※ この記事は数学的に厳密に書かれていません。
位相空間 $X, Y$ の間の連続写像 $f: X \to Y$ が固有写像であるとは、コンパクト集合の逆像が常にコンパクトであることです。
定義からはあまりイメージが汲み取れませんが、実は「無限に遠い点が近くに移されない」と解釈することができます。
以下の例はそれを理解する上で重要だと思います。
$$f: \mathbb{R} \to \mathbb{R}^2$$
$$f(t) = \left(\frac{t}{1 +t^2}, \frac{t(1-t^2)}{(1 +t^2)^2}\right)$$

$f$ は単射で (単純計算でわかります)、$0 \in \mathbb{R}$ は原点 $(0, 0) \in \mathbb{R}^2$ に移り、右上の部分は $0 < t \leq 1$ の軌跡、右下は $1 < t < \infty$ の軌跡で、$t \to \infty$ で原点に収束します。左側も (上下が異なること以外) 同様で、$t \to -\infty$ で原点に収束します。
$f$ は固有写像ではありません。定義通り確かめれば、閉円盤 $D = \{x \in \mathbb{R}^2 \mid |x| \leq 1\}$ はコンパクトですが、その逆像 $f^{-1}(D) = \mathbb{R}$ はコンパクトではありません。円盤 $D$ をもっと小さくとっても、$f^{-1}(D)$ は $0$ を含む閉集合と、上に有界でない閉集合と、下に有界でない閉集合の和集合になるので、コンパクトではありません。
もっと簡単な例として、$g: \mathbb{R} \to \{0\}$ も固有ではありません。
このように無限に遠い点 $\infty$ と $-\infty$ の周りが原点の周りに移されてしまうと固有写像になりません。逆に固有写像ならばこのようなことが起きず、「無限に遠い点が近くに移されない」といえます。
ちなみに、コンパクト集合を有界閉集合と読み替えれば、固有写像の定義そのものが「無限に遠い点が近くに移されることはない」と解釈できます。(一応注意として、「無限に遠い」は位相的な概念ではない。$\mathbb{R}$ と $(0, 1)$ は同相。)