ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第2回(10月14日)

今回は、京都大学OCWで3回生向けに後期に行われたガロア理論の講義の第2回の内容の要約をします。

  1. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:目次
  2. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第1回(10月7日)
  3. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第2回(10月14日)← 今回
  4. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第3回(10月21日)2限
  5. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第3回(10月21日)3限
  6. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第4回(10月28日)
  7. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第5回(11月4日)
  8. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第6回(11月11日)
  9. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第7回(11月18日)
  10. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第8回(12月2日)
  11. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第9回(12月9日)

前回まではチャプターが区切られていたのでそれに沿って章立てしていたのですが、今回からなくなっているので、独自で章立てします。

補足と復習 (00:00 ~ )

$L / K$ を拡大体、$S \subset L$ を有限部分集合とし、$L = K(S)$ が成り立つとします。この時、$L$ は $K$ 上 (体として) 有限生成であるといいます。$[L: K]$ を拡大次数 ($L$ の $K$ ベクトル空間としての次元) とすると、$[L: K] < \infty$ (つまり有限次拡大) なら、有限生成となります ($S$ を $K$ ベクトル空間としての基底とすれば良い)。逆は成り立ちません。例えば、$L = K(x)$ は有限生成ですが、無限次拡大です。

定義. 代数拡大、超越拡大 (05 : 32 ~)

$L/K$ を拡大体とする. $\alpha \in L$ が $a_1, \cdots, a_n \in K$ により

$$\alpha^n + a_1 \alpha^{n-1} + \cdots + a_n = 0$$

となるならば, $\alpha$ は $K$ 上代数的であるという. $\alpha$ が $K$ 上代数的でないとき, $\alpha$ は $K$ 上超越的であるという.

$L$ の任意の元が $K$ 上代数的ならば, $L/ K$ は代数拡大であるという. そうでなければ, 超越拡大という.$\Box$

少なくとも一つ超越的な元が存在すれば、超越拡大になります。

命題. (11:37 ~ )

(復習) $L \supset M \supset K$ のとき

$$[L: K] = [L:M][M:K]$$

が成り立つ. (講義中は言及されていませんが、拡大次数が $\infty$ のときや超越拡大のときも成り立ちます。証明は有限次拡大の時と同様に、基底について考えれば良いです。)$\Box$

体の拡大 $L / K$ においては、定義から $a \in L$ が代数的 $\Leftrightarrow$ $a$ が $K$ 上整です。

最小多項式 (15: 39 ~)

定義と性質

補題. (15: 39 ~)

$L/ K$ が有限次拡大ならば, 代数拡大である.

(証明の概略) : 任意の $\alpha \in L$ がモニック多項式の根になることを示せば良い。有限次拡大であることから、$\{1, \alpha, \alpha^2, \cdots\}$ が一次従属であることを用いる。$\Box$

命題. (22:09 ~)

$L/K$ を拡大体とし, $\alpha \in L$ は $K$ 上代数的とする. このとき,

  1. $K$ 上 $\alpha$ で生成された体 $K(\alpha)$ と $K$ 上 $\alpha$ で生成された環 $K[\alpha]$ に対して $$K(\alpha) = K[\alpha]$$ が成り立つ.
  2. $f(x) \in K[x]$ を $f(x) \neq 0$ で, $f(\alpha) = 0$ を満たすもののうち、次数が最小のものとする. このとき, $f(x)$ は既約であり, $g(x) \in K[x]$ が $g(\alpha) = 0$ を満たすとき, $f(x)$ は $g(x)$ を割り切る. さらに $f(x)$ をモニックにとれば, $f(x)$ は一意的である.
  3. $f(x)$ を 2. の多項式とし, $\deg f(x) = n$ とする. このとき $[K(\alpha): K] = n$ であり, $\{1, \alpha, \cdots, \alpha^{n-1}\}$ は基底をなす.

(証明の概略) : 1. の証明. $K[x]$ の $x$ に $\alpha$ を代入する $K$ 準同型 $K[x] \to K[\alpha]$ の核 $\mathfrak{p}$ が極大イデアルであることを示せば良い. PID の $(0)$ でない素イデアルが極大であることを用いる.

2.の証明. $K[x]$ が PID なので, $\mathfrak{p} = (f(x))$ を満たすものが存在する. $f(x)$ は素元なので既約. $g(\alpha) = 0$ なら $g(x) \in \mathfrak{p}$.

3. の証明. $g(x) \in K[x]$ を $f(x)$ で割り, $g(x) = q(x)f(x) + r(x)$ となったとき, $\deg r(x) < n$ なので, $r(\alpha)$ が $\{1, \alpha, \cdots, \alpha^{n-1}\}$ の線形和で表されることがわかる. $\{1, \alpha, \cdots, \alpha^{n-1}\}$ が一次独立であることは $f(x)$ の最小性からわかる.$\Box$

上記命題の 2.のモニック多項式 $f(x)$ を $\alpha$ の $K$ 上の最小多項式と言います。

系. (44:38 ~ )

$L/K$ を体の拡大, $\alpha \in L$ を $K$ 上代数的とする. $f(x) \in K[x]$ がモニックかつ既約で, $f(\alpha) = 0$ ならば, $f(x)$ は $\alpha$ の最小多項式である. (つまり、次数が最小であるという条件は他の条件から従う.)

(証明の概略) : $g(x)$ を最小多項式として, $g(x) | f(x)$ から $g(x) = f(x)$ が従う. $\Box$

系. (48:00 ~ )

$L/K$ を体の拡大とし, $\alpha \in L$ は $K$ 上代数的とする. このとき, $K(\alpha)$ は $K$ の代数拡大である.

(証明) : $[K(\alpha): K] < \infty$ であり, 有限次拡大は代数拡大.$\Box$

系. (49:27 ~ )

$L/K$ が代数拡大とする. このとき, 任意の部分集合 $S \subset L$ に対して $K[S] = K(S)$.

(証明の概略) : 任意の $a \in K[S]$ に対して $a^{-1} \in K[S]$ であることを示せば良い.$\Box$

例. (52:43 ~ )

$f(x) = x^4 -2$ はアイゼンシュタインの判定法より $\mathbb{Q}$ 上既約。$\alpha = \sqrt[4]{2}$ とおくと、$f(x)$ は $\alpha$ の $K$ 上の最小多項式。$\Box$

代数拡大の代数拡大が代数拡大であること

命題. (54:51 ~ )

$L / M$, $M / K$ が代数拡大ならば, $L / K$ は代数拡大である.

(証明の概略) : 任意の $\alpha \in L$ が $K$ 上代数的であることを示せば良い. そのためには, $[K(\alpha): K] < \infty$ を示せば良い. $\alpha$ の $M$ 上の最小多項式を

$$f(x) = x^n + a_1 x^{n-1} + \cdots + a_n \quad (a_1, \cdots, a_n \in M)$$

とし, $M_n= K(a_1, \cdots, a_n)$ とおくと, $f(x)$ は $M_n$ 上の最小多項式でもあり,

\begin{align} & [M_n(\alpha): K(\alpha)][K(\alpha): K] \\ = \ & [M_n(\alpha): K] \\ = \ &[M_n(\alpha): M_n][M_n: K] \\ < \ & \infty \end{align}

から $[K(\alpha): K] < \infty$ となる. $\Box$

上の命題の逆も成り立ちます。つまり $L \supset M \supset K$ で、$L/K$ が代数拡大ならば、$L/M$, $M/K$ も代数拡大になります。$M/K$ が代数拡大であることは $L \supset M$ から明らか、$L/M$ が代数拡大であることは、$\alpha \in L$ の $K$ 上の最小多項式が $M$ 上の多項式でもあることからわかります。

系. (1:04:31 ~)

$L/K$ を体の拡大, $x, y \in L$ が $K$ 上代数的ならば, $x \pm y$, $xy$ は $K$ 上代数的である.

(証明の概略) : $K(x, y)/K$ は代数拡大であり, $x \pm y, xy \in K(x, y)$.$\Box$

(補足) もう少し具体的に証明するなら、次のようになります。$x$ の $K$ 上の最小多項式の次数を $n$、$y$ の $K$ 上の最小多項式の次数を $m$ とすれば、($y$ の $K$ 上の最小多項式は $K(x)$ においても $y$ を根に持つので) $[K(x, y): K] \leq nm$ となります。$\{1, xy, \cdots ,x^{n-1}y^{n-1}, x^ny^n \}$ は $K$ 上一次従属なので、$xy$ は $K$ 上代数的になります。

最小多項式の求めかた

以下の命題は前期で示しているようです。この命題を用いると、最小多項式が具体的に求められる場合があります。

命題. (前期証明した) (1:09:40 ~ )

$B/ A$ を環の拡大, $x \in B$ とする. $A[x]$ を含む $B$ の部分環 $C$ で, $A$ 加群として有限生成なものが存在すれば, $x$ は $A$ 上整である. また, $y_1 = 1, y_2, \cdots, y_l \in C$ を $A$ 加群の生成元とすると,

$$xy_i = \sum_{j}P_{ij} y_i \quad (P_{ij} \in A)$$

を満たす $P_{ij}, \ 1 \leq i, j \leq l$ が存在する. $P = (P_{ij})$ を $A$ の元を成分とする $l \times l$ 行列とし, $P$ の特性多項式を $f(t)$ とおくと, $f(x) = 0$ となる. $\Box$

証明は「命題. (前期証明した) の証明」の項で行います。

例. (1:13:52 ~)

$\alpha = \sqrt[3]{2} -\sqrt[3]{4} \in \mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})$ の $\mathbb{Q}$ 上の最小多項式を求める。$f(x) = x^3 -2$ はアイゼンシュタインの判定法により $\mathbb{Q}$ 上既約で、$f(\sqrt[3]{2}) =0$ なので、$f(x)$ は $\sqrt[3]{2}$ の $\mathbb{Q}$ 上の最小多項式である。$\mathbb{Z}[\sqrt[3]{2}]$ は $\mathbb{Z}$ 上 $1, \sqrt[3]{2}, \sqrt[3]{4}$ で生成されている (次回の講義で証明)。このとき

\begin{align} \alpha \begin{pmatrix} 1 \\ \sqrt[3]{2} \\ \sqrt[3]{4} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & 1 & -1 \\ -2 & 0 & 1 \\ 2 & -2 & 0 \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 \\ \sqrt[3]{2} \\ \sqrt[3]{4} \end{pmatrix} \end{align}

となり、特性多項式は $g(t) = t^3 + 6t + 2$ となる。$g(\alpha) = 0$ であり、$g(t)$ はアイゼンシュタインの判定法より $\mathbb{Q}$ 上既約なので、$g(t)$ は $\alpha$ の $\mathbb{Q}$ 上の最小多項式である。$f(t)$ を用いて $\alpha$ の逆元を求めることもできる (講義動画を見てください)。

証明が省略された命題の証明

ここからは前期ですでに示された (ため、後期の講義では省略された) 命題を証明します。

命題. (前期証明した) の証明

まず、必要な補題を証明します。([H 定理2.26] を参考にしています。)

補題. (Cayley-Hamilton の定理)

$A$ を可換環, $M$ を $n$ 個の元で生成された $A$ 加群とし, 自己準同型 $f: M \to M$ が $A$ のあるイデアル $I$ に対して $f(M) \subset IM$ を満たすとする (今回の用途では $I = A$ のときのみで十分). このとき, ある $a_1, a_2 \cdots, a_n \in I$ が存在して

$$f^n + a_1 f^{n-1} + \cdots + a_n = 0$$

をみたす. ただし, $f^i$ は $f$ を $i$ 回合成したものである。

証明) : $t$ を不定元とし, $t$ の $x \in M$ への作用を $t x = f(x)$ と定める. この作用により, $M$ は $A[t]$ 加群となる. $\{y_1, \cdots, y_n\}$ が $M$ を ($A$ 加群として) 生成するとすると, $f(M) \subset f(IM)$ から $f(y_i) = P_{ij} y_j$ となる $P_{ij} \in I \ (1 \leq i, j \leq n)$ が存在する. 従って, $A[t]$ 加群として

$$\sum_{j = 1}^n (\delta_{ij}t -P_{ij}) y_j = 0 \quad (1 \leq j \leq n)$$

を満たす ($\delta_{ii} = 1$, $\delta_{ij} = 0$ $(i \neq j)$ とする). ここで, $F(t) := (\delta_{ij} t -P_{ij})_{ij}$ とおき, $F(t)$ の余因子行列を $\Delta_F(tt)$ とすると, 体のときと同様に

$$\Delta_F(t) F(t) = \det F(t) E$$

が成り立つ. ここで, $E$ は単位行列である. よって, 上の式に左から $\Delta_F()$ をかけると

$$ \det F(t) y_j = 0 \quad (1 \leq j \leq n)$$

となる. $\det F(t)$ を

$$\det F(t) = t^n + a_1 t^{n-1} + \cdots + a_n$$

とおけば, $P_{ij} \in I$ であることから $a_i \in I$ となる. また, $\det F(t)$ は任意の $y_i \ (1 \leq i \leq n)$ に対して $\det F(t)y_i = 0$ を満たすので, $\det F(f)$ は準同型として $0$ である (つまり, 任意の $y \in M$ に対して $\det F(f)y = 0$). 従って

$$f^n + a_1 f^{n-1} + \cdots + a_n = 0 $$

となる. $\Box$

この補題を認めれば、示したい命題は簡単に証明できます。まず $x \in B$ が $A$ 上整であることを示します。$A[x] \subset C$ なので、$g: C \ni y \mapsto xy \in C$ は自己準同型になります。よって $a_1, \cdots, a_n \in A$ が存在して

$$g^n + a_1 g^{n-1} + \cdots + a_n = 0$$

が成り立ちます。これの $1 \in C$ の像を考えると

$$x^n + a_1 x^{n-1} + \cdots + a_n = 0$$

となります。よって $x$ は $A$ 上整になります。また、補題の証明から、 $g$ は $C$ の生成元 $\{y_1, \cdots, y_n\}$ をとれば $A$ の元を成分とする行列 $(P_{ij})_{ij}$ で表され、この特性多項式が

$$f(t) = t^n + a_1 t^{n-1} + \cdots + a_n = 0$$

で与えられます。これで前期証明した命題が証明されました。

次回

ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第3回(10月21日)2限

参考文献

[H] 堀田 良之. 可換環と体