ユークリッド整域 ⇒ 単項イデアル整域 ⇒ 一意分解整域 ⇒ 正規環の証明

よく知られている

ユークリッド整域 $\Rightarrow$ 単項イデアル整域 (PID) $\Rightarrow$ 一意分解整域 (UFD) $\Rightarrow$ 正規環

という関係を証明します。逆が成り立たないことの反例も紹介したいと思います。

ユークリッド整域 $\Rightarrow$ 単項イデアル整域

まずはそれぞれの定義をします。

ユークリッド整域と単項イデアル整域の定義

$(N, \leq)$ が全順序集合であるとは、以下の性質が成り立つことをいいます。

  1. 任意の $x \in N$ に対して $x \leq x$ が成り立つ。
  2. 任意の $x, y, z \in N$ に対して、$x \leq y$ かつ $y \leq z$ ならば $x \leq z$ が成り立つ。
  3. 任意の $x, y \in N$ に対して $x \leq y$ かつ $y \leq x$ ならば $x = y$ が成り立つ。
  4. 任意の $x, y \in N$ に対して $x \leq y$ または $y \leq x$ が成り立つ。

また、全順序集合 $(N, \leq)$ が整列集合であるとは、$N$ の任意の部分集合が最小値を持つことをいいます。例えば自然数全体の集合 $\mathbb{N}$ は整列集合ですが、整数全体の集合 $\mathbb{Z}$ は整列集合ではありません。負の数全体の集合が最小値を持たないからです。

この記事では、$\mathbb{N} = \{0, 1, \cdots \}$ とします。つまり、自然数全体の集合は $0$ を含むものとします。

定義. ユークリッド整域

$A$ を整域とする. $A$ から整列集合 $(N, \leq)$ への写像 $\mu: A \to N$ で, 以下の性質

  1. $x \neq 0$ ならば $\mu(x) > \mu(0)$.
  2. $x \neq 0$ ならば, 任意の $y \in A$ に対して
    $$y = qx + r, \quad \mu(r) < \mu(x)$$
    を満たす $q, r \in A$ が存在する.

を満たすものが存在するとき, $A$ をユークリッド整域という. $\Box$

例えば $\mathbb{Z}$ は絶対値 $| \cdot | : \mathbb{Z} \to \mathbb{N}$ により、体 $k$ 上の多項式環 $k[x]$ は、次数をとる写像

$$\mathrm{deg}: k[x] \to \mathbb{N} \cup \{-\infty\}$$

($\mathrm{deg}(0) = -\infty$ と定義) によりユークリッド整域となります。

次に、単項イデアル整域の定義を行います。$a \in A$ に対して、$(a)$ を $a$ が生成するイデアルとします。

定義. 単項イデアル整域(PID)

$A$ を環とする. $A$ のイデアル $I$ が, ある $a \in A$ により $(a) = I$ と表されるとき, $I$ を単項イデアルという. $A$ の任意のイデアルが単項イデアルのとき、$A$ を単項イデアル環という. さらに $A$ が整域であるとき、単項イデアル整域 (PID) という. $\Box$

ユークリッド整域 $\Rightarrow$ 単項イデアル整域を認めれば、$\mathbb{Z}$ と $k[x]$ は単項イデアル整域になります。単項イデアル整域には最大公約数、最小公倍数のような概念が定まります。$a, b \in A$ に対して $(d) = (a) + (b)$ を満たす $d \in A$ は最大公約元、$(l) = (a) \cap (b)$ を満たす $l \in A$ は最小公倍元と呼ばれます。

それぞれの定義ができたので、ユークリッド整域 $\Rightarrow$ 単項イデアル整域の証明を行います。

証明

$A$ をユークリッド整域とし、$I \subset A$ をイデアルとします。$\mu(I \setminus \{0\}) \subset N$ は $N$ の部分集合なので最小値が存在します。その最小値を取る $x_0 \in I \setminus \{0\}$ を一つ取ります。このとき定義から、任意の $x \in I\setminus \{0\}$ に対して

$$x = q x_0 + r, \quad \mu(r) < \mu(x_0)$$

を満たす $q, r \in A$ が存在します。ここで $r = x -qx_0 \in I$ なので、$\mu(x_0)$ の最小性から $r = 0$ でなければなりません。これは $x = q x_0$ を意味しており、$I = (x_0)$ であることが示されました。$\Box$

単項イデアル整域だがユークリッド環でない例

$\mathbb{Z}\left[\frac{1 + \sqrt{-19}}{2}\right]$ は単項イデアル整域だが、ユークリッド整域ではないようです。例えば

などを見てください。

単項イデアル整域 $\Rightarrow$ 一意分解整域

整数環 $\mathbb{Z}$ では素因数分解の一意性が成り立ちます。これを一般化したのが一意分解整域です。

一意分解整域の定義

一意分解整域の定義の前に、幾つか準備をします。

単元、素元、既約元

$A$ を整域とします。$a \in A$ が逆元を持つとき、$a$ を単元といいます。$\mathbb{Z}$ の単元は $1$、$k[x]$ の単元は $k^{\times} = k \setminus \{0\}$ です。

$a \neq 0 \in A$ の生成するイデアル $(a)$ が素イデアルのとき、$a$ を素元といいます。$a \neq 0$ が $a = bc$ と分解されたとき、$b$ または $c$ のどちらかが必ず単元となるとき、$a$ を既約元といいます。どちらも素数の性質を一般化したものですが、一般の環においては両者は異なる概念です。

一般に、素元は既約元になります。実際 $a \in A$ を素元とし、$a = bc$ と分解されたとすると、$bc \in (a)$ であり、素イデアルの定義から $b$ または $c$ は $(a)$ に含まれます。$b \in (a)$ とし、$b = da$ と表されたとすると、$a = cda$ となります。このとき

$$a(1 -cd) = 0$$

ですが、$A$ は整域であり、$a \neq 0$ なので $1 = cd$ となり、$c$ は単元となります。よって $a$ は既約元です。

既約元だが素元ではない例

逆は一般には成り立たず、既約元であるが素元でない場合があります。例えば

$$\mathbb{Z}[\sqrt{-5}] = \{a + b \sqrt{-5} \mid a, b \in \mathbb{Z} \}$$

において、$2$ は既約元であるが、素元ではないようです。素元でないことは、

$$6 = (1 +\sqrt{-5})(1 -\sqrt{-5}) \in (2)$$

かつ $1 +\sqrt{-5} \notin (2)$ であることからわかります ($(2)$ が素イデアルではない)。

$2$ が既約元であることを示すために、

$$2 = (a + b\sqrt{-5})(c + d\sqrt{-5})$$

と表されたとし、$a + b\sqrt{-5}$, $c + d\sqrt{-5}$ は単元でないと仮定しましょう。上の式の共役を取ると

$$2 = (a -b\sqrt{-5})(c -d\sqrt{-5})$$

であり、辺々をかけ合わせると

$$4 = (a^2 + 5b^2)(c^2 + 5d^2)$$

となります。$a + b\sqrt{-5}$, $c + d\sqrt{-5}$ は単元でないので、$a^2 + 5b^2 \neq 1$ かつ $c^2 + 5d^2 \neq 1$ ですが、すると $a^2 + 5b^2 = 2$ かつ $c^2 + 5d^2$ でなければならず、満たす $a, b, c, d \in \mathbb{Z}$ は存在しません。よって矛盾します。

準備ができたので、一意分解整域の定義をします。

定義. 一意分解整域

$A$ を整域とする. $0$ でも単元でもない任意の $A$ の元が, 有限個の素元の積で表されるとき、一意分解整域 (UFD) または素元分解整域という. $\Box$

定義には分解の一意性を書いていませんが、分解の (順序と単元倍を除いた) 一意性は素元の性質から従います。それを確認しましょう。$A$ のある元が

$$p_1 p_2 \cdots p_r = q_1 q_2 \cdots q_s \quad (p_i, q_j \textrm{ は素元} ) $$

と表されたとします。ここで、$r \leq s$ としても一般性を失いません。このとき $q_1 q_2 \cdots q_s \in (p_1)$ ですが、$p_1$ は素元なので、ある $q_i$ について $q_i \in (p_1)$ となります。順番を入れ替えて、$q_1 \in (p_1)$ とします。このとき、$q_1 = u_1p_1$ となりますが、$q_1$ が既約元 (素元なので) であることと、$p_1$ が単元でないことから、$u_1$ は単元となります。これを $r$ まで繰り返すと

$$p_1 p_2 \cdots p_r = u_1 u_2 \cdots u_r q_{r+1} \cdots q_s p_1 \cdots p_r $$

となります。$A$ が整域で、$p_1 p_2 \cdots p_r \neq 0$ なので

$$u_1 u_2 \cdots u_r q_{r+1} \cdots q_s = 1$$

が成り立ちます。これは $q_j$ が素元であることに反します。よって $r = s$ であり、分解は順番と単元倍を除いて一意的になります。

分解の一意性から、一意分解整域においても、最小公倍元、最大公約元が単元倍を除いて定まります。

一意分解整域における素元と既約元の一致

一意分解整域においては、素元と既約元が一致します。つまり、既約元が素元になります。これは既約元 $a \in A$ の素元分解 $a = p_1 \cdots p_r$ を取ったとき、$r \geq 2$ ならば $p_i$ のどれかが単元になるので、$r=1$ なければならず、したがって $a$ が素元になることからわかります。

さらに、一意分解整域を、既約元への分解の一意性により特徴づけることもできます。つまり、整域 $A$ の単元でも $0$ でもない元が、既約元の積に単元倍を除いて一意的に分解されるとき、$A$ は一意分解整域になります。これを示すには、既約元への分解の一意性が成り立つときに、既約元が素元になることを示せば良いです。$a \in A$ を既約元、$xy \in (a)$ とします。$x, y$ の既約分解 $x_1 \cdots x_r$, $y_1 \cdots y_s$ を取ると、$a$ は既約元なので、既約分解の一意性により $x_1 \cdots x_r$, $y_1 \cdots y_s$ のどれかは $a$ の単元倍に一致します。$x_1 = ua$ であったとすると、$x \in (a)$ となり、$(a)$ が素イデアルである、つまり $a$ が素元であることがわかります。

これで準備が終わったので、単項イデアル整域 $\Rightarrow$ 一意分解整域を示します。

証明

$A$ を単項イデアル整域とします。一意分解整域の定義から、$0$ でも単元でもない元 $a$ が素元の積に分解されることを示せば良いです。環論の一般論から、$(a)$ を含む極大イデアル $\mathfrak{m}$ が存在します。$A$ は単項イデアル整域なので、$(p_1) = \mathfrak{m}$ を満たす $p_1 \in A$ が存在します。極大イデアルは素イデアルなので、$p_1$ は素元です。$(a) \subset (p_1)$ から $a \in (p_1)$ なので、

$$a = a_1 p_1$$

を満たす $a_1 \in A$ が存在します。これを繰り返して $a = a_n p_n \cdots p_1$ と分解したとき、いつか $a_n$ が単元になれば、$a$ が素元の積に分解されることがわかります。

$a_n$ が単元でないとします。このとき $a_n = a_{n+1} p_{n+1}$ と分解され、$(a_n) \subset (a_{n + 1})$ となりますが、$(a_n) \neq (a_{n+1})$ であることが次のようにしてわかります。もし $(a_n) \supset (a_{n + 1})$ とすると、$u a_n = a_{n + 1}$ となる $u \in A$ が存在し、$up_{n +1} a_{n +1} = a_{n+1}$ となります。$A$ が整域であることと $a_{n+1} \neq 0$ であることから、$up_{n +1} = 1$、つまり $p_{n+1}$ が単元になってしまいます。よって $(a_n) \neq (a_{n+1})$ です。

したがって、任意の $n$ に対して $a_n$ が単元でなければ、イデアルの真の増大列

$$(a) \subsetneq (a_1) \subsetneq (a_2) \subsetneq \cdots \subsetneq (a_n) \subsetneq \cdots$$

が得られます。このとき $\bigcup_{n=1}^{\infty} (a_n)$ は、$(a_n)$ が増大列なのでイデアルになりますが、$A$ が単項イデアル整域なので、

$$(a_{\infty}) = \bigcup_{n=1}^{\infty} (a_n)$$

となる $a_{\infty} \in A$ が存在します。このとき $a_{\infty} \in \bigcup_{n=1}^{\infty} (a_n)$ なので、ある $n$ に対して $a_{\infty} \in (a_n)$ となります。これは $(a_{\infty}) \subset (a_n)$ を意味するので

$$(a_n) \subset (a_{n+1}) \subset \cdots \subset (a_{\infty}) \subset (a_n)$$

となり、$(a_n) = (a_{n+1}) = \cdots$ となります。これは真の増大列であることに反するので、$a_n$ はどこかで単元となります。以上で $a$ が素元の積に分解されることがわかりました。$\Box$

一意分解整域だが単項イデアル整域でない例

体 $k$ 上の多変数多項式環 $k[X_1, \cdots X_n]$ は一意分解整域ですが、単項イデアル整域ではありません。単項イデアル整域ではないことは、例えばイデアル $(X_1, X_2)$ が単項でないことからわかります。一般に、一意分解整域 $A$ 上の多変数多項式環 $A[X_1, \cdots X_n]$ も一意分解整域であることが知られているので、それにより $k[X_1, \cdots X_n]$ が一意分解整域であることがわかります。

証明は例えば

に載っています。

一意分解整域 $\Rightarrow$ 正規環

まずは正規環の定義をします。

正規環の定義

$A$ を整域とします。$A$ の商体 $K$ を

$$K = \left\{\frac{a}{b} \mid a, b \in A, \ b \neq 0 \right\}$$

とします。ただし、$ad = bc$ のとき $a/b = c/d$ とします。つまり通分して等しいものは等しいとみなします。$K$ には普通の分数のように和と積を定義できて、それにより体となります。例えば $\mathbb{Q}$ は $\mathbb{Z}$ の商体です。

$A$ を整域、$K$ をその商体とします。$x \in K$ が、$A$ 係数のモニックな多項式 (最高次の係数が $1$ の多項式) の根であるとき、つまり

$$x^n + a_{n-1} x^{n-1} + \cdots + a_1 x + a_0 = 0$$

を満たす $a_i \in A \ (0 \leq i \leq n-1)$ が存在するとき、$x$ は $A$ 上整であるといいます。

定義. 正規環 (整閉整域)

$A$ を整域, $K$ をその商体とする. $x \in K$ が $A$ 上整ならば常に $x \in A$ を満たすとき, $A$ を正規環または整閉整域という. $\Box$

一意分解整域 $\Rightarrow$ 正規環を証明します。

証明

$A$ を一意分解整域とし、その商体を $K$ とします。$x/y \in K$ を一つとり、$x, y \in A$ は互いに素であるように取ります。そして、$x/y$ が $A$ 係数のモニックな多項式の根となる、つまり

$$\left(\frac{x}{y} \right)^n + a_{n-1}\left(\frac{x}{y} \right)^{n-1} + \cdots + a_0 = 0$$

が成り立つとします。このとき、$x / y \in A$ であることを示せば良いです。上の式を変形すると

$$x^n = -y(a_{n-1} x^{n-1} + a_{n-2} x^{n-2}y + \cdots + a_0y^{n-1})$$

となるので、$x^n$ は $y$ で割り切れます。

一方、$y$ を単元でないとし、$x, y$ の素元分解を $x = p_1 \cdots p_r$, $y = q_1 \cdots q_s$ とおきます。このとき $x^n = p_1^n \cdots p_r^n$ であり、$x$ と $y$ は互いに素なので、$q_1$ は $p_1, \cdots p_r$ のどの単元倍とも一致しません。よって $x^n$ は $y$ で割り切れず矛盾し、$y$ は単元になります。よって $x / y \in A$ となります。$\Box$

例.

$\mathbb{Z}$ はユークリッド整域なので正規環です。$\mathbb{Z}$ の商体は $\mathbb{Q}$ です。

$$x^2 -2 = 0$$

は $\pm \sqrt{2}$ を根に持ちますが、$\sqrt{2} \not \in \mathbb{Q}$ なので問題ありません。$\Box$

正規環だが一意分解整域でない例

$\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ がその例になります。$\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ が一意分解整域でないことはすでに説明したので、正規環であることを確認します。ただし、結構複雑なので概略のみを述べることとします。

整拡大と整閉包

準備として、整拡大について簡単に述べます。$A, B$ を可換環とし、準同型 $A \to B$ が与えられているものとします。$a \in A$ のこの準同型による像も $a \ (\in B)$ と表すこととします。$x \in B$ が $A$ 係数のモニックな多項式の根であるとき、$x$ は $A$ 上整といいます。$B$ が $A$ の商体 $K$ の場合は先ほどの定義と一致します。

$A$ 上整な元全体の集合 $\overline{A} \subset B$ は、部分環をなすことが知られており ([H] 定理 4.3 (ii)) $\overline{A}$ を $B$ における $A$ の整閉包といいます。$\overline{A}$ の整閉包 $\overline{\overline{A}}$ は $\overline{A}$ と一致することが知られています ([H] 定理 4.3 (iii))。

2 次体の整数環について

整数 $m$ に対して、

$$K = \mathbb{Q}(\sqrt{m}) = \{p + q \sqrt{m} \mid p, q \in \mathbb{Q}\}$$

2 次体といいます。$K$ における $\mathbb{Z}$ の整閉包を $K$ の整数環といい、$\mathfrak{o}_K$ と表します。

$m \neq 0, 1$ を平方因子を持たない整数、つまり $m = n^2 l$ のような整数でないものとします。このとき、$m \equiv 1 \pmod 4$ ならば

$$\mathfrak{o}_K = \left\{ \frac{u + v\sqrt{m}}{2} \mid u, v \in \mathbb{Z}, \ u \equiv v \pmod 2 \right\}$$

$m \equiv 2, 3 \pmod 4$ ならば

$$\mathfrak{o}_K = \left\{ u + v\sqrt{m} \mid u, v \in \mathbb{Z} \right\}$$

であることが知られているようです ([M] 定理 4.6 P.18)。$-5 \equiv 3 \pmod 4$ なので、$\mathbb{Q}(\sqrt{m})$ の整数環は $\mathbb{Z}(\sqrt{m})$ になります。

$\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ が正規環であること

$\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ の商体は

$$\mathbb{Q}(\sqrt{-5}) = \{p + q \sqrt{-5} \mid p, q \in \mathbb{Q}\}$$

となります。実際、任意の $a + b\sqrt{-5}$, $c + d\sqrt{-5}$ $\in \mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ に対して

$$\frac{a + b\sqrt{-5}}{c + d\sqrt{-5}} = \frac{ac -5bd + (ad + bc)\sqrt{-5}}{c^2 + 5d^2} \in \mathbb{Q}(\sqrt{-5})$$

であり、逆に $p = p_1 / p_2$, $q = q_1 / q_2$ $(p_1, p_2, q_1, q_2 \in \mathbb{Z})$ とすれば

$$p + q \sqrt{-5} = \frac{p_1q_2 + p_2 q_1 \sqrt{-5} }{p_2 q_2} = \frac{p_1q_2 + p_2 q_1 \sqrt{-5} }{p_2 q_2 + 0\sqrt{-5} }$$

となります。ここで、$\mathbb{Q}(\sqrt{-5})$ の整数環、つまり $\mathbb{Q}(\sqrt{-5})$ における $\mathbb{Z}$ の整閉包は $\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ なので、$\mathbb{Q}(\sqrt{-5})$ における $\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ の整閉包は $\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ になります。よって $\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ は正規環となります。

参考文献

[H] 堀田 良之. 可換環と体

[M] 2次体の整数論 (MATHEMATICS.PDF)