今回は、京都大学OCWで3回生向けに後期に行われたガロア理論の講義の第6回の内容の要約をします。証明の概略が (ほぼ全て書いてしまっていて) 概略になっていないので、要約になっていない気がしますが、気にしないことにします。
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:目次
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第1回(10月7日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第2回(10月14日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第3回(10月21日)2限
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第3回(10月21日)3限
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第4回(10月28日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第5回(11月4日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第6回(11月11日)←今回
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第7回(11月18日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第8回(12月2日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第9回(12月9日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第10回(12月16日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第11回(1月6日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第12回(1月13日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第13回(1月20日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第14回(1月27日)
目次
分離拡大 (続 3) (00:08~)
分離拡大の例をもう少しだけやってから正規拡大に入ります。
例. $\operatorname{Hom}_K^{al}(L, \overline{K})$ の例 (00:37 ~)
$K = \mathbb{Q}$, $L = \mathbb{Q}(\sqrt{2}, \sqrt{3})$ とする. まず, $[L : K]$ を求める. $\sqrt{2}, \sqrt{3} \notin \mathbb{Q}$ は認める. $(\sqrt{2})^2 = 2 \in \mathbb{Q}$ なので
$$[\mathbb{Q}(\sqrt{2}): \mathbb{Q}] = 2$$
となる ($\sqrt{2}$ は $x^2 -2$ の根だが, $(x-\sqrt{2})(x+\sqrt{2})$, $\sqrt{2} \notin \mathbb{Q}$ から $x^2 -2$ は最小多項式). $\sqrt{3} \notin \mathbb{Q}(\sqrt{2})$ も正しい (証明は省略するので動画を見てください). よって $[L, \mathbb{Q}(\sqrt{2})] = 2$ となる. よって $[L, K] = 4$ となる. このとき,
\begin{align} 4 &= [L, K] \\ &= [L, \mathbb{Q}(\sqrt{3})] [\mathbb{Q}(\sqrt{3}), \mathbb{Q}] \\ &= 2[L, \mathbb{Q}(\sqrt{3})] \end{align}
なので $[L, \mathbb{Q}(\sqrt{3})] = 2$ であり, $\sqrt{2} \notin \mathbb{Q}(\sqrt{3})$ であることもわかる. 拡大次数から $\sqrt{3}$ の $\mathbb{Q}(\sqrt{2})$ 上の最小多項式は $x^2 -3$ で, 根は $\pm \sqrt{3}$ である. よって
$$\sigma \in \operatorname{Hom}_{\mathbb{Q}(\sqrt{2})}^{al}(L, \overline{\mathbb{Q}})$$
で, $\sigma(\sqrt{3}) = -\sqrt{3}$ となるものがある. これは $\sigma(\sqrt{2}) = \sqrt{2}$ を満たす. 同様に
$$\tau \in \operatorname{Hom}_{\mathbb{Q}(\sqrt{2})}^{al}(L, \overline{\mathbb{Q}})$$
で, $\tau(\sqrt{2}) = -\sqrt{2}$, $\tau(\sqrt{3}) = \sqrt{3}$ を満たすものがある. ここで,
$$\mathrm{Im}(\sigma), \mathrm{Im}(\tau) \subset L$$
なので, 合成 $\sigma \circ \tau$ を考えることができて, $\sigma \circ \tau(\sqrt{2}) = -\sqrt{2}$, $\sigma \circ \tau(\sqrt{3}) = -\sqrt{3}$ となる. よって $\mathrm{Id}_{L}, \sigma, \tau, \sigma \circ \tau$ は全て異なり, $[L:K] = 4$ であることから,
$$\operatorname{Hom}_{\mathbb{Q}}^{al}(L, \overline{\mathbb{Q}}) = \{\mathrm{Id}_{L}, \sigma, \tau, \sigma \circ \tau\}$$
となる. $\Box$
例. (14:28 ~ )
$K = \mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})$ とし, $\operatorname{Hom}_{\mathbb{Q}}(K, \overline{\mathbb{Q}})$ を求める. $\sqrt[3]{2}$ の $\mathbb{Q}$ 上の最小多項式は $x^3 -2$ である (アイゼンシュタインの判定法から既約). ここで, $\omega = \frac{-1 + \sqrt{-3}}{2}$ とおくと, $\omega^3 = 1$ であり,
$$x^3 -2 = (x -\sqrt[3]{2})(x -\omega\sqrt[3]{2})(x -\omega^2\sqrt[3]{2})$$
となる. $\operatorname{Hom}_{\mathbb{Q}}(K, \overline{\mathbb{Q}})$ は $\sqrt[3]{2}$ の行き先で決まり, それは (前に示した命題から) $x^3 -2$ の根のどれかなので,
\begin{align} \sigma_1(\sqrt[3]{2}) &= \sqrt[3]{2} \\ \sigma_2(\sqrt[3]{2}) &= \omega\sqrt[3]{2} \\ \sigma_3(\sqrt[3]{2}) &= \omega^2 \sqrt[3]{2} \\ (\sigma_1, \sigma_2, \sigma_3 & \in \operatorname{Hom}_{\mathbb{Q}}(K, \overline{\mathbb{Q}})) \end{align}
となるものがある. これらは全て異なる. $[K : \mathbb{Q}] = 3$ なので
$$\operatorname{Hom}_{\mathbb{Q}}(K, \overline{\mathbb{Q}}) = \{\sigma_1, \sigma_2, \sigma_3\}$$
となる. $K \subset \mathbb{R}$, $\omega \notin \mathbb{R}$ なので, $\mathrm{Im}(\sigma_2), \mathrm{Im}(\sigma_3) \notin K$ である. $\Box$
(24:00~) 分離拡大は超越拡大の場合も定義できます。それについては時間の関係でこの講義では話さないと思いますが、簡単にいうと、純超越拡大の分離代数拡大になっていることが、超越拡大の場合の分離拡大です。
正規拡大 (23:24 ~)
正規拡大の定義とその言い換え (23:45~)
定義. 正規拡大 (23:45~)
$L / K$ を代数拡大とする. 任意の元 $\alpha \in L$ の $K$ 上の最小多項式が, $L$ において 1 次式の積になるとき, $L/K$ を正規拡大という. $\Box$
(26:00~) 最小多項式の他の元というのは共役な元のことだったので、言い換えると、任意の $\alpha \in L$ の $K$ 上の共役が全て $L$ の元になるとき、正規拡大です。
(26:55~) もう少し言い換えをしますが、分離性の場合と同じように、正規拡大の性質を調べるときに、例えば、その生成元で決定できるかということを考えるときに、生成された体の性質で言い換えたいです。それが次の命題でわかります。
命題. (27:53 ~)
$L / K$ を代数拡大とし, (同型を一つ固定して) $\overline{K} = \overline{L}$ とする. このとき,
- $L / K$ は正規拡大である.
- 任意の $\phi \in \operatorname{Hom}_K^{al}(L, \overline{K})$ に対して $\phi(L) \subset L$.
は同値である.
(証明の概略) : (1) $\Rightarrow$ (2). $\phi \in \operatorname{Hom}_K^{al}(L, \overline{K})$ で, $\alpha \in L$ なら, $\phi(\alpha)$ は $L$ の共役 (前に示した命題から. 最小多項式の値 $f(\alpha)$ を $\phi$ で写して $f(\phi(\alpha)) = 0$). よって $\phi(\alpha) \in L$.
(2) $\Rightarrow$ (1). $\alpha \in L$ とし, $\beta \in \overline{K}$ を $\alpha$ の共役とする. このとき, 前に示した命題から, $\phi(\alpha) = \beta$ を満たす $\phi \in \operatorname{Hom}_K^{al}(L, \overline{K})$ が存在する. 仮定から, $\beta = \phi(\alpha) \in L$. $\Box$
例. (33:09~)
$d$ を平方でない整数とする. このとき, $\mathbb{Q}(\sqrt{d}) / \mathbb{Q}$ は正規拡大である. これは, $\sqrt{d}$ の共役が $\pm \sqrt{d} \in \mathbb{Q}(\sqrt{d})$ だからである. ただし, 任意の $\alpha \in \mathbb{Q}(\sqrt{d})$ の共役が $\mathbb{Q}(\sqrt{d})$ に含まれることは, 次の系を用いている.
系. (34: 47~)
$L = K(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)$ を代数拡大とする. このとき, $\alpha_1, \cdots, \alpha_n$ の全ての共役が $L$ に含まれるなら, $L / K$ は正規拡大である.
(証明の概要) : 仮定から、$\phi \in \operatorname{Hom}_K^{al}(L, \overline{K})$ に対して $\phi(\alpha_1), \cdots, \phi(\alpha_n) \in L$. また, 前に示した命題 (を繰り返し適用.) から,
$$K(\alpha_1, \cdots, \alpha_n) = K[\alpha_1, \cdots, \alpha_n]$$
なので, $L$ の元は,
$$f(\alpha_1, \cdots, \alpha_n) \quad (f(x_1, \cdots, x_n) \in K[x_1, \cdots, x_n])$$
という形で表される. このとき
$$\phi (f(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)) = f(\phi(\alpha_1), \cdots, \phi(\alpha_n)) \in L$$
となる. $\Box$
例 (38:26 ~)
$\mathbb{Q}(\sqrt{2}, \sqrt{3}) / \mathbb{Q}$ は (生成元の共役が $\mathbb{Q}(\sqrt{2}, \sqrt{3})$ に含まれているので) 正規拡大. $\Box$
例 (38:54 ~)
$\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})/ \mathbb{Q}$ は正規拡大でない. ($\omega = \frac{-1 + \sqrt{-3}}{2}$ とおくと $\omega \sqrt[3]{2}$ は $\sqrt[3]{2}$ の共役だが, $\omega \sqrt[3]{2} \notin \mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})$) $\Box$
自身への準同型が自己同型になる (39:28 ~)
$L / K$ が正規拡大の場合は $\phi(L) \subset L$ であることを示しましたが、これは実は自己同型になります。
命題. (39:48 ~)
$L / K$ を正規代数拡大とし, $\phi \in \operatorname{Hom}_K^{al}(L, L)$ とする. このとき $\phi$ は同型である.
(証明の概要) : $[L:K] < \infty$ の場合, $\phi$ は単射なので
$$L \simeq \phi(L) \subset L$$
となる. このとき $[\phi(L): K] = [L:K]$ なので, (有限次元) $K$ ベクトル空間としての次元が等しく, $\phi$ は全射. (命題の主張としては, ここまでは正規性は不要. )
$[L:K] = \infty$ の場合, 全射であることを示せば良い. $\alpha \in L$ の $K$ 上共役な元を $\alpha = \alpha_1, \cdots, \alpha_n$ とし, $F = K(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)$ とおく. このとき $[F : K] < \infty$ である. さらに, $F / K$ は正規拡大で, $\phi|_F \in \operatorname{Hom}_K^{al}(F, \overline{K})$ なので, $\phi(F) = F$ となる. $L / K$ は正規なので $F \subset L$ であり, $\phi(F) = F$ なので, ある $\beta \in F$ が存在して $\phi(\beta) = \alpha$ を満たす. よって $\phi$ は全射. $\Box$
(この命題から、$L / K$ が正規なら
$$\operatorname{Hom}_K^{al}(L, \overline{K}) = \operatorname{Hom}_K^{al}(L, L) = \operatorname{Aut}_K^{al}(L)$$
($\operatorname{Aut}_K^{al}(L)$ は $K$ 自己同型全体) になります。)
ガロア拡大 (46:50 ~)
定義. ガロア拡大 (46:50 ~)
代数拡大 $L / K$ がガロア拡大であるとは, 分離拡大かつ正規拡大であることである. $\Box$
(47:46 ~) $[L: K] < \infty$ で, $L/K$ をガロア拡大とします。このとき、分離拡大なので $[L:K] = |\operatorname{Hom}_K^{al}(L, \overline{K})|$ ( 一般には $\geq$ ) が成り立ちますが、正規拡大であることから $\operatorname{Hom}_K^{al}(L, \overline{K}) = \operatorname{Aut}_K^{al}(L)$ です. よって
$$|\operatorname{Aut}_K^{al}(L)| = [L : K]$$
となります ( 一般には $|\operatorname{Aut}_K^{al}(L)| \leq [L : K]$)。これがガロア拡大のポイントで、自己同型群が拡大の情報を十分持っているという根拠になっています。
定義. ガロア群 (49:40 ~)
$L/K$ をガロア拡大とする.
$$\mathrm{Gal}(L / K) = \operatorname{Aut}_K^{al}(L)$$
と書いて, $L$ の $K$ 上のガロア群という.$\Box$
最小分解体 (50:20 ~)
定義. 最小分解体(50:30 ~)
$K$ を体, $f(x) = K[x]$ とする. $\overline{K}$ を一つ固定し, $\alpha_1, \cdots, \alpha_n \in \overline{K}$ を, $f(x)$ の全ての根とする. このとき, $K(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)$ を $f$ の $K$ 上の最小分解体という.
(52:04 ~) : ちなみに、別の意味で分解体というものがあるので、”最小” をつけなければいけません。ヒルベルトの理論というのがあって、そこで分岐、不分岐というものがあって、そこで分解群、惰性群というものがあり、分解群に対応する体を分解体と呼びます。英語で言うと、最小分解体は splitting field で、ヒルベルトの理論で出てくるのは decomposition field なので、英語では誤解が起きません。
例. 最小分解体 (54:18 ~)
省略します (動画を見てください)。
有限体 (59:11 ~)
$p > 0$ を素数とします。$\mathbb{F}_p = \mathbb{Z} / p\mathbb{Z}$ は有限体 (元の個数が有限) です。任意の $p$ 冪に対して、元の個数がそれに一致する体がただ一つ存在することを示したいです。
命題. (1:00:11 ~)
$K$ が有限体で, $\mathrm{ch} K = p$ なら, $|K|$ は $p$ 冪である.
(証明の概略) : $\mathbb{F}_p \subset K$ なので, $K$ は $\mathbb{F}_p$ ベクトル空間. $|K| < \infty$ なので有限次元. $[K: \mathbb{F}_p] = n$ とおけば, $|K| = p^n$. $\Box$
(1:02:09 ~) 実は $q = p^n$ とおいたとき, $x^q -x$ の最小分解体が $K$ になる、ということがわかりますが、さらに強く、$x^q -x$ の根全体が $K$ になります。まずは、有限体の元がその形の多項式の根になっていることを示します。
命題. (1:02:43 ~)
$p > 0$ を素数, $n > 0$ を整数とし, $q = p^n$ とする. このとき, $|K| = q$ ならば任意の $x \in K$ に対して $x^q = x$ が成り立つ.
(証明の概略) : $K^{\times} = K \setminus \{0\}$ とおくと, $|K^{\times}| = q-1$. $|K^{\times}|$ は群なので, フェルマーの小定理の一般化により $x^{q-1} = 1$ $(x \neq 0)$ となる. 両辺に $x$ をかければ, $x = 0$ でも成り立つ.
(フェルマーの小定理の一般化を一応示しておきます. $G$ を有限群とします. 任意の $g \in G$ に対し, $g$ が生成する部分群 $\langle g \rangle$ を考えると, $|G| < \infty$ なのでどこかで $g^k = e$ となります. このとき $|\langle g \rangle| = k$ です. ラグランジュの定理から, $|G|$ は $k$ で割り切れるので, $g^{|G|} = e$ となります.) $\Box$
(1:04:48 ~) よって、元の個数が $q$ であるような体があれば、それは $x^q -x$ の根になっています。次は $x^q -x$ の根全体が体になることを示します。
定理. (1:05:11 ~)
$q = p^n$ とする. このとき, 以下が成り立つ.
- $x^q -x$ の $\mathbb{F}_p$ 上の最小分解体は, 位数 $q$ の体である. (それを $\mathbb{F}_q$ と書く)
- $x \in \overline{ \mathbb{F}_p}$ が $x^q =x$ を満たすなら, $x \in \mathbb{F}_q$ である.
- $|K| = q$ ならば, $K \simeq \mathbb{F}_p$ となる.
((2) の主張は、一般に最小分解体は根で生成された体なので、根の集合とは一致しませんが、それが一致するという主張です。)
(証明の概略) : $\Omega = \overline{ \mathbb{F}_p}$ を一つ固定する. (1) を示す. $f(x) = x^q -x$ とおくと,
$$f^{\prime}(x) = q x^{q-1} -1 = -1 \neq 0$$
なので, $f$ は分離多項式.
$$L = \{x \in \Omega \mid f(x) = 0\}$$
とおいて, $L$ が体であることを示す. $f$ が分離的であることと, 次数から $|L| = q$ である. $0, 1 \in L$ であり, $\alpha, \beta \in L$ に対して
$$(\alpha \pm \beta)^q = \alpha^q \pm \beta^q = \alpha \pm \beta$$
から $\alpha \pm \beta \in L$,
$$(\alpha \beta)^q = \alpha^q \beta^q = \alpha \pm \beta$$
から $\alpha \beta \in L$, $\beta \neq 0$ のとき $\frac{\alpha}{\beta} \in L$ も同様にわかるので, $L$ は体である. $x \in \mathbb{F}_p$ ならば,
$$x^q = (\cdots((x^p)^p)\cdots))^p = x$$
なので, $\mathbb{F}_p \subset L$. ここで, $L$ の定義から $f(x)$ の最小分解体は $\mathbb{F}_p(L)$ だが, 以上の考察から $\mathbb{F}_p(L) \subset L$. よって (1) が示された.
(2) は $L$ の定義と (1) から従う.
(3) を示す. $|K|$ は有限なので, $[K: \mathbb{F}_p]$ は有限次拡大, 特に代数拡大. よって $K \subset \Omega$ として良い. $K$ の元は $x^q -x$ の根. よって $K \subset L$. 一方, $|K| = |L| = q$ なので, $K = |L|$. $\Box$
(1:17:29 ~) 有限体は今ではとても重要です。なぜかというと、情報科学との関連において符号理論や暗号理論などの情報処理で役に立っています。
無限体 (1:18:58 ~)
代数閉体は無限体であることと、無限体上の $0$ でない多項式は関数として $0$ でないということを話します。
補題. (1:19:25 ~)
$K$ が代数閉体なら, $|K| = \infty$.
(証明) : 講義では証明が省略されたので補足しておきます. $\mathrm{ch} K = 0$ のときは $\mathbb{Q} \subset K$ なので明らか. $\mathrm{ch} K = p > 0$ とする. このとき $\overline{\mathbb{F}_p} \subset K$ なので, $|\overline{\mathbb{F}_p}| = \infty$ を示せば良い. もし $|\overline{\mathbb{F}_p}| = k < \infty$ ならば, $p^n > k$ を満たす $n > 0$ が存在するが, $q = p^n$ とおけば $|\mathbb{F}_q| = q > k$ となる. 一方 $\mathbb{F}_q \subset \overline{\mathbb{F}_p}$ ($x^q -x$ の根全体) なので, $q \leq k$ でなければならない. よって矛盾.$\Box$
命題. (1:20:19 ~)
$K$ を体, $S \subset \overline{K}$ を $|S| = \infty$ となる部分集合とする. このとき
$$f(x) = a_0x^n + \cdots + a_n \in K[x] \quad (a_0 \neq 0)$$
に対して $f(\alpha) \neq 0$ を満たす $\alpha \in S$ が存在する.
(証明の概要) : $f$ の根は有限個で, $\overline{K}$ の元なので, それ以外の元を $S$ から取れば良い. $\Box$
命題. (1:22:29 ~)
$K$ を体, $S \subset \overline{K}$ を $|S| = \infty$ となる部分集合とする. このとき, $n$ 変数多項式
$$f(x_1, \cdots, x_n) \in K[x_1, \cdots, x_n]$$
が多項式として $0$ でなければ, $\alpha_1, \cdots, \alpha_n \in S$ が存在して $f(\alpha_1, \cdots, \alpha_n) \neq 0$.
(証明の概要) : $f(x_1, \cdots, x_n)$ は
$$f(x_1, \cdots, x_n) = g_0(x_1, \cdots, x_{n-1})x_n^m + \cdots + g_m(x_1, \cdots, x_{n-1})$$
と表される. このとき, $g_0(x_1, \cdots, x_{n-1}) \neq 0$ として良い. $n$ に関する帰納法から $g_0(\alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1}) \neq 0$ を満たす $\alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1} \in S$ が存在する. すると,
$$f(\alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1}, x_n) = g_0(\alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1})x_n^m + \cdots$$
は最高次の項が $0$ でないので, $\alpha_n \in S$ が存在して $f(\alpha_1, \cdots, \alpha_{n-1}, \alpha_n) \neq 0$. $\Box$