ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第11回(1月6日)

今回は、京都大学OCWで3回生向けに後期に行われたガロア理論の講義の第11回の内容の要約をします。4次多項式のガロア群の計算が一部を残して完了し、円分体に入ります。

  1. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:目次
  2. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第1回(10月7日)
  3. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第2回(10月14日)
  4. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第3回(10月21日)2限
  5. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第3回(10月21日)3限
  6. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第4回(10月28日)
  7. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第5回(11月4日)
  8. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第6回(11月11日)
  9. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第7回(11月18日)
  10. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第8回(12月2日)
  11. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第9回(12月9日)
  12. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第10回(12月16日)
  13. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第11回(1月6日)← 今回
  14. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第12回(1月13日)

正規環とその商体上の多項式の既約性 (00:08~)

1 回目の講義で証明した、$A$ が UFD で $f(x) \in A[x]$ がモニックのとき、その商体 $K$ で $f$ が可約なら、$A$ 上でモニックな多項式に分解できるという命題を、正規環のときも成り立つとだけ言って証明していなかったので、ここで証明します。

命題. (00:52~)

$A$ を正規環, $K$ を $A$ の商体とし, $f(x) \in A[x]$ はモニック多項式であるとする. このときもし $f(x)$ が $K$ 上可約なら, モニック多項式 $g(x), h(x) \in A[x]$ が存在し,

$$f(x) = g(x)h(x), \ \ \deg g, \deg h > 0$$

となる.

(証明の概略) : 仮定から $f(x) = g(x)h(x)$, $\deg g, \deg h > 0$ となる $g(x), h(x) \in K[x]$ が存在する. $g(x)$ と $h(x)$ の最高次の係数は $1$ として良い. $g(x)$ の根を $\alpha_1, \cdots, \alpha_m \in \overline{K}$, $h(x)$ の根を $\beta_1, \cdots, \beta_l \in \overline{K}$ とおくと, それらは $f(x)$ の根でもある. $f(x)$ はモニックなので, $\alpha_i, \beta_j$ は $A$ 上整である. $g(x)$ の係数は $\alpha_1, \cdots, \alpha_m$ の基本対称式 (の $\pm 1$ 倍) なので $A$ 上整で ($A$ 上整な元全体は部分環をなす), $g(x) \in K[x]$ なので, それは $K$ の元である. $A$ は正規環なので, $g(x) \in A[x]$ かつモニックとなる. $h(x)$ も同様. $\Box$

(補足: 特に正規環上のモニック多項式が既約なら、その商体上でも既約です。)

4次多項式のガロア群 (続き) (07:08~)

前回の復習 (07:08~)

前回の続きをします。$K$ を体、

$$f(x) = x^4 + a_1x^3 + \cdots + a_4 \in K[x]$$

を既約分離多項式とし、$L$ を $f$ の最小分解体としたとき、ガロア群 $G = \mathrm{Gal}(L/K)$ を求めます。前回は $f$ に対して 3 次多項式 $g(x) \in K[x]$ と 2 次多項式 $h(x) \in K[x]$ を構成し, $g, h$ が既約か可約かで $G$ を分類できることを示しました。

しかし、$g$ が可約かつ $h$ が既約の場合、$G$ が $D_4$ であるか $\mathbb{Z}/ 4\mathbb{Z}$ であるかを区別できませんでした。前回の最後に、これを区別する方法を主張だけ述べて証明をしていませんでした。

(10:51~) $\alpha_1, \cdots, \alpha_4$ を $f$ の根としたとき, $g$ の根を

\begin{align} \tau_1 &= \alpha_1 \alpha_2 + \alpha_3 \alpha_4 \\ \tau_2 &= \alpha_1 \alpha_3 + \alpha_2 \alpha_4 \\ \tau_3 &= \alpha_1 \alpha_4 + \alpha_2 \alpha_3 \\ \end{align}

と定めました。$G$ が $D_4$ または $\mathbb{Z}/ 4\mathbb{Z}$ であるとき、どれかひとつのみが $K$ の元になるのでした。$\tau_2 \in K$ として

$$g(y) = (y^2 + d_1 y +d_2)(y -\tau_2)$$

とおくと、$d_1, d_2 \in K$ で、$y^2 + d_1 y +d_2$ は既約です。$g$ が分離的であることは、$f$ が分離的であることと、$f$ と $g$ の判別式が一致することからわかります。よって $K(\tau_1)/K$ は 2 次のガロア拡大となります。

前回の命題の証明 (13:09~)

命題. (13:09~)

$f(x) \in K[x]$ を 4 次の既約分離多項式, $L$ をその最小分解体, $G = \mathrm{Gal}(L/K)$ とし, $G$ が $D_4$ または $\mathbb{Z}/ 4\mathbb{Z}$ に同型であるとする. さらに, $G$ は $\tau_2$ を固定するとする. このとき以下は同値である.

  1. $G \simeq \mathbb{Z}/ 4\mathbb{Z}$
  2. 2 つの方程式
    \begin{align} w^2 + a_1 w -d_1 &= 0 \\ w^2 -\tau_2 w + a_4 &= 0 \end{align}
    が各々 $K(\tau_1)$ に解を持つ $\Box$

(証明の概略) : まず (1) と, $f(x)$ が $K(\tau_1)$ 上可約であることが同値であることを示す. そのためには $G \simeq D_4$ のとき $f$ が $K(\tau_1)$ 上既約, $G \simeq \mathbb{Z}/ 4\mathbb{Z}$ のとき $K(\tau_1)$ 上可約であることを示せば良い.

$G \simeq D_4$ とする. $G$ が $\tau_2$ を固定するので $G = D_4 = \langle(1234), (24) \rangle$ で,

\begin{align} (1234)^2 &= (12)(24) \\ (1234) (24) &= (12)(34) \end{align}

なので, $N$ を Klein の四元群とすると $N \subset D_4$ である. ここで, 制限写像

$$\varphi: G = \mathrm{Gal}(L / K) \to \mathrm{Gal}(K(\tau_1)/ K) \simeq \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$$

を考えると, $|\operatorname{Ker}(\varphi)| = |G| / 2 = 4$ である. $N$ は $\tau_1, \tau_2, \tau_3$ を固定するので $N \subset \operatorname{Ker}(\varphi)$ だが, $|N| = 4$ なので $N = \operatorname{Ker}(\varphi)$ となる. 特に (ガロア群の定義から)

$$N = \mathrm{Gal}(L / K(\tau_1))$$

である. また, $N$ は $\{\alpha_1, \cdots, \alpha_4\}$ に推移的に作用するので, 以前示した命題から $f$ は $K(\tau_1)$ 上既約である.

$G \simeq \mathbb{Z} / 4\mathbb{Z}$ とする. $G$ が $\tau_2$ を固定するので $G = \langle (1234)\rangle$ である. 制限写像

$$\varphi: G = \mathrm{Gal}(L / K) \to \mathrm{Gal}(K(\tau_1)/ K)$$

を考えると, 今度は $|\operatorname{Ker}(\varphi)| = |G| / 2 = 2$ である. $(1234)^2 = (13)(24)$ で, これは $\tau_1$ を固定するので,

$$\operatorname{Ker}(\varphi) = \mathrm{Gal}(L / K(\tau_1)) = \langle (13)(24)\rangle$$

である. よって

$$(x -\alpha_1)(x -\alpha_3), \ (x -\alpha_2)(x -\alpha_4)$$

は両方 $(13)(24)$ で不変なので $K(\tau_1)[x]$ の元であり, $f(x)$ はこの二つの積で表せるので, $f(x)$ は $K(\tau_1)$ 上可約である.

以上で (1) と, $f$ が $f(x)$ は $K(\tau_1)$ 上可約であることが同値であることが示された. 特に $f(x)$ が可約であれば, $G \simeq \mathbb{Z} / 4 \mathbb{Z}$ から

\begin{align} (x -\alpha_1)(x -\alpha_3) &\in K(\tau_1)[x], \\ (x -\alpha_2)(x -\alpha_4) &\in K(\tau_1)[x]\end{align}

がわかる.

ここで逆に,

$$(x -\alpha_1)(x -\alpha_3) \in K(\tau_1)[x]$$

となる条件を考える. それは

$$\alpha_1 + \alpha_3 , \alpha_1 \alpha_3 \in K(\tau_1)$$

と同値である. $t_1 = \alpha_1 + \alpha_3$, $t_2 = \alpha_2 + \alpha_4$ とおくと,

\begin{align} t_1 + t_2 &= -a_1 \\ t_1 t_2 &= \alpha_1 \alpha_2 + \alpha_1 \alpha_4 \\ & \quad + \alpha_2 \alpha_3 + \alpha_3\alpha_4 \\ &= \tau_1 +\tau_3 \\ &= -d_1 \end{align}

であり, $t_1$ は

$$w^2 + a_1w -d_1$$

の根である. $s_1 = \alpha_1 \alpha_3$, $s_2 = \alpha_2 \alpha_4$ とおくと $s_1 + s_2 = \tau_2$, $s_1s_2 = a_4$ なので, $s_1$ は

$$w^2 -\tau_2w +a_1$$

の根である. それぞれ 2 次多項式なので, $K(\tau_1)$ 上に根を持てば全て $K(\tau_1)$ 上の根である. よってそれぞれが $K(\tau_1)$ 上に根を持てば,

$$(x -\alpha_1)(x -\alpha_3) \in K(\tau_1)[x]$$

つまり $G \simeq \mathbb{Z} / 4 \mathbb{Z}$ である.$\Box$

根を持つことの判定 (30:29~)

次に解を持つことをどのように判定するかを考えましょう。標数 2 の場合は難しいので省略しますが, 標数 2 以外の場合はクンマー理論を使います。まだ話していませんが、主張だけ仮定して話を進めます。

(31:10~) $\mathrm{ch} K \neq 2$ とすると、$K(\tau_1) = K(\sqrt{A})$ という形になります。さっきの二つの方程式の判別式はそれぞれ

$$a_1^2 + 4d_1, \ \tau_2^2 -4a_4$$

なので、これらの平方根が $K(\tau_1)$ に入っていれば良いです。クンマー理論から

$$\sqrt{B} \in K(\sqrt{A}) \Leftrightarrow B A^{-1} \in \left(K^{\times}\right)^2$$

が成り立ち、例えば $K = \mathbb{Q}$ ならこれは素因数分解で判定できます。$\mathrm{ch} K \neq 2$ のときはこれで判定できます。

(34:37~) $\mathrm{ch} K = 2$ の場合はアルティン・シュライアー理論を使います。この場合、2次拡大は

$$x^2 + x+ a$$

という形の最小多項式を持ちます。1 次の項がなければ純非分離拡大になるので、1 次の項は必ず存在し、簡単な変数変換 ($x \mapsto cx$) で 1 に変換することができます。アルティン・シュライアー理論により、$G \simeq \mathbb{Z} / 4 \mathbb{Z}$ は次の 1, 2 の両方が成り立つことが同値であることがわかります。

  1. 「$a_1 = 0$ かつ $d_1 \in \left(K(\tau_1)^{\times}\right)^2$」 または 「$a_1 \neq 0$ かつ
    $$d_1a_1^{-2} \in \{\alpha d_2 d_1^{-2} + \beta^2 + \beta \mid \alpha \in \mathbb{F}_2, \beta \in K\}$$
  2. 「$\tau_2 = 0$ かつ $a_4 \in \left(K(\tau_1)^{\times}\right)^2$」または 「$\tau_2 \neq 0$ かつ
    $$a_4 \tau_2^{-2} \in \{\alpha d_2 d_1^{-2} + \beta^2 + \beta \mid \alpha \in \mathbb{F}_2, \beta \in K\}$$

アルティン-シュライアー理論は雪江先生の著書「代数学2 環と体とガロア理論」の4章に載っているらしいです。

推進定理 (39:28~)

円分体をやりたいのですが、その前に推進定理をやります。$L / K$ を拡大体、$N, M$ を中間体とし、$L = M \cdot N$, $K = M \cap N$ を満たすとします。

\[ \xymatrix@=10pt{ & L = M \cdot N \ar@{-}[rd]\ar@{-}[ld] & \\ M & & N \\ & K = M \cap N \ar@{-}[ru]\ar@{-}[lu] & } \]

定理. 推進定理 (40:58~)

上の状況で, $M / K$ を有限次ガロア拡大とする. このとき,

  1. $L /N$ は有限次ガロア拡大で, 制限写像によって
    $$\mathrm{Gal}(L / N) \simeq \mathrm{Gal}(M / K)$$
    が成り立つ. ($N / K$ は超越拡大でもよい. )
  2. $N / K$ も有限次ガロア拡大ならば, $L$ も $K$ 上のガロア拡大で
    $$\mathrm{Gal}(L / K) \simeq \mathrm{Gal}(M / K) \times \mathrm{Gal}(N / K)$$
    が成り立つ.

(補足) $N / K$ が超越拡大の場合は例えば有理関数体上の多項式を考えるときに現れる.

(証明の概略) : (1) を示す. 以前示した定理から, $M = K(\alpha)$ となる $\alpha \in M$ が存在する. このとき, $L = N(\alpha)$ が成り立つ. 特に $L / N$ は有限次代数拡大である. $\alpha$ の $K$ 上の最小多項式を$f(x)$, $N$ 上の最小多項式を $g(x)$ とおくと, $g$ の根は $f$ の根で, $\alpha$ は $K$ 上分離的なので, $N$ 上も分離的である. $\alpha$ の $N$ 上の共役は $K$ 上でも共役で, それは $M$ に含まれるので, $L / N$ は正規拡大である. よって $L / N$ は有限次ガロア拡大である.

$\sigma \in \mathrm{Gal}(L / N)$ とする. $\sigma|_M$ は $M \cap N = K$ を固定する. $\sigma$ は $\alpha$ を $g(x)$ の根に移すが, それは $f(x)$ の根でもあるので $\sigma(M) = M$ である. よって $\sigma|_M \in \mathrm{Gal}(M / K)$ である. $M$ への制限は合成と可換なので,

$$\varphi: \mathrm{Gal}(L / N) \to \mathrm{Gal}(M / K)$$

は準同型である. $\varphi$ が同型であることを示す. $\sigma|_M = \mathrm{id}_M$ とすると, $\sigma$ は $M$ と $N$ の両方を固定するが, $L = M \cdot N$ なので $\sigma$ は恒等写像. よって $\varphi$ は単射.

$\varphi$ が全射であることを示す. ガロアの基本定理から

\begin{align} &\varphi(\mathrm{Gal}(L / N)) = \mathrm{Gal}(M / K) \\ \Leftrightarrow \ & \varphi(\mathrm{Gal}(L / N)) \textrm{ の不変体が } K \end{align}

なので, $x \in M$ が任意の $\sigma \in \mathrm{Gal}(L/N)$ に対して $\sigma(x) = x$ を満たすならば, $x \in K$ であることを示せば良い. $L / N$ でのガロアの基本定理から, $x \in L$ が任意の $\sigma \in \mathrm{Gal}(L/N)$ に対して $\sigma(x) = x$ を満たすならば, $x \in N$ である. よって $x \in M$ ならば $x \in M \cap N = K$ となり, $\varphi$ が全射であることが示された.

(2) を示す. $N = K(\beta)$ となる $\beta \in L$ が存在する. このとき $L = K(\alpha, \beta)$ である. $\alpha, \beta$ は $K$ 上分離的, $\alpha$ の共役は全て $M$ の元, $\beta$ の共役は全て $N$ の元なので, $L / K$ はガロア拡大である. 制限により, 準同型

$$\psi: \mathrm{Gal}(L / K) \to \mathrm{Gal}(M / K) \times \mathrm{Gal}(N / K)$$

が存在する. $\sigma \in \operatorname{Ker}(\psi)$ ならば, $\sigma$ は $M, N$ の元を固定するので, $L$ を固定する. よって $\sigma$ は恒等写像, つまり $\psi$ は単射である.

$\psi$ が全射であることを示す. (1) から,

\begin{align} [M :K] &= |\mathrm{Gal}(M / K)| \\ &= |\mathrm{Gal}(L / N)| \\ &= [L : N] \end{align}

が成り立つ. よって

\begin{align} |\mathrm{Gal}(L/K)| &= [L :N][N : K] \\ &= [M : K][N : K] \\ &= |\mathrm{Gal}(M/K)||\mathrm{Gal}(L/K)| \end{align}

となる. $\psi$ は単射で, 位数が同じなので

$$\mathrm{Gal}(L/K) \simeq \mathrm{Gal}(M/K) \times \mathrm{Gal}(L/K)$$

が成り立つ.$\Box$

円分体 (1:03:30~)

$\mathbb{Q}$ に $1$ の冪根を付け加えた体を円分体といいます。$n > 1$ を整数とし、$z \in \mathbb{C}$ が $z^n = 1$ を満たすとき $z$ を $1$ の $n$ 乗根と言います。$1 < m < n$ に対し $z^m \neq 1$ かつ $z^n= 1$ を満たすとき、$z$ を $1$ の原始 $n$ 乗根と言います。

$$\zeta_n = e^{\frac{2 \pi \sqrt{-1}}{n}}$$

は $1$ の原始 $n$ 乗根です。

定義. (1:06:00 ~)

$\mathbb{Q}(\zeta_n)$ という形の体を円分体という. $\Box$

円分体にまつわる話 (1:06:31)

$\mathbb{Z}_p$ 拡大 (1:06:31)

円分体、というか岩澤理論が最近流行っています。これから示しますが、$\mathbb{Q}(\zeta_n) / \mathbb{Q}$ はガロア拡大で、

$$\mathrm{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta_n) / \mathbb{Q}) \simeq (\mathbb{Z} / n \mathbb{Z})^{\times}$$

が成り立ちます。特に $p$ が奇素数で $n$ が $p$ 冪のときは

$$\mathrm{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta_{p^l}) / \mathbb{Q}) \simeq (\mathbb{Z} / p^l \mathbb{Z})^{\times} \simeq \mathbb{Z}/ p^{l-1} \mathbb{Z} \times \mathbb{Z} / (p-1) \mathbb{Z}$$

となります。よって拡大体 $K_l / \mathbb{Q}$ で、

$$\mathrm{Gal}(K_l / \mathbb{Q}) \simeq \mathbb{Z} / p^{l-1} \mathbb{Z}$$

を満たすものが存在します。それを $l$ について合成体を取ると、$\mathbb{Z}_p$ を $p$ 進整数環として

$$\mathrm{Gal}(\bigcup_l K_l / \mathbb{Q}) \simeq \mathbb{Z}_p$$

となります。このような拡大を $\mathbb{Z}_p$ 拡大といい、このようなものは盛んに研究されています。

クロネッカー・ウェーバーの定理 (1:09:32~)

もう少し古典的な話をします。$K/ \mathbb{Q}$ が有限次アーベル拡大ならば、ある $n$ が存在して

$$K \subset \mathbb{Q}(\zeta_n)$$

となります。これをクロネッカー・ウェーバーの定理といいます。指数関数という超越関数で定義された円分体が全てのアーベル拡大を記述しているという面白い定理です。アーベル拡大は、素数の分解に関して相互法則が成り立つという、良い性質を持ちますが、それが超越関数の $n$ 等分点で表されます。これを指数関数ではなく楕円関数の $n$ 等分点にしたらどうなるか、というのがクロネッカーの青春の夢と呼ばれていたもので、高木貞治が類体論を使って証明しました。

この授業ではやりませんが、円分体は素数の分解を綺麗に記述できる体です。

拡大次数 (1:13:54~)

オイラー関数が拡大次数となります。

定義. (円分多項式、オイラー関数) (1:14:05~)

整数 $n > 1$ に対して

$$\Phi_n(x) = \prod_{\substack{0 < i < n, \\ i, n \textrm{ 互いに素}} } (x -\zeta_n^i)$$

円分多項式という. また, 整数 $n \geq 1$ に対して

$$\phi(n) = |(\mathbb{Z}/ n\mathbb{Z})^{\times}| = \sum_{\substack {1 \leq i \leq n, \\i, n \textrm{ 互いに素} }}1$$

オイラー関数という.$\Box$

$GCD(n, m) = 1$ のとき (つまり互いに素であるとき)、中国式剰余定理から

$$\mathbb{Z} / nm \mathbb{Z} \simeq \mathbb{Z} / n \mathbb{Z} \times \mathbb{Z} / m \mathbb{Z}$$

なので、可逆元全体は

$$(\mathbb{Z} / nm \mathbb{Z})^{\times} \simeq (\mathbb{Z} / n \mathbb{Z})^{\times} \times (\mathbb{Z} / m \mathbb{Z})^{\times}$$

となります。よって位数を取れば

$$\varphi(nm) = \varphi(n) + \varphi(m)$$

となります。命題の形に書いておくと、以下のようになります。

命題. (1:16:54~)

$\mathrm{GCD}(n, m) = 1$ ならば $\varphi(nm) = \varphi(n) + \varphi(m)$. $\Box$

正の整数上で定義された、このような性質を満たす関数を、整数論では乗法的関数といいます。

例. (1:17:46 ~)

$\varphi(1) = 1$ で, $p$ が素数ならば $\varphi(p) = p-1$ となる. $p$ 冪に関しては, $1$ から $p^n$ までの中に $p$ の倍数は $p^{n -1}$ 個あるので, $\varphi(p^n) = (p-1)p^{n-1}$ .$\Box$

円分多項式が既約であることをいいたいですが、その前に基本的なことを示します。

命題. (1:19:28~)

以下が成り立つ.

  1. $x^n -1 \in \mathbb{Q}[x]$ は重根を持たない. また, 根の集合は $\{1, \zeta_n, \cdots \zeta_n^{n-1}\}$
  2. $\mathbb{Q}(\zeta_n)/\mathbb{Q}$ はガロア拡大で, $\sigma \in \mathrm{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta_n)/\mathbb{Q})$ に対して $n$ と互いに素な整数 $i$ が存在し, $\sigma(\zeta_n) = \zeta_n^i$
  3. $\Phi_n(x) \in \mathbb{Z}[x]$

(証明の概略) : (1) を示す. $0$ は $x^n -1$ の根ではない. $(x^n -1)^{\prime} = nx^{n-1}$ の根は $0$ のみ. よって微分と共通根を持たず, $x^n -1$ は重根を持たない. 後半は明らか.

(2) を示す. $\mathrm{ch} \mathbb{Q} = 0$ なので $\zeta_n$ は $\mathbb{Q}$ 上分離的. $\zeta_n$ の最小多項式は $x^n -1$ を割り切るので, $\zeta_n$ の共役は $\zeta_n^{i}$ という形をしている. $\zeta_n^{i} \in \mathbb{Q}(\zeta_n)$ なので, $\mathbb{Q}(\zeta_n)/\mathbb{Q}$ は正規拡大. よってガロア拡大.

$\sigma \in \mathrm{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta_n)/\mathbb{Q})$ に対して, $\sigma(\zeta_n)$ の行き先は $x^n -1$ の根のどれかなので, $\sigma(\zeta_n) = \zeta_n^a$ となる $a$ が存在する. 同様に $\sigma^{-1}(\zeta_n) = \zeta_n^b$. このとき

$$\zeta_n = \sigma^{-1} \circ \sigma(\zeta_n) = \zeta_n^{ab}$$

なので $ab \equiv 1 \bmod n$, つまり $a$ と $n$ は互いに素.

(3) を示す.

$$X = \{\zeta_n^i \mid \mathrm{GCD}(n, i) = 1\}$$

とおくと, (2) から $\mathrm{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta_n)/\mathbb{Q})$ は $X$ を不変にする. $\Phi_n(x)$ の係数は $X$ の元の基本対称式 $\pm 1$ の形をしているので, ガロア群の元で不変で, $\mathbb{Q}$ に含まれる. よって $\Phi_n(x) \in \mathbb{Q}[x]$ となる. $\Phi_n(x)$ の係数の分母の最小公倍数を $d$ とおくと, $d \Phi_n(x)$ は原始多項式である. $x^n -1$ は, 共通根を持つので $\mathbb{Q}[x]$ 上で $d \Phi_n(x)$ で割り切れるが, $d \Phi_n(x)$ (と $x^n-1$ ) は原始多項式なので, (ガウスの補題から) $\mathbb{Z}[x]$ で割り切れる. 最高次の項を考えると, $d = 1$ となる. よって $\Phi_n(x) \in \mathbb{Z}[x]$. $\Box$

次回

ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第12回(1月13日)