ヴィエトの公式は
\begin{align} \frac{2}{\pi} &= \sqrt{\frac{1}{2}} \sqrt{\frac{1}{2} + \frac{1}{2} \sqrt{\frac{1}{2}}} \sqrt{\frac{1}{2} + \frac{1}{2}\sqrt{\frac{1}{2} + \frac{1}{2} \sqrt{\frac{1}{2}}}} \cdots \\ &= \frac{\sqrt{2}}{2} \frac{\sqrt{2 +\sqrt{2}}}{2} \frac{2 + \sqrt{2 +\sqrt{2}}}{2} \cdots \end{align}
という、$2$ と $\frac{1}{2}$ とルートだけで $\pi$ を表した不思議な式です。これは
$$x_1 = \sqrt{\frac{1}{2}}, \ x_{n+1} = \sqrt{\frac{1}{2} + \frac{1}{2} x_n}$$
とおいて
\begin{align}\frac{2}{\pi} &= \prod_{n=1}^{\infty} x_n \\ &= x_1 x_2 \cdots x_n \cdots \end{align}
と表すことができます。ヴィエトの公式の証明は以下の動画で与えています。
アルキメデスは、$p_n$ を円の内接正 $n$ 角形の1辺の長さ、$P_n$ を円の外接正 $n$ 角形の1辺の長さとおいたとき、実質的に次の関係を示し、円周率を求めました。
\begin{align} p_{2n} &= \sqrt{2 -\sqrt{4 -p_n^2}} \\ P_{2n} &= \frac{2 \sqrt{4 + P_n^2} -4}{P_n} \end{align}
この記事では、この漸化式からヴィエトの公式が導けることを紹介します。
アルキメデスからヴィエト
円の内接正 $n$ 角形の辺の長さに関する式
$$p_{2n} = \sqrt{2 -\sqrt{4 -p_n^2}}$$
からヴィエトの公式を導きます。$n$ 角形の辺は $n$ 個なので、
$$\lim_{n \to \infty} n p_n = 2\pi$$
が成り立ちます。$m \geq 2$ として
\begin{align} \left(\frac{2^{m} p_{2^{m}}}{2^{m+1} p_{2^{m+1}}}\right)^2 &= \frac{1}{4} \frac{p_{2^{m}}^2}{2 -\sqrt{4 -p_{2^{m}}^2}} \\ &= \frac{1}{4} (2 +\sqrt{4 -p_{2^{m}}^2}) \\ &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2} \sqrt{1 -\frac{p_{2^{m}}^2}{4}} \end{align}
となります。ここで
\begin{align} 1 -\frac{p_{2^{m+1}}^2}{4} &= 1 -\frac{2 -\sqrt{4 -p_{2^{m}}^2}}{4} \\ &= \frac{1}{2} +\frac{\sqrt{4 -p_{2^{m}}^2}}{4} \\ &= \frac{1}{2} +\frac{1}{2}\sqrt{1 -\frac{p_{2^{m}}^2}{4}} \end{align}
なので、
$$a_m = \frac{2^{m} p_{2^{m}}}{2^{m+1} p_{2^{m+1}}}$$
とおくと、
\begin{align} a_{m+1} &= \sqrt{1 -\frac{p_{2^{m+2}}^2}{4}} \\ &= \sqrt{\frac{1}{2} +\frac{1}{2}\sqrt{1 -\frac{p_{2^{m+1}}^2}{4}}} \\ &= \sqrt{\frac{1}{2} +\frac{1}{2} a_m} \end{align}
が成り立ちます。ここで、半径 $1$ とすると $p_4 = \sqrt{2}$ なので
\begin{align} & \frac{4 p_4}{8 p_8} \frac{8p_8}{16 p_{16}} \cdots \frac{2^m p_{2^m}}{2^{m+1} p_{2^{m+1}}} \\ = \ & \frac{4 p_4}{2^{m+1} p_{2^{m+1}}} = \frac{4 \sqrt{2}}{2^{m+1} p_{2^{m+1}}} \\ \to \ & \frac{2 \sqrt{2}}{\pi} \quad (m \to \infty) \end{align}
が成り立ちます。一方
$$\frac{4 p_4}{8 p_8} \frac{8p_8}{16 p_{16}} \cdots \frac{2^m p_{2^m}}{2^{m+1} p_{2^{m+1}}} = a_2 a_3 \cdots a_m$$
なので
$$\frac{2 \sqrt{2}}{\pi} = a_2 a_3 \cdots a_m \cdots$$
が成り立ち、$a_1 = \sqrt{\frac{1}{2}}$ とおくと、$a_2 = \sqrt{\frac{1}{2} + \frac{1}{2}a_1}$ が成り立つので
\begin{align} &\frac{2}{\pi} = a_1a_2 a_3 \cdots a_m, \\ &a_1 = \sqrt{\frac{1}{2}}, \ a_{m+1} = \sqrt{\frac{1}{2} + \frac{1}{2}a_m} \end{align}
となり、ヴィエトの公式が得られます。これが意味するところは、アルキメデスの方法とヴィエトの方法を比較して、収束の速さが同じであるということです。
アルキメデス (外接円) からヴィエト風
内接正 $n$ 角形の式からヴィエトの公式が得られたなら、外接正 $n$ 角形に関する式
$$P_{2n} = \frac{2 \sqrt{4 + P_n^2} -4}{P_n}$$
を用いてヴィエト風の公式を得られるでしょうか。まず
\begin{align} \frac{2^{m} P_{2^m}}{2^{m+1} P_{2^{m+1}}} &= \frac{1}{2} \frac{P_{2^m}^2}{2 \sqrt{4 + P_{2^m}^2} -4}\\ &= \frac{1}{4} \frac{P_{2^m}^2}{\sqrt{4 + P_{2^m}^2} -2} \\ &= \frac{1}{4} \left(\sqrt{4 + P_{2^m}^2} +2\right) \\ &= \frac{1}{2} +\frac{1}{2}\sqrt{1 + \frac{P_{2^m}^2}{4}} \end{align}
となります。また、
\begin{align} 1 + \frac{P_{2^{m+1}}^2}{4} &= 1 + \frac{1}{4} \frac{\left(2 \sqrt{4 + P_{2^m}^2} -4 \right)^2}{P_{2^m}^2}\\ &= 1 + \frac{\left(\sqrt{4 + P_{2^m}^2} -2\right)^2}{P_{2^m}^2} \\ &= 1 +\frac{(4 + P_{2^m}^2) -4\sqrt{4 + P_{2^m}^2} +4}{P_{2^m}^2} \\ &= 2 +\frac{8 -4\sqrt{4 + P_{2^m}^2}}{P_{2^m}^2} \\ &= 2 -\frac{4}{2 +\sqrt{4 + P_{2^m}^2}} \\ &= 2 -\frac{1}{\frac{1}{2} +\frac{1}{2}\sqrt{1 + \frac{P_{2^m}^2}{4}}} \end{align}
となります。ここで、
$$b_m = \frac{2^{m} P_{2^m}}{2^{m+1} P_{2^{m+1}}}$$
とおくと、
\begin{align} b_{m+1} &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2}\sqrt{1 + \frac{P_{2^{m+1}}^2}{4}} \\ &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2}\sqrt{2 -\frac{1}{\frac{1}{2} +\frac{1}{2}\sqrt{1 + \frac{P_{2^m}^2}{4}}}} \\ &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2}\sqrt{2 -\frac{1}{b_m}} \end{align}
が成り立ちます。このとき、$P_4 = 2$ なので
\begin{align} b_2 b_3 \cdots b_m &= \frac{4P_4}{8P_8} \frac{8P_8}{16P_{16}} \cdots \frac{2^mP_{2^m}}{2^{m+1}P_{2^{m+1}}} \\ &= \frac{4P_4}{2^{m+1}P_{2^{m+1}}} = \frac{8}{2^{m+1}P_{2^{m+1}}} \\ & \to \frac{4}{\pi} \quad (m \to \infty) \end{align}
となります。
$$b_{2} = \frac{1}{2} + \frac{1}{2}\sqrt{2 -\frac{1}{b_1}}$$
から $b_1$ を求めようとすると、
\begin{align} \frac{1}{2} + \frac{1}{2}\sqrt{2 -\frac{1}{b_1}} &=\frac{1}{2} + \frac{1}{2}\sqrt{1 + \frac{P_4^2}{4}} \\ &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2}\sqrt{2} \end{align}
なので、$\frac{1}{b_1} = 0$ でなければならず、$b_1$ が定まりません。
得られた式を展開すると、
$$\frac{4}{\pi} = \left(\frac{1}{2} + \frac{\sqrt{2}}{2}\right) \left(\frac{1}{2} + \frac{1}{2} \sqrt{2 -\frac{1}{\frac{1}{2} + \frac{\sqrt{2}}{2}}}\right)\left(\frac{1}{2} + \frac{1}{2} \sqrt{2 -\frac{1}{\frac{1}{2} + \frac{1}{2} \sqrt{2 -\frac{1}{\frac{1}{2} + \frac{\sqrt{2}}{2}}}}}\right) \cdots$$
となり、ヴィエトの公式のような綺麗な形にはなりません。(うまく変形すると綺麗になるのでしょうか?)
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