ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第7回(11月18日)

今回は、京都大学OCWで3回生向けに後期に行われたガロア理論の講義の第7回の内容の要約をします。ようやくガロア理論に入ります (ほとんど例ですが)。

  1. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:目次
  2. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第1回(10月7日)
  3. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第2回(10月14日)
  4. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第3回(10月21日)2限
  5. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第3回(10月21日)3限
  6. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第4回(10月28日)
  7. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第5回(11月4日)
  8. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第6回(11月11日)
  9. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第7回(11月18日)←今回
  10. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第8回(12月2日)
  11. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第9回(12月9日)
  12. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第10回(12月16日)
  13. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第11回(1月6日)
  14. ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第12回(1月13日)

前回の復習

(00:08 ~) 前回は正規拡大と有限体と無限体について話しました。有限体については位数 $q$ の有限体が同型を除いてただ一つ存在するということを示しました。無限体については、無限体上の $0$ でない多項式には、値が $0$ にならない点が存在することを示しました。今回は単拡大について説明し、その後ガロア理論に入ります。

単拡大 (01:06 ~)

単拡大というのは、一つの元で生成される体 $K(\alpha)$ のことです。この講義では代数拡大の場合のみ扱います。一般の場合でも、単拡大という場合には、超越拡大を考えることは少ないです。

有限次分離拡大は単拡大であることを示します。これはとても重要で、ガロア理論の基本定理の証明で使います。有限体の場合と無限体の場合で分けて考えます。

有限次分離拡大は単拡大 (02:50 ~)

(03:49 ~) 以下の命題はオイラー関数を使った証明の方がスッキリしているのですが、定義をしていないので、有限生成アーベル群の基本定理を使った証明をします。

命題. (02:50 ~)

$K$ を体とする. $G \subset K^{\times}$ を有限部分群とする. このとき, $G$ は巡回群である.

(証明の概要) : (後で群論の補足をします。) $K$ が体なので $G$ は可換群. $|G| = p_1^{\alpha_1} \cdots p_N^{\alpha_N}$ ( $p_1, \cdots, p_N$ は相異なる)とし, $H_i$ を sylow $p_i$ 部分群とする. $H_i$ は (有限生成アーベル群の基本定理より?) $\mathbb{Z}/p_i^{c_i} \mathbb{Z}$ という形の群の直積になっている. $H_i$ に含まれる元の最大位数を $p_i^{d_i}$ とおき, $\alpha \in H_i$ を位数 $p_i^{d_i}$ の元とする. このとき,

$$S = \{1, a, \cdots, a^{p_i^{d_i}-1}\}$$

とおくと, $|S| = p_i^{d_i}$ である. また, $S$ の任意の元の位数は $p_i^{d_i}$ の約数なので $x^{p_i^{d_i}} -1 = 0$ の根になっている. 逆に, $x^{p_i^{d_i}} -1 = 0$ の根は高々 $p_i^{d_i}$ 個なので, $S$ と $x^{p_i^{d_i}} -1 = 0$ の根の集合は等しい.

$|H_i| = p_i^{\alpha_i}$ であることから, 任意の $b \in H_i$ の位数は $p_i$ の冪であり, $p_i^{d_i}$ 以下なので, $p_i^{d_i}$ の約数になる. よって $b^{p_i^{d_i}} = 1$ である. つまり, $b \in S$. 従って $H_i = S$ であり, $H_i$ は $a$ で生成される. これから $H_i \simeq \mathbb{Z} / p_i^{\alpha_i}$ がわかる.

$G$ は可換群なので

$$H_1 H_2 \cdots H_i = \{h_1h_2 \cdots h_i \mid h_1 \in H_1, h_2 \in H_2, \cdots, h_i \in H_i\}$$

は $G$ の部分群である.

$$H_1 H_2 \cdots H_i \simeq \mathbb{Z} / p_1^{\alpha_1} \cdots p_i^{\alpha_i} \mathbb{Z}$$

が示されたとする. $|H_{i+1}| = p_{i+1}^{\alpha_{i+1}}$ で, $p_{i+1}^{\alpha_{i+1}}$ と $ p_1^{\alpha_1} \cdots p_i^{\alpha_i}$ は互いに素なので

$$H_1 H_2 \cdots H_i \cap H_{i+1} = \{1\}$$

となる. 中国式剰余定理により

$$H_1 \cdots H_{i+1} \simeq \mathbb{Z} / p_1^{\alpha_1} \cdots p_{i+1}^{\alpha_{i+1}} \mathbb{Z}$$

となる. 帰納法により, $G \simeq \mathbb{Z} / p_1^{\alpha_1} \cdots p_{N}^{\alpha_{N}} \mathbb{Z}$, つまり $G$ は巡回群となる.$\Box$

系. (20:23 ~)

$q = p^N$ のとき, $\mathbb{F}_q^{\times}$ は巡回群である. $\Box$

有限次分離拡大は単拡大 (群論の補足)

一つ前の命題の証明が理解しやすくなるように、少し群論の補足をします。証明では以下の部分が少しわかりにくいと思ったので、特にそれらを補足します。

  1. sylow 部分群 $H_i$ の積 $H_1 \cdots H_N$ が $G$ に一致する
  2. 中国式剰余定理を用いて巡回群であることを示している

まずは sylow 群の定義と有限生成アーベル群の基本定理、中国式剰余定理について述べます。

定義. sylow 部分群

$G$ を有限群, $p$ を素数とし, $|G| = p^n m$ ($m$ は $p$ を因子に持たない) とする. このとき, 部分群 $H \subset G$ で $|H| = p^n$ を満たすものを sylow $p$ 部分群という.$\Box$

sylow の定理というものがあり、それから sylow 部分群は少なくとも一つ存在することが知られています。(sylow の定理と呼ばれる定理は複数あり、もっと詳しいことが知られています。例えば [Wiki]。)

定理. 有限生成アーベル群の基本定理

$M$ を有限生成アーベル群とする. このとき, ある自然数 $s, r$ と, $2$ 以上の自然数 $e_1, e_2, \cdots, e_n$ で $e_1 | e_2 | \cdots | e_r$ ($e_{i+1}$ は $e_i$ を割り切る) を満たすものが一意に存在して

$$M \simeq \mathbb{Z}/e_1\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/e_2\mathbb{Z} \times \cdots \times \mathbb{Z}/e_r\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}^s$$

が成り立つ. $M$ が有限アーベル群ならば, $s = 0$ である. $\Box$

証明は例えば [K] などを見てください。

定理. 中国式剰余定理

$R$ を可換環とし, イデアル $\mathfrak{a}, \mathfrak{b}$ は $\mathfrak{a} + \mathfrak{b} = 1$ を満たすとする. このとき

$$R / (\mathfrak{a} \cap \mathfrak{b}) \ni r + (\mathfrak{a} \cap \mathfrak{b}) \mapsto (r + \mathfrak{a}, r + \mathfrak{b}) \in R/ \mathfrak{a} \oplus R/ \mathfrak{b}$$

は同型を与える. $\Box$

証明は簡単で、自然な写像 $\phi: R \to R / \mathfrak{a} \oplus R/ \mathfrak{b}$ の核が $\mathfrak{a} \cap \mathfrak{b}$ であることは明らかなので、$\phi$ が全射であることを示せば良いですが、仮定から $1 = a + b$ を満たす $a \in \mathfrak{a}$, $b \in \mathfrak{b}$ が存在し、$\phi(a + b) = (1, 1)$, $\phi(a)$ の第 1 成分は $0$, $\phi(b)$ の第 2 成分は $0$ であることから、$\phi(a) = (0, 1)$, $\phi(b) = (1, 0)$ がわかり、$\phi$ が全射であることがわかります。

$m = p_1^{e_1} \cdots p_n^{e_n}$ を自然数 $m$ の素因数分解とすれば、互除法により

$$(p_1^{e_1} \cdots p_i^{e_i}) + (p_{i+1}^{e_{i+1}}) = 1$$

なので、中国式剰余定理から

\begin{align} \mathbb{Z} / m \mathbb{Z} &\simeq \mathbb{Z} / p_1^{e_1} \cdots p_{n-1}^{e_{n-1}} \mathbb{Z} \oplus \mathbb{Z} / p_n^{e_n} \mathbb{Z} \\ &\simeq \mathbb{Z} / p_1^{e_1} \oplus \mathbb{Z} / p_2^{e_2} \oplus \cdots \oplus \mathbb{Z} / p_n^{e_n} \mathbb{Z} \\ \end{align}

となります。これは環の同型ですが、積を忘れればアーベル群としての同型を与えます。有限個の直積は直和と同じなので、$\oplus$ の代わりに $\times$ と書いても良いです。

$G$ を有限アーベル群とすると、有限生成アーベル群の基本定理から

$$G \simeq \mathbb{Z}/e_1\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/e_2\mathbb{Z} \times \cdots \times \mathbb{Z}/e_r\mathbb{Z}$$

となりますが、$e_i = p_{i1}^{f_{i1}} \cdots p_{ir_i}^{f_{ir_i}} $ と素因数分解すれば

$$G \simeq \bigoplus_{i = 1}^r \bigoplus_{j = 1}^{r_i} \mathbb{Z} / p_{ij}^{f_{ij}} \mathbb{Z} $$

となります。素数 $p$ に対して $p = p_{ij}$ を満たす成分をすべて集めたものを $G(p)$ とおけば、$G(p)$ は唯一の sylow p 部分群であり、$|G(p)| = p^{\sum_{p_{ij} = p} f_{ij}}$ かつ

$$G = \bigoplus_{p} G(p)$$

となります。これで、 (こちらは加法的、証明では乗法的に書いているのでわかりにくいですが) 前の命題の証明中の $G = H_1 \cdots H_N$ がわかりました。ちなみに、任意の sylow p 部分群が共役であることと $G$ が可換群であることを用いれば、sylow p 部分群の一意性がわかり、$G$ の位数と $H_1 \cdots H_i \cap H_{i+1} = \{1\}$ であることから $G = H_1 \cdots H_N$ を示すこともできます。

前の命題の証明中では $H_N$ が巡回群だったので、$G = \bigoplus_{i=1}^N H_i$ という分解と、中国式剰余定理を逆に使えば、$G$ が巡回群であることがわかります。

有限次分離拡大は単拡大 (続き) (21:00~)

定義. 原始根 (21:11~)

$p$ を素数とする. $a \in \mathbb{Z}$ は, $a \bmod p$ が $\mathbb{F}_p^{\times}$ を生成するとき, $p$ を法とする原始根という. $\Box$

(講義では「$\mathbb{F}_p$ を生成するとき」と定義されていますが、おそらく誤りです。)

(22:16 ~) 例えば $\mathbb{F}_5$ の場合、$|\mathbb{F}_5^{\times}| = 4$ であり、$2^2 = 4$ なので $2$ の位数は $2$ でない、つまり位数は $4$ なので原始根、$3^2 = 9 = 4$ なので $3$ も原始根、$4^2 = 16 = 1$ なので $4$ は原始根ではありません。

(23:12 ~) 原始根は primitive root と言いますが、単拡大の時に、$L = K(\alpha)$ の $\alpha$ の事を原始元と呼んだりします。紛らわしいので、この講義では原始元と言わないようにします。

系. (24:12 ~)

$L / K$ を代数拡大とする. このとき $L, K$ が有限体なら $L / K$ は単拡大.

(証明の概要) : $L^{\times}$ は巡回群なので $L^{\times} = \langle\alpha\rangle$ を満たす $\alpha \in L$ が存在する. $L / K$ は代数拡大なので $L = K(\alpha)$. $\Box$

(25:06 ~) (無限体の) 有限次分離拡大が単拡大であることは次の定理からわかります。

定理. 有限次分離拡大は単拡大 (25:14 ~)

$L / K$ を有限次分離拡大とする. $\alpha \in L$ が, 任意の異なる $K$ 準同型 $\phi, \psi \in \operatorname{Hom}_K^{al}(L, \overline{K})$ に対して $\phi(\alpha) \neq \psi(\alpha)$ を満たすなら, $L = K(\alpha)$ が成り立つ. また, このような $\alpha$ は存在し, $L / K$ は単拡大となる.

(証明の概要) : 有限体の場合, 単拡大になることはOK. その $\alpha$ が前半の性質を満たすことは, 準同型が $\alpha$ の行き先のみで決まることから明らか. $|K| = \infty$ とする. $L = K(\alpha_1, \alpha_2)$ の場合,

$$\alpha = \alpha_1 + c \alpha_2 \quad (c \in K)$$

という形の $\alpha$ で, 条件を満たすものを探す.

$$\operatorname{Hom}_K^{al}(L, \overline{K}) = \{\phi_1, \cdots, \phi_n\}$$

は, $i \neq j$ ならば $\phi_i \neq \phi_j$ とする. $\phi_i(\alpha_1) = \gamma_i$, $\phi_i(\alpha_2) = \delta_i$ とおき,

$$f(x) = \prod_{i \neq j} \left((\delta_i x + \gamma_i) -(\delta_j x + \gamma_j)\right) \in \overline{K}[x]$$

とおく. もし $f(x)$ が多項式として $0$ ならば, ある $i \neq j$ が存在して $\delta_i x + \gamma_i = \delta_j x + \gamma_i$ を満たすが, これは $\delta_i = \delta_j$, $\gamma_i = \gamma_j$, つまり $\phi_i(\alpha_1) = \phi_j(\alpha_1)$, $\phi_i(\alpha_2) = \phi_j(\alpha_2)$ を意味するので, 生成元の行き先が一致し, $\phi_i = \phi_j$ が成り立つ. これは $\phi_i \neq \phi_j$ に反するので $f(x)$ は多項式として $0$ ではない.

$|K| = \infty$ なので, 前回示した命題から ( $S = K$ として), $c \in K$ が存在して $f(c) \neq 0$ なので, すべての $i, j$ $(i \neq j)$ に対して

\begin{align} \phi_i(\alpha) &= \phi_i(\alpha_1 + c\alpha_2) \\ &= \gamma_i + c\delta_i \\ &\neq \gamma_j + c\delta_j \\ &= \phi_j(\alpha) \\ \end{align}

が成り立つ.

$L/ K$ は仮定から分離拡大で, $L$ から $\overline{K}$ への $K$ 準同型の数が $n$ であることから (以前示した定理より) $[L : K] = n$ なので, $[K(\alpha) : K] = n$ を示せば $K(\alpha) = L$ となる. $ K(\alpha) / K$ は分離拡大で, $\phi_i$ を $K(\alpha)$ に制限すれば

$$[K(\alpha) : K] = |\operatorname{Hom}_K^{al}(K(\alpha), \overline{K})| \geq n$$

となる. $K(\alpha) \subset L$ なので $[K(\alpha) : K] \leq n$ であり, $[K(\alpha) : K] = n$ がわかる.

一般の場合 (3個以上の元で生成される場合) は

$$L = K(\alpha_1, \cdots, \alpha_{n-2})(\alpha_{n-1}, \alpha_n)$$

と考えれば良い. $\Box$

例. (39:23~)

$L = \mathbb{Q}(\sqrt{2}, \sqrt{3})$ とする. これが $\alpha = \sqrt{2} + \sqrt{3}$ により $L = \mathbb{Q}(\alpha)$ となることを確かめる. 前回示した通り $[L: \mathbb{Q}] = 4$ であり, $\mathbb{Q}(\sqrt{2})$ の $\mathbb{Q}$ ベクトル空間としての基底は $\{1, \sqrt{2}\}$, $L$ の $\mathbb{Q}(\sqrt{2})$ ベクトル空間としての基底は $\{1, \sqrt{3}\}$ なので, $\{1, \sqrt{2}, \sqrt{3}, \sqrt{6}\}$ は一次独立. $\sigma, \tau \in \operatorname{Hom}_{\mathbb{Q}}^{al}(L, \overline{\mathbb{Q}})$ を前回の通りとすると, $1, \sigma, \tau, \sigma\circ \tau$ による $\alpha$ の行き先がすべて異なる. (詳細は動画を見てください.) ちなみに $\sqrt{3} = \frac{1}{2}(\alpha + \frac{1}{\alpha})$, $\sqrt{2} = \frac{1}{2}(\alpha -\frac{1}{\alpha})$. $\Box$

ガロア拡大 (44:15 ~)

ガロア拡大の定義は前回書きましたが、ここでも書きます。

定義. (44:42 ~)

$L / K$ を代数拡大とする.

  1. $L / K$ が分離的かつ正規であるとき, ガロア拡大という.
  2. $L / K$ がガロア拡大なら, $\mathrm{Gal}(L / K) = \operatorname{Aut}_K^{al}L$ と書いて $L / K$ のガロア群という.
  3. $\mathrm{Gal}(L / K)$ がアーベル群なら, $L / K$ をアーベル拡大という.
  4. $\mathrm{Gal}(L / K)$ が巡回群なら, $L / K$ を巡回拡大という. $\Box$

(47:17 ~) 類体論という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、類体論というのは代数体 (有理数体の有限次代数拡大) のアーベル拡大において、素イデアルがどのように分解するかを記述するものです。高次元類体論というものもあって、それは代数体ではなく、$\mathbb{Q}(x)$ のようなもののアーベル拡大を調べるものです。

例. 1. (47:55 ~)

$L = \mathbb{Q}(\sqrt{d})$, $d$ は閉包でないとする. $\sqrt{d}$ の共役は $\pm \sqrt{d}$ なので, $L/Q$ は正規. 分離的であることは明らかなので, $L / Q$ はガロア拡大. ガロア群は

\begin{align} \mathrm{Gal}(L / K) &= \{1, \sigma\}\\ \sigma(\sqrt{d}) &= -\sqrt{d} \end{align}

であり, $\mathrm{Gal}(L / K) \simeq \mathbb{Z} / 2\mathbb{Z}$. $\Box$

例. 2. (50:05~)

$L = \mathbb{Q}(\sqrt{2}, \sqrt{3})$ とすると, $L / \mathbb{Q}$ はガロア拡大. ガロア群は

$$\mathrm{Gal}(L / \mathbb{Q}) = \mathbb{Z} / 2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z} / 2 \mathbb{Z}$$

(省略するので動画を見てください. 群の構造正規性は前回示しています.) $\Box$

例. 3. (53:34 ~)

$L = \mathbb{Q}(\sqrt[3]{2}, \omega)$ $(\omega = \frac{-1 +\sqrt{-3}}{2})$ は $f(x) = x^3 -2$ の最小分解体 (前回の例より. 省略してしまったので動画を見てください). $\alpha_1 = \sqrt[3]{2}$, $\alpha_2 = \omega \sqrt[3]{2}$, $\alpha_3 = \omega^2\sqrt[3]{2}$ とする. このとき

$$f(x) = (x -\alpha_1)(x -\alpha_2)(x -\alpha_3)$$

となる. $L = \mathbb{Q}(\alpha_1, \alpha_2, \alpha_3)$ は共役な元がすべて含まれているので, $L / \mathbb{Q}$ はガロア拡大である. $L = \mathbb{Q}(\sqrt[3]{2}, \sqrt{-3})$ であり, $\sqrt{-3} \notin \mathbb{R}$ から $\sqrt{-3} \notin \mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})$, $2$ 乗して $\mathbb{Q}$ に入るので, $[L : \mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})] = 2$ となる. $[\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2}):\mathbb{Q}] = 3$ なので, $[L : \mathbb{Q}] = 6$ となる. $\sigma \in \mathrm{Gal}(L / \mathbb{Q})$ とすると, $\sigma(\alpha_i)$ は $f(\sigma(\alpha_i)) = 0$ を満たすので

$$\sigma(\alpha_i) = \alpha_{\phi_{\sigma}(i)} \quad (\phi_{\sigma}(i) \in \{1, 2, 3\})$$

と表される. よって $\phi_{\sigma} \in \mathfrak{S}_3$ となる ($\mathfrak{S}_3$ は置換群). $\tau \in \mathrm{Gal}(L / \mathbb{Q})$ に対して

\begin{align} \tau\sigma(\alpha_i) = \tau(\alpha_{\phi_{\sigma}(i)}) = \alpha_{\phi_{\tau}(\phi_{\sigma}(i))} \end{align}

なので,

$$\mathrm{Gal}(L / \mathbb{Q}) \ni \sigma \mapsto \phi_{\sigma} \in \mathfrak{S}_3$$

は群の準同型. $\mathrm{Gal}(L / \mathbb{Q})$ の元は $\alpha_1, \alpha_2, \alpha_3$ の行き先で決まるので, この対応は単射. 位数は両方とも $6$ なので全射でもあり, 同型となる. $\Box$

次は難しい例をやりますが、その前に定義をします。

定義. ガロア閉包 (1:02:21 ~)

$L / K$ を分離的とする. $\overline{K}$ で $L$ の元のすべての共役を加えた体を $\widetilde{L}$ とすると, $\widetilde{L} / K$ はガロア拡大である. $\widetilde{L}$ をガロア閉包という. $\Box$

$\widetilde{L}$ はすべての共役を含むので正規拡大、分離的な元の共役は分離的 (最小多項式が同じ) なので分離拡大であることがわかります。$F \supset L$ が $K$ 上ガロアであれば $F \supset \widetilde{L}$ なので、閉包といいます。

(1:05:53 ~) ガロアの基本定理を証明した後に、3 次多項式のガロア群、標数 2 を除いて 4 次多項式のガロア群について話すつもりなので、以下の例は一般論から従いますが、一般論を使わないでガロア群を求めるのはガロア理論の理解に繋がるので、それを求めます。

例. 4. (1:05:22 ~)

$K = \mathbb{Q}(\sqrt{4 +\sqrt{3}})$ とし, $L$ を $K$ の $\mathbb{Q}$ 上のガロア閉包とする. $L$ とそのガロア群を決定する. $[L : \mathbb{Q}] = 8$,

$$\mathrm{Gal}(L / \mathbb{Q}) = D_4 \ (\textrm{二面体群})$$

となる. (省略するので動画を見てください. かなり長いです.) $\Box$

次回

ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第8回(12月2日)

参考文献

[Wiki] Wikipedia. シローの定理

[K] 加塩 朋和. 代数学3

[TH] 寺田 至, 原田 耕一郎. 群論