Y) & = \lim_{t \to t_0} \frac{g_{c(t)}(X, Y) -g_{c(t_0)}(X, Y)}{t -t_0}\\ & = \lim_{t \to t_0}\frac{g_{c(t)}(X, Y) -g_{c(t)}(\Pi^t_{t_0} X(t_0), Y)}{t -t_0} \\ & \quad + \lim_{t \to t_0}\frac{g_{c(t)}(\Pi^t_{t_0} X(t_0), Y) -g_{c(t)}(\Pi^t_{t_0} X(t_0), \Pi^t_{t_0} Y(t_0))}{t -t_0} \\ & \quad + \lim_{t \to t_0}\frac{g_{c(t)}(\Pi^t_{t_0} X(t_0), \Pi^t_{t_0} Y(t_0)) -g_{c(t_0)}(X, Y)}{t -t_0} \\ & = g_{c(t_0)}\left(\lim_{t \to t_0}\frac{X -\Pi^t_{t_0} X(t_0)}{t -t_0}, Y\right) \\ & \quad + g_{c(t_0)}\left(X, \lim_{t \to t_0}\frac{Y -\Pi^t_{t_0} Y(t_0)}{t -t_0}\right) \\ & \quad + \frac{d}{dt} g_{c(t)}(\Pi^t_{t_0} X(t_0), \Pi^t_{t_0} Y(t_0)) \\ & = g_{c(t_0)}(\nabla_{\dot{c}} X, Y) + g_{c(t_0)}(X, \nabla_{\dot{c}} Y) + \frac{d}{dt} g_{c(t)}(\Pi^t_{t_0} X(t_0), \Pi^t_{t_0} Y(t_0)) \end{align}
よって任意の $u, v \in T_{c(t_0)}M$ と任意の $t$ に対し
$$g_{c(t)}(\Pi^t_{t_0} u, \Pi^t_{t_0} v) = g_{c(t_0)}(u, v)$$
が成り立つことと、任意の $c$ 上のベクトル場 $X, Y, Z$ に対し
$$Z g(X, Y) = g(\nabla_Z X, Y) + g(X, \nabla_Z Y)$$
が成り立つことは同値です。
捩れテンソルの意味
捩れテンソルは
$$\Gamma^{k}_{ij} -\Gamma^{k}_{ji}$$
で与えられます。よく知られているように、リーマン多様体上には内積を保ち、かつ捩れテンソルが $0$ の接続がただ一つ存在します。これをレヴィ・チヴィタ接続といいます。
実はレヴィ・チヴィタ接続は $\genfrac{\{}{\}}{0pt}{}{k}{ij}$ で与えられます。$\genfrac{\{}{\}}{0pt}{}{k}{ij}$ の捩れが $0$ であることは $ij$ に関して対称であることからわかります。$\genfrac{\{}{\}}{0pt}{}{k}{ij}$ が内積を保つことは次の計算からわかります。
ベクトル場 $X, Y, Z$ に対して局所座標を $X = \frac{\partial}{\partial x_i}$, $Y = \frac{\partial}{\partial x_j}$, $Z = \frac{\partial}{\partial x_k}$ となるようにとります。このとき
\begin{align} g(\nabla_Z X, Y) &= g\left(\nabla_{\frac{\partial}{\partial x_k}} \frac{\partial}{\partial x_i}, \frac{\partial}{\partial x_j} \right)\\ &= g \left(\sum_{\alpha = 0}^n \genfrac{\{}{\}}{0pt}{}{\alpha}{ki} \frac{\partial}{\partial x_{\alpha}}, \frac{\partial}{\partial x_j} \right) \\ &= \sum_{\alpha = 0}^n g_{\alpha j} \genfrac{\{}{\}}{0pt}{}{\alpha}{ki} \\ &= \sum_{\alpha = 0}^n g_{\alpha j} \frac{1}{2} \left( \sum_{\beta = 0}^n g^{\alpha \beta} \left( \frac{\partial g_{\beta k}}{\partial x_i} + \frac{\partial g_{\beta i}}{\partial x_k} -\frac{\partial g_{k i}}{\partial x_{\beta}} \right) \right) \\ &= \frac{1}{2}\left( \frac{\partial g_{j k}}{\partial x_i} + \frac{\partial g_{ji}}{\partial x_k} -\frac{\partial g_{k i}}{\partial x_j} \right) \end{align}
となります。同様に
$$g( X, \nabla_Z Y) = \frac{1}{2}\left( \frac{\partial g_{i k}}{\partial x_j} + \frac{\partial g_{ij}}{\partial x_k} -\frac{\partial g_{k j}}{\partial x_i} \right)$$
となります。よって
\begin{align} & g(\nabla_Z X, Y) + g( X, \nabla_Z Y) \\ = \ & \frac{1}{2}\left( \frac{\partial g_{j k}}{\partial x_i} + \frac{\partial g_{ji}}{\partial x_k} -\frac{\partial g_{k i}}{\partial x_j} \right) + \frac{1}{2}\left( \frac{\partial g_{i k}}{\partial x_j} + \frac{\partial g_{ij}}{\partial x_k} -\frac{\partial g_{k j}}{\partial x_i} \right) \\ = \ & \frac{\partial g_{ij}}{\partial x_k} \\ = \ & Z g(X, Y) \end{align}
となり、内積を保つことがわかります。
つまり、内積を保つという条件のもと、捩れテンソルが $0$ であることと、「曲線が局所的に最短であることと、真っ直ぐであることが同値になる」ことが同値になります。つまり、捩れテンソルは最短線と直線のずれ具合を表していると考えられます。
捩れテンソルが $0$ でない接続の例
以下のサイトの例がわかりやすいと思います。この例における (見た目上) 真っ直ぐな線は明らかに最短線ですが、それに沿った平行移動により接ベクトルが回転するので (リーマン幾何学的に) 真っ直ぐな線ではありません。
また以下のサイトではメルカトル図法における直線を真っ直ぐな線とする計量接続を入れ、その捩れテンソルを計算しています。まさに最短であることと真っ直ぐであることが異なる良い例だと思います。
まとめ
あれこれ書いているうちに思ったより長くなってしまいました。
最短性はリーマン計量のみから定まる性質ですが、真っ直ぐさに関してはリーマン計量と関係なく定まります。リーマン多様体における捩れは、最短性と真っ直ぐさのずれを表しています。
本記事のように最短性を先に記述して、それから真っ直ぐであることを定義すると、その二つが異なる場合があり、その違いが捩れとして表されると理解する事ができます。一方、現代数学の教科書では、真っ直ぐであることを定義してからそれが (局所的に) 最短であることを示すのですが、そうすると捩れの定義が恣意的に見えてしまい、意味が取りづらくなっています。
現代数学の教科書がこのような順番になっているのは、変分法の導入を避けるためだと思います。それは大事な事だと思いますが、それによる理論の展開の”捩れ”こそが、捩れをわかりづらくしている原因のように思います。昔の本を読んでお気持ちを理解するのも時には大事だと思いました。
[矢野]は現代数学的な書き方はされていませんが、幾何学の歴史書として読むと面白い本です。買う必要はないと思いますので、興味がある方は図書館等で借りてみることをお勧めします。
ところで捩れテンソルは、接続のみに依存する概念です。よって、リーマン計量や測地線に依存しない方法で理解できるはずです。それについては以下の記事で解説しているので、ご一読ください。
参考文献
[矢野] 矢野健太郎. 接続の幾何学 POD版
[西川] 西川青季
幾何学的変分問題 (岩波オンデマンドブックス)
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