今回は、京都大学OCWで3回生向けに後期に行われたガロア理論の講義の第10回の内容の要約をします。3 次多項式と 4 次多項式のガロア群を求めます。群の性質をゴリゴリ使うので、群論が好きな方や整数問題が好きな方は楽しめると思います。
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:目次
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第1回(10月7日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第2回(10月14日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第3回(10月21日)2限
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第3回(10月21日)3限
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第4回(10月28日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第5回(11月4日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第6回(11月11日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第7回(11月18日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第8回(12月2日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第9回(12月9日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第10回(12月16日)← 今回
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第11回(1月6日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第12回(1月13日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第13回(1月20日)
- ガロア理論の講義(OCW)を要約する:第14回(1月27日)
目次
3次多項式のガロア群 (続き) (00:08~)
前回のおさらい
体 $K$ 上の3次分離多項式
\begin{align} f(x) &= x^3 + a_1 x^2 + a_2x + a_3 \\ &= (x -\alpha_1)(x -\alpha_2)(x -\alpha_3) \end{align}
に対して
\begin{align}\beta_1 &= \alpha_1^2 \alpha_2 + \alpha_2^2 \alpha_3 + \alpha_3^2 \alpha_1, \\ \beta_2 &= \alpha_1 \alpha_2^2 + \alpha_2 \alpha_3^2 + \alpha_3 \alpha_1^2 \\ \\ g(y) &= (y -\beta_1)(y -\beta_2) \end{align}
とおくと
\begin{align} g(y) &= y^2 + b_1 y + b_2 \\ \\ b_1 &= a_1 a_2 -3a_3, \\ b_2 &= a_2^3 + 9a_3^2 -6a_1 a_2 a_3 + a_1^3 a_3 \end{align}
と表されるのでした。(動画では $b_2$ の最初の項が $a_2^2$ となっていますが、前回の動画では $a_2^3$ となっており、こちらが正しいです。 )
ガロア群の計算 (02:50~)
$L = K(\alpha_1, \alpha_2, \alpha_3)$ とおいたとき、$g(y)$ が既約なら $\mathrm{Gal}(L/K) \simeq \mathfrak{S}_3$、$g(y)$ が可約なら $\mathrm{Gal}(L/K) \simeq \mathbb{Z} / 3 \mathbb{Z}$ であることを示します。
命題 (03:33 ~ )
$D(f)$, $D(g)$ をそれぞれ $f, g$ の判別式とする. このとき
$$D(f) = D(g)$$
が成り立つ.
(証明の概略) : 素直に計算すれば良い.
$$D(g) = (\beta_1 -\beta_2)^2$$
だが, 計算すると
$$\beta_1 -\beta_2 = (\alpha_1 -\alpha_2)(\alpha_2 -\alpha_3)(\alpha_1 -\alpha_3)$$
となるので, 両辺を2乗すれば良い. $\Box$
(06:22 ~) $f(x)$ が分離的であることから $D(f) \neq 0$ であり、よって $D(g) \neq 0$ となります。したがって $g(y)$ も分離的です。
命題 (07:05~)
$K$ を体, $f \in K[x]$ を既約かつ分離的な 3 次多項式とし, $L$ を $f$ の最小分解体とする. このとき
- $\mathrm{Gal}(L/K) \simeq \mathfrak{S}_3$ ならば $g(y)$ は既約
- $\mathrm{Gal}(L/K) \simeq \mathbb{Z} / 3 \mathbb{Z}$ ならば $g(y)$ は可約
が成り立つ.
(証明の概略) : $M = K(\beta_1, \beta_2)$ とおくと, $g(y)$ は分離的で, $M$ は $g(y)$ の最小分解体なので $M / K$ はガロア拡大. 制限写像 $\mathrm{Gal}(L/K) \to \mathrm{Gal}(M/K)$ は全射であり, 特に $\mathrm{Gal}(L/K)$ は $\beta_1, \beta_2$ に作用する.
(1) を示す. $\beta_1, \beta_2$ は巡回置換 $(1, 2, 3) \in \mathrm{Gal}(L/K)$ で不変 ($\beta_1, \beta_2$ の定義から明らか), 互換 $(1, 2)$ で互いが入れ替わるので, $\mathrm{Gal}(M/K)$ は $\{\beta_1, \beta_2\}$ に推移的に作用し, 前回示した命題から $g(y)$ は既約.
(2) を示す. $\mathrm{Gal}(L/K)$ は $(1, 2, 3)$ で生成されており, $\beta_1, \beta_2$ はその作用で不変. よって $\mathrm{Gal}(M/K) = 1$ であり, ガロアの基本定理から $M = K$ となる. つまり $\beta_1, \beta_2 \in K$. したがって $g(y)$ は可約. $\Box$
(12:56 ~) $f(x) \in K[x]$ が既約であることから $\mathrm{Gal}(L/K)$ は根の集合に推移的に作用するので, $\mathrm{Gal}(L/K)$ は $\mathfrak{S}_3$ か $\mathbb{Z} / 3 \mathbb{Z}$ のいずれかに一致します。$g(y)$ が既約であるか可約であるかもどちらか一方が成り立つので、上の命題の主張の逆が成り立ちます。
定理 (13:58 ~)
上の命題と同じ状況で
- $g(y)$ が既約ならば $\mathrm{Gal}(L/K) \simeq \mathfrak{S}_3$
- $g(y)$ が可約ならば $\mathrm{Gal}(L/K) \simeq \mathbb{Z} / 3 \mathbb{Z}$
が成り立つ. $\Box$
(14:38~) 一般に 3 次方程式に対して 2 次の分解方程式というものが定義できますが、ここで定義した $g(y)$ はそれとは異なります。3 次方程式を斉次化して考えると
$$f(u, v) = a_0 u^3 + a_1 u^2 v + a_2 u v^2 + a_3 v^3$$
となります。これのヘッシアン
$$h(u, v) = \det \begin{pmatrix} \partial_u^2 f & \partial_u \partial_v f \\ \partial_v \partial_u f & \partial_v^2 f \end{pmatrix}$$
は 2 次の斉次式になります。これは群の作用に関して整合性があります。3 次方程式の解法のときに解く 2 次方程式はこの式の根になっている (?) ので、その意味での分解方程式になっています。しかし欠点があって、$f$ と $h$ の判別式が一致しません ($D(h) = -3 D(f)$ となるようです)。これはガロア群の決定の際に都合が悪いです。一方で、$g(y)$ はガロア群の決定には都合がいいですが、群の作用とは整合性がありません。判別式が $-3$ 倍になるという部分は実に興味深く、ゼータ関数の理論において余分な関数方程式が成り立つことと関係します。
4次多項式のガロア群 (18:31~)
(18:31~) 4次多項式のガロア群を求めます。標数 $2$ でも成り立ちますが、その証明のためにはアルティン・シュライアー理論が必要になります。この講義ではアルティン・シュライアー理論なしで行けるところまで行きますが、$D_4$ と $\mathbb{Z} / 4\mathbb{Z}$ を区別するところが難しいので、そこは標数が $2$ でないと仮定します。
(19:13~)
\begin{align} f(x) &= x^4 +a_1x^3 + a_2 x^2 + a_3 x + a_4 \\ &= (x -\alpha_1) \cdots ( x -\alpha_4) \in K[x] \end{align}
を既約分離多項式とします。$L = K(\alpha_1, \cdots, \alpha_4)$ とおいて $\mathrm{Gal}(L/K)$ を求めます。$\mathrm{Gal}(L/K)$ の元は $\alpha_1, \cdots, \alpha_4$ の行き先で決まるので、$\mathrm{Gal}(L/K) \subset \mathfrak{S}_4$ とみなすことができ、$f$ が既約なので $\{1, 2, 3, 4\}$ に推移的に作用します。
推移的に作用する $\mathfrak{S}_4$ の部分群の分類 (21:00 ~)
まず、推移的に作用する $\mathfrak{S}_4$ の部分群を求めます。$|\mathfrak{S}_4| = 24$ で、$G \subset \mathfrak{S}_4$ の $1$ の安定化群を
$$H = \{g \in G \mid g(1) = 1\}$$
とおくと、$|G / H| = 4$ なので $G$ は $24$ の約数かつ $4$ の倍数となります。よって $|G|$ は $4, 8, 12, 24$ のいずれかになります。
命題 (22:24~)
$\{1, 2, 3, 4\}$ に推移的に作用する部分群 $G \subset \mathfrak{S}_4$ に対して以下の3つのうちのいずれかが成り立つ.
- $\mathfrak{S}_4$, $A_4$ (交代群), $\langle (12)(34), (13)(24) \rangle$ (Klein の四元群) のどれかと一致.
- $D_4 = \langle (1234), (24) \rangle$ と共役 ($D_4$, $\langle (1342), (23) \rangle$, $\langle (1423), (34) \rangle$ のどれかと一致).
- $\mathbb{Z}/ 4\mathbb{Z}$ と同型. ($\langle (1234)\rangle$, $\langle (1342)\rangle$, $\langle (1423)\rangle$ のどれかと一致)
(証明の概略) : $|G| = 4$ の場合, 一般に群の位数が素数 $p^2$ に一致するとき, その群は可換なので, $G$ は可換である (例えば有限群の分類 (Mathpedia) と類等式 (Wikipedia) を見てください). 有限生成アーベル群の基本定理から $G \simeq \mathbb{Z}/ 4\mathbb{Z}$ または $G \simeq \mathbb{Z}/ 2 \mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/ 2 \mathbb{Z}$ が成り立つ. 位数 $4$ の元を持つ場合, 位数 $4$ の元は巡回置換で, 巡回置換は $6$ つあるが,
\begin{align} (1234) &= (1432)^{-1}, \\ (1342) &= (1243)^{-1}, \\ (1423) &= (1324)^{-1} \end{align}
なので, $G$ は $\langle (1234)\rangle$, $\langle (1342)\rangle$, $\langle (1423)\rangle$ のどれかと一致する. (それぞれが異なることは, 例えば $(1234)^2 = (13)(24)$ などからわかる.) これらは $\mathbb{Z}/ 4\mathbb{Z}$ と同型である.
(27:46 ~) 位数 $4$ の元を持たないとする. $G$ が互換を含むとし, それを (適当に番号を付け替えることで) $(1, 2) \in G$ とすると, $G$ は可換なので, 任意の $\sigma \in G$ に対して
$$(\sigma(1) \sigma(2)) = \sigma(12)\sigma^{-1} = (12)$$
が成り立つ. よって $\sigma(1) = 1, \sigma(2) = 2$ または $\sigma(1) = 2, \sigma(2) = 1$ となり, $G$ が推移的に作用することに反する. よって $G$ は互換を含まない. 互換以外の位数 $2$ の元は
$$(12)(34), (13)(24), (14)(23)$$
のみで, これらに $1$ を加えたものは (単純計算で) $\mathbb{Z}/ 2 \mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/ 2 \mathbb{Z}$ と同型になることがわかる. そしてそれは Klein の四元群である.
(31:45~) $|G| = 8$ の場合, $G$ は $\mathfrak{S}_4$ の Sylow $2$ 部分群である. 特に Sylow の定理から, 他の位数 $8$ の部分群は $G$ と共役である.
$$D_4 = \langle(1234), (24) \rangle$$
は位数が $8$ である. $D_4$ に共役な部分群の個数は, Sylow の定理から $|G / D_4| = 3$ の約数であるが,
\begin{align} (234)(1234)(234)^{-1} &= (1342) \notin D_4, \\ (243)(1234)(243)^{-1} &= (1423) \notin D_4 \end{align}
なので, (2) の3つの部分群のうちのいずれかになる.
(34:38~) $|G| = 12$ のとき, 指数 $2$ (つまり $|\mathfrak{S}_4/G| = 2$) の部分群は正規部分群なので (後で補足), $\mathfrak{S}_4/G \simeq \mathbb{Z} / 2\mathbb{Z}$ となる. よって $G$ に含まれない元が $2$ つ存在すれば, それらの積は $G$ に含まれる. $G$ が互換 を含むならば, (任意の互換はある互換の共役であること (例えば $\sigma(12)\sigma^{-1} = (\sigma(1) \sigma(2))$) と) $G$ が正規部分群であることから, $G$ は全ての互換を含む. このとき $G = \mathfrak{S}_4$ なので $|G| = 12$ に矛盾. よって $G$ は互換を含まない. $\sigma, \tau$ を互換とすると, $\sigma, \tau \notin G$ であり, $\sigma \tau \in G$ となる. $A_4$ は偶数個の互換の積になっているもの全てなので, $A_4 \subset G$ だが, 位数が同じなので $G = A_4$ となる.
$|G| = 24$ のときは明らかに $G \simeq \mathfrak{S}_4$. $\Box$
補足 (指数2の部分群は正規部分群)
$G$ を有限群、$H \subset G$ を部分群とし、$|G / H| = 2$ を満たすとします。このとき $H \triangleleft G$ を示します。そのためには、任意の $a \in G$ に対して $a H = H a$ を示せば良いです。$a \in H$ のときは $a H = Ha = H$ です。$a \notin H$ のときは任意の $h \in H$ に対して $ah \notin H$ となります。これは、$ah \in H$ と仮定すると $a = ah h^{-1} \in H$ となり、矛盾することからわかります。$Ha$ も同様です。よって $aH \subset G \setminus H$ ですが、$|G / H| = 2$ から $|aH| = |H| = |G \setminus H|$ が成り立つので、$aH = G \setminus H$ です。$Ha$ も同様に $Ha = G \setminus H$ です。以上で $a H = H a$ がわかり、$H$ が正規部分群であることがわかりました。
ガロア群の計算 (38:47 ~)
今度は 4 次多項式に対して 3次多項式を対応させます。既約かつ分離的な 4 次多項式
$$f(x) = x^4 + a_1 x^3 + a_2 x^2 + a_3 x + a_4 \in K[x]$$
の根を $\alpha_1, \cdots, \alpha_4$ とし
\begin{align} \tau_1 &= \alpha_1 \alpha_2 + \alpha_3 \alpha_4 \\ \tau_2 &= \alpha_1 \alpha_3 + \alpha_2 \alpha_4 \\ \tau_3 &= \alpha_1 \alpha_4 + \alpha_2 \alpha_3 \end{align}
とおきます。これらを根に持つ多項式を
\begin{align} g(y) &= (y -\tau_1)(y -\tau_2)(y -\tau_3)\\ &= y^3 + b_1 y^2 + b_2 y + b_3 \end{align}
とおくと、これは $K$ 上の多項式になります。($\tau_i$ は $\alpha_j$ の対称式で $b_k$ は $\tau_i$ の対称式なので、$b_k$ は $\alpha_j$ の対称式です。$f(x)$ の係数 $a_l$ は $\alpha_j$ の基本対称式なので、$b_k$ は $a_l$ で表されます。ガロア群の任意の元で $b_k$ が固定されることからもわかります。)実際に計算すると以下のようになります。
命題 (43:33 ~)
上の状況において
\begin{align} b_1 &= -a_2, \\ b_2 &= a_1a_3 -4a_4,\\ b_3 &= -a_4(a_1^2 -4a_2) -a_3^2 \end{align}
となる.
(証明の概略) : 計算すれば良い. (動画を見ることを強くお勧めします。雪江先生はスラスラ計算されていますが、慣れていないと大変だと思います。) $\Box$
3 次多項式のガロア群を求めたときと同様に、$g(y)$ に対して 2 次の多項式 $h(z) = z^2 + c_1 z + c_2$ を作ることができます。先ほどと同様に判別式が一致することを示します。
命題. (52:57 ~)
$D(f) = D(g)$ が成り立つ.
(証明の概略) : $\tau_1 -\tau_2$ を計算すると
\begin{align} \tau_1 -\tau_2 &=\alpha_1 \alpha_2 + \alpha_3\alpha_4 -\alpha_1\alpha_3 -\alpha_2\alpha_4 \\ &= \alpha_1(\alpha_2 -\alpha_3) + \alpha_4(\alpha_3 -\alpha_2) \\ &= (\alpha_1 -\alpha_4)(\alpha_2 -\alpha_3) \end{align}
となる. 同様に計算すると
\begin{align} \tau_2 -\tau_3 &= (\alpha_1 -\alpha_2)(\alpha_3 -\alpha_4) \\ \tau_1 -\tau_3 &= (\alpha_1 -\alpha_3)(\alpha_2 -\alpha_4) \end{align}
となる. 以上から
$$\prod_{i < j}(\tau_i -\tau_j) = \prod_{i < j} (\alpha_i -\alpha_j)$$
となり, 両辺を2乗して $D(g) = D(f)$ となる. $\Box$
この命題から、$f(x)$ が分離的なら $g(y)$ も分離的、$g(y)$ が分離的ならば $h(z)$ も分離的であることがわかります。
命題 (54:58 ~)
$f(x) \in K[x]$ を既約分離 4 次多項式とし, $L$ を $f$ の $K$ 上の最小分解体とする. $G = \mathrm{Gal}(L /K)$ とおく. このとき, 以下が成り立つ.
- $G \simeq \mathfrak{S}_4$ ならば, $g, h$ は既約.
- $G \simeq A_4$ ならば, $g$ は既約で $h$ は可約.
- $G \simeq D_4, \mathbb{Z} / 4\mathbb{Z}$ ならば, $g$ は可約で 1 次式と 2 次式に分解し, $h$ は既約.
- $G \simeq \mathbb{Z} / 2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z} / 2\mathbb{Z} $ ならば, $g, h$ は可約である.
(証明の概略) : $N$ を Klein の四元群とする. $M = K(\tau_1, \tau_2, \tau_3)$ とおくと, $g(y)$ は分離的なので, $M / K$ はガロア拡大である. $L \supset M$ なので, ガロア群の全射準同型
$$\phi: \mathrm{Gal}(L / K) \to \mathrm{Gal}(M / K) \subset \mathfrak{S}_3$$
が $M$ への制限により定まる.
(1:00:35~) (1) を示す. $\phi((12)) = (23)$ である. これは $\alpha_1$ と $\alpha_2$ を入れ替えると, $\tau_1$ はそのまま. $\tau_2$ は $\tau_3$, $\tau_3$ は $\tau_2$ になることからわかる. 同様に $\phi((123)) = (132)$ であり, $(12)$ と $(132)$ は $\mathfrak{S}_3$ を生成するので, $\phi(G) = \mathfrak{S}_3$ つまり $\mathrm{Gal}(M / K) = \mathfrak{S}_3$ となる. $\mathfrak{S}_3$ は $\{\tau_1, \tau_2, \tau_3\}$ に推移的に作用するので $g(y)$ は既約であり, 3 次の場合に示したことから $h(z)$ も既約である.
(1:04:07 ~) (2) を示す (議論の順番を少し変えてます). $N \subset A_4$ である. $N$ の元は $\tau_1, \tau_2, \tau_3$ を不変にするので, $N \subset \mathrm{Ker} (\phi)$. よって $|G / \mathrm{Ker}(\phi)|$ は $|G / N|$ を割り切り,
$$|G / N| = 12 / 4 = 3$$
なので $|G / \mathrm{Ker}(\phi)|$ は $1$ または $3$ である. 一方 $(123) = (12)(23)$ なので $(123) \in A_4$ であり, $\phi((123)) = (132)$ なので, $\phi(G) \supset \mathbb{Z}/ 3\mathbb{Z}$ となる. 特に $|\phi(G)|$ は $3$ の倍数である. 準同型定理から
$$|\phi(G)| = |G / \mathrm{Ker}(\phi)|$$
が成り立つことと $|\phi(G)|$ が $3$ の倍数であることから, $|G / \mathrm{Ker}(\phi)| = 3$ がわかる. したがって $\mathrm{Ker}(\phi) = N$ かつ $\phi(G) = \mathbb{Z} / 3 \mathbb{Z}$ となる. $\phi(G)$ は $\{\tau_1, \tau_2, \tau_3\}$ に推移的に作用するので, $g(y)$ は既約.
$$\phi(G) = \mathrm{Gal}(M / K) = \mathbb{Z} / 3 \mathbb{Z}$$
なので, 3 次の場合に示したことから $h(z)$ は可約である.
(1:07:57 ~) (3) の場合を示す. まず $G = \langle(1234)\rangle$ の場合を示す. $\phi((1234))$ は $\tau_1$ と $\tau_3$ を入れ替え, $\tau_2$ を不変にする. よって $\tau_1, \tau_3 \notin K$ であり, $\tau_2$ は任意の $G$ の元で不変なので, $\tau_2 \in K$ となる ($\mathrm{Gal}(L/ K(\tau_2)) = G$ であり, ガロアの基本定理から $K = K(\tau_2)$. よって $\tau_2 \in K$). つまり, $g(y)$ は 1 次式と 2 次式の積に分解する. $h(z)$ の根 $\beta_1, \beta_2$ は $\tau_1, \tau_3$ を入れ替えると入れ替わるので, $\beta_1, \beta_2 \notin K$ つまり $h(z)$ は既約.
$G = D_4$ の場合は, 上の状況でさらに $(24)$ の作用を考えれば良い. $\phi((24))$ は $\tau_1$ と $\tau_3$ を入れ替え, $\tau_2$ を不変にするので, 上と同じである.
$G$ が $\langle(1234)\rangle$ や $D_4$ に共役な場合も同様である (根 $\alpha_i$ の順番には任意性があるので, 適当に順番を入れ替えれば良い) .
(1:12:47 ~) (4) の場合を示す. $G = N = \mathrm{Ker}(\phi)$ なので, $\tau_1, \tau_2, \tau_3$ は $G$ で不変. よって $\tau_1, \tau_2, \tau_3 \in K$. $\beta_1, \beta_2$ も同様. よって $g(y)$, $h(z)$ は 1 次式の積に分解する. $\Box$
この命題の $G$ の条件は互いに背反で全ての場合を尽くし、$g, h$ に関する条件が背反なので、逆が成り立ちます。
定理. (1:14:01 ~)
$f(x) \in K[x]$ を既約分離 4 次多項式とし, $L$ を $f$ の $K$ 上の最小分解体とする. $G = \mathrm{Gal}(L /K)$ とおく. このとき, 以下が成り立つ.
- $g, h$ が既約ならば $G \simeq \mathfrak{S}_4$.
- $g$ が既約で $h$ が可約ならば $G \simeq A_4$.
- $g$ が可約で $h$ が既約ならば $G \simeq D_4$ または $G \simeq \mathbb{Z} / 4\mathbb{Z}$.
- $g, h$ が可約ならば $G \simeq \mathbb{Z} / 2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z} / 2\mathbb{Z}$.
が成り立つ. $\Box$
$D_4$ と $\mathbb{Z} / 4\mathbb{Z}$ を区別する (1:15:10~)
これが一番難しいです。証明は次回にまわして、例を考えます。
例. 1 (1:16:02~)
$$f(x) = x^4 + 2x + 2 \in \mathbb{Q}[x]$$
とする. これはアイゼンシュタインの判定法により既約である (既約かつ標数 $0$ なので重根を持たない). このとき, 計算すると
$$g(y) = y^3 -8y -4$$
となる. $\mathbb{Z}$ は UFD なので, $g(y)$ が $\mathbb{Z}$ 上で既約なら $\mathbb{Q}$ 上でも既約である (証明は第一回). $g(y)$ は 3 次なので, 可約なら 1 次因子を持ち, それは $-4$ の約数 $\pm 1$, $\pm2$, $\pm 4$ になる. 計算すると $0$ にならないので既約. $h(z)$ の既約性は判別式を計算すれば良い. 計算すると $D(h) = D(g) = 4^2 \cdot 101$ となり, 平方でないので既約 (解の公式からわかる). よってガロア群は $\mathfrak{S}_4$. $\Box$
適当に選ぶと $\mathfrak{S}_4$ になります。
(1:21:14 ~) 最後に $D_4$ と $\mathbb{Z} / 4\mathbb{Z}$ を区別する方法の主張だけ述べます。
命題. (1:21:26 ~)
上の定理の (3) において
$$g(y) = (y^2 + d_1y + d_2)(y -\tau_2) \quad d_1, d_2 \in K$$
とおいたとき、以下の 2 つは同値.
- $\mathrm{Gal}(L /K) \simeq \mathbb{Z} / 4\mathbb{Z}$.
- 2 つの方程式 \begin{align} w^2 + a_1 w -d_1 &= 0 \\ w^2 -\tau_2 w + a_4 &= 0 \end{align}が両方 $K(\tau_1)$ に解を持つ $\Box$
2 つの方程式の解は解の公式で記述できますが, 後でやるクンマー理論を使います。