正則関数のべき級数展開とその収束半径

べき級数 $\sum_{n=0}^{\infty} a_n x^n$ には収束半径と呼ばれる数 $R \in [0, \infty]$ が定まっており、$|x| < R$ でべき級数が収束して、和、差、積、微分積分などが自由に行えることが知られています。また収束半径を係数から求める、以下の判定法が知られています。

  1. (ダランベールの判定法) ${\displaystyle \lim_{n\to \infty} \left|\frac{a_n}{a_{n+1}}\right|}$ が存在すれば、それは $\sum_{n=0}^{\infty} a_n x^n$ の収束半径と一致する。
  2. (コーシー・アダマールの判定法) ${\displaystyle \liminf_{n\to \infty} \frac{1}{\sqrt[n]{|a_n|}}}$ は $\sum_{n=0}^{\infty} a_n x^n$ の収束半径と一致する。

これらのことは以下の 2 つの記事に詳しく載せています。

しかし、例えば $\displaystyle \frac{1}{\cos x}$, $\tan x$ などのべき級数展開は係数が複雑で、これらの方法の適用が難しいです。このような場合でも、$\cos x$ が正則関数であることを使うと収束半径が簡単に求めらることがあります。

この記事では、正則関数のべき級数展開と、その収束半径について簡単にまとめた後、技術的な問題で動画では飛ばしてしまった話題をまとめます。

正則関数のべき級数展開

複素微分可能性と正則関数の定義

$D \subset \mathbb{C}$ をある領域 (連結な開集合) とします。複素数値関数 $f: D \to \mathbb{C}$ が $z_0 \in D$ で複素微分可能であるとは、

$$\lim_{z \to z_0} \frac{f(z) -f(z_0)}{z -z_0} = c \in \mathbb{C}$$

が存在することを言います。この $c$ を $f^{\prime}(z_0)$ と表します。

$f$ が領域 $D$ 上の全ての点で複素微分可能であるとき、$f$ は $D$ で正則であるといいます。また、$z_0 \in D$ のある開近傍 $U$ が存在し $f$ が $U$ で正則であるとき、$f$ は $z_0$ で正則であるといいます。

$f(z)$ は実数値 2 変数関数 $u, v$ を用いて $f(z) = u(x, y) + i v(x,y)$ と表すこともでき、複素微分可能であることを $u, v$ から判定することができます。詳しくは記事の末尾の補足を見てください。

複素微分可能ならば連続

動画では説明を飛ばしましたが、$f$ が $z_0$ で複素微分可能であれば、$f$ は $z_0$ で連続です。実際、微分可能であることから $\delta > 0$ を適当にとれば、$|z -z_0| < \delta$ を満たすとき常に

$$\left|\frac{f(z) -f(z_0)}{z -z_0} -f^{\prime}(z_0)\right| < 1$$

が成り立つようにできます。この時

\begin{align} & \left|\frac{f(z) -f(z_0)}{z -z_0}\right| \\ = \ & \left|\frac{f(z) -f(z_0)}{z -z_0} -f^{\prime}(z_0) +f^{\prime}(z_0)\right| \\ \leq \ & \left|\frac{f(z) -f(z_0)}{z -z_0} -f^{\prime}(z_0)\right| +|f^{\prime}(z_0)| \\ < \ & 1 + |f^{\prime}(z_0)| \end{align}

なので、

$$|f(z) -f(z_0)| < (1 +|f^{\prime}(z_0)|) |z -a|$$

が成り立ちます。任意の $\varepsilon > 0$ に対して $\delta^{\prime} > 0$ を

$$\delta^{\prime} < \frac{\varepsilon}{1 +|f^{\prime}(z_0)|}$$

を満たすようにとれば、$|z -a| < \delta^{\prime}$ のとき

$$|f(z) -f(z_0)| < \varepsilon$$

を満たします。よって $f$ は $z_0$ で連続です。特に $f$ が領域 $D$ で正則ならば、$f$ は $D$ で連続です。

曲線とは

$D \subset \mathbb{C}$ を領域とします。閉区間 $[a, b]$ からの連続写像 $\gamma: [a, b] \to D$ を $D$ 上の曲線といいます。一般の認識では $\gamma(t)$ の描く軌跡 $\gamma([a, b]) \subset D$ 自体を曲線と呼びますが、連続写像を曲線と定義すると曲線の向き (進む方向) を定められたり、半径 1 の円周と、半径 1 の円周上を $n$ 周する曲線を区別できたりします。

一方で、曲線 $\gamma: [0, 1] \to D$ と、進む速度が半分の曲線 $\gamma^{\prime}: [0, 2] \to D$, $\gamma^{\prime}(t) = \gamma(t/2)$ が区別されたり、ペアノ曲線と呼ばれる、平面上の点全てを通る曲線が存在したりと感覚に反したことも起こります。このように少し注意が必要なものの、後で定義する線積分を考える限りは、積分値は曲線の進む速さに依存せず、曲線の軌跡と進む方向と、何周するかで積分値が決まるので、誤解の恐れがない場合はそれを曲線と呼ぶ場合もあります。

曲線 $\gamma: [a, b] \to D$ を

$$\gamma(t) = \gamma_1(t) + i\gamma_2(t)$$

とおいたとき、$\gamma$ が連続であることから $\gamma_1(t)$, $\gamma_2(t)$ は連続関数になります。$\gamma_1(t)$, $\gamma_2(t)$ が微分可能であるとき、$\gamma$ の微分を

$$\frac{d \gamma}{dt} = \frac{d\gamma_1(t)}{dt} + i \frac{d \gamma_2(t)}{dt}$$

と定め、さらに $\displaystyle \frac{d \gamma}{dt}$ が $[a, b]$ 連続であるとき、つまり $\displaystyle \frac{d\gamma_1(t)}{dt}$, $\displaystyle \frac{d \gamma_2(t)}{dt}$ が $[a, b]$ 連続であるとき、$\gamma$ を $C^1$ 級曲線といいます。ただし、端点 $a, b$ での微分は片側からの微分で定めます。

端点の値が同じ場合、つまり $\gamma(a) = \gamma(b)$ が成り立つとき、$\gamma$ を閉曲線といいます。また、$\gamma$ が (端点以外で) 自分自身と交わらないとき、つまり $t < s$ を満たす $t, s \in [a, b]$ に対して、$\gamma(s) = \gamma(t)$ を満たすならば、自己交叉を持たない曲線、または単純曲線といいます。

$C$ 上の単純閉曲線 $\gamma: [a, b] \to \mathbb{C}$ に対して、$C$ から $\gamma([a, b])$ を除いた集合 $C \setminus \gamma([a, b])$ は、ちょうど 2 つの連結成分からなり、片方は有界、片方は非有界となることが知られています。この事実は、ジョルダン曲線定理と呼ばれています。有界な方の連結成分を $\gamma$ の内部といいます。

正則関数の積分においては曲線の内部という概念が重要なので、その関係で複素関数論ではジョルダン曲線定理を仮定する場合がありますが、証明が面倒なので特に強い興味がない限り無理して証明を追う必要はないと思います。ジョルダン曲線定理を仮定せずに複素関数論を展開することも可能で、[杉浦] はそのように書かれています (円や三角形など、内部という概念が自明なものについて最初に証明し、回転数という概念を用いて一般の場合に拡張する)。ジョルダン曲線定理の証明は、インターネット上で公開されているものだと例えば以下の PDF があります。

Jordan の閉曲線定理の証明

線積分

$D$ 上の複素関数 $f$ の、曲線 $\gamma: [a, b] \to \gamma$ に沿った積分を定義します。基本的な考え方は実数の積分と同じで、$[a, b]$ の分割

$$a = t_0 < t_1 < \cdots < t_{n-1} < t_n = b$$

をとって、この分割から定まる和

$$\sum_{k = 0}^{n-1} f\big(\gamma(t_k)\big)(\gamma(t_{k+1}) -\gamma(t_k))$$

の、分割幅を $0$ にした極限として定義し、

$$\int_{\gamma} f(z) dz$$

と表します。これを曲線 $\gamma: [a, b] \to \gamma$ に沿った $f$ の線積分、または単に積分といいます。$f$ が連続で、曲線 $\gamma$ の長さが有限であるとき、積分は有限の値に収束することが知られています (記事の末尾で証明)。ただし、$\gamma$ が単に連続であるだけでは積分の計算が難しいので、理論的には折れ線での近似を用いるか、実用上も理論上も適用できる、以下の方法を使うかのどちらかだと思います。

$\gamma$ が $C^1$ 級であるとき、

\begin{align} & \sum_{k = 0}^{n-1} f\big(\gamma(t_k)\big)(\gamma(t_{k+1}) -\gamma(t_k)) \\ = \ & \sum_{k = 0}^{n-1} f\big(\gamma(t_k)\big)\frac{\gamma(t_{k+1}) -\gamma(t_k)}{t_{k+1} -t_k}(t_{k+1} -t_k) \end{align}

と変形すると、この値は

$$\int_{a}^b f(\gamma(t)) \frac{d \gamma}{d t} dt$$

に収束すると予想されます。これは実際に正しく (記事の末尾で証明)、この値自体を線積分の定義とする教科書もあります。ただし、実部と虚部はそれぞれ別に積分することとします。つまり、

\begin{align} g(t) &= g_1(t) + i g_2(t) \\ \Rightarrow \ \int_a^b g(t) dt &= \int_a^b g_1(t) dt + i\int_a^b g_2(t) dt\end{align}

とします。ちなみに $\gamma$ が $C^1$ 級であるとき、$\gamma$ の長さ $L(\gamma)$ は

$$L(\gamma) = \int_a^b \sqrt{\left|\frac{d \gamma}{dt} \right|} dt$$

で与えられ、$[a, b]$ 上の連続関数の積分なので有限の値となります。

例えば円周 $\gamma(t) = e^{2 \pi i t}$ $(0 \leq t \leq 1)$ は $C^1$ 級で、$\gamma$ に沿った $\frac{1}{z}$ の積分は

\begin{align} \int_{\gamma} \frac{1}{z} dz &= \int_0^1 \frac{1}{e^{2\pi i t}} 2\pi i e^{2\pi i t} dt \\ &= 2\pi i \end{align}

となります。

曲線 $\gamma: [a,b] \to D$ が連続で、定義域を $[a, a_1]$, $[a_2, a_3]$, $\cdots$, $[a_{n-1}, b]$ と分けたときにそれぞれが $C^1$ 級曲線となるとき、区分的 $C^1$ 級曲線と言います。分割された曲線たちを $\gamma_1, \gamma_2, \cdots, \gamma_n$ とおいたとき、$\gamma$ 上の積分は

$$\int_{\gamma} f (z) d z = \int_{\gamma_1} f(z)dz + \cdots + \int_{\gamma_n} f (z)dz$$

となります (積分の定義によってはこれを定義とします)。

コーシーの積分定理、コーシーの積分公式

$f$ を $D$ 上の正則関数、$\gamma$ を $D$ 内の閉曲線で、内部を持つとします (つまり $\gamma$ が $\mathbb{C}$ を 2 つの連結成分に分け、片方が有界である)。このとき $f$ が $\gamma$ の内部で正則ならば

$$\int_{\gamma} f (z)dz = 0$$

が成り立ちます。これをコーシーの積分定理といいます。

証明はコーシー・リーマン方程式とグリーンの定理を使うもの、三角形に分割して三角形に沿った積分の大きさを評価するものなどがあります。

コーシーの積分定理の基本的な応用は、積分経路の変形です。これによって、$a$ を除いた点で正則な関数 $\displaystyle \frac{f(z)}{z -a}$ の、$a \in D$ を反時計回りに 1 周する曲線 $\gamma$ に沿った積分は、$a \in D$ を反時計回りに 1 周する半径の小さい円周 $\gamma^{\prime}$ に沿った積分と一致することがわかり、半径を小さくしていくと

$$f(a) = \frac{1}{2 \pi i} \int_{\gamma} \frac{f(z)}{z-a} dz$$

となることがわかります。これをコーシーの積分公式といいます。

正則関数の冪級数展開

コーシーの積分公式を使って正則関数の冪級数展開が得られます。$D$ を領域、$E \subset D$ を $a \in D$ を中心とする閉円盤とし、$\gamma$ を正の向きの境界とします。$D$ 上の正則関数 $f$ に対してコーシーの積分公式から

$$f(z) = \frac{1}{2\pi i} \int_{\gamma} \frac{f(\zeta)}{\zeta -z} d\zeta \quad (z \in E \setminus \gamma)$$

となりますが、任意の $\zeta \in \gamma$ に対して $\left|\frac{z -a}{\zeta -a}\right| < 1$ なので

\begin{align}\frac{1}{\zeta -z} &= \frac{1}{\zeta -a} \cdot \frac{1}{1 -\frac{z -a}{\zeta -a}} \\ &= \sum_{n= 0}^{\infty} \frac{(z -a)^n}{(\zeta -a)^{n+1}}\end{align}

が成り立ちます。これは、$z, a$ を固定すると

\begin{align} & \left|\frac{1}{\zeta -z} -\sum_{n= 0}^{m} \frac{(z -a)^n}{(\zeta -a)^{n+1}}\right| \\ = \ & \left|\frac{1}{\zeta -z} -\frac{1}{\zeta -a} \left(\frac{1 -A(\zeta)^{m+1}}{1 -A(\zeta)}\right)\right| \quad \left(A(\zeta) = \frac{z -a}{\zeta -a} \right)\\ = \ & \left| \frac{A(\zeta)^{m+1}}{1 -A(\zeta)} \right| \end{align}

となるので、$|A(\zeta)| < 1$ から $\sum_{n= 0}^{\infty} \frac{(z -a)^n}{(\zeta -a)^{n+1}}$ は $\zeta$ の関数として $\gamma$ 上一様収束し、$f(\zeta)$ はコンパクト集合 $\gamma$ 上の連続関数なので有界、従って項別積分ができて

\begin{align} & \frac{1}{2\pi i} \int_{\gamma} \frac{f(\zeta)}{\zeta -z} d\zeta \\ = \ & \frac{1}{2\pi i} \int_{\gamma}\sum_{n= 0}^{\infty} \frac{f(\zeta) (z -a)^n}{(\zeta -a)^{n+1}} d\zeta \\ = \ & \frac{1}{2\pi i} \sum_{n= 0}^{\infty} (z -a)^n \int_{\gamma} \frac{f(\zeta)}{(\zeta -a)^{n+1}} d\zeta \end{align}

となります。(もう少し補足すると、$\frac{d \gamma}{dt}$ は $[0, 2\pi]$ で連続なので、区間上 $[0, 2\pi]$ 上で

$$\sum_{n=0}^{\infty} \frac{f(\gamma(t))(z -a)^{n}}{(\gamma(t)-a)^{n+1}} \frac{d \gamma}{dt}$$

が一様収束し、項別積分ができます。) ここで、

$$a_n = \frac{1}{2\pi i} \int_{\gamma} \frac{f(\zeta)}{(\zeta -a)^{n+1}} d \zeta$$

は定数なので、これで

$$f(z) = \sum_{n= 0}^{\infty}a_n(z -a)^n \quad (z \in E \setminus \gamma)$$

と冪級数展開されることが示されました。

逆に $z$ に関する冪級数が正則であることは、以下の記事の $x$ を複素数と読み換えるとわかります。

収束べき級数に許される演算#微分積分

収束半径について

$f$ が $a \in \mathbb{C}$ を中心とする半径 $r$ の円盤の内部で正則であり、円周上の点 $b$ に収束する点列 $\{z_n\}$ で、$\lim_{n\to\infty}|f(z_n)| = \infty$ を満たすものが存在するとき、冪級数展開

$$f(z) = \sum_{n= 0}^{\infty}a_n(z -a)^n $$

の収束半径は $R$ になります。実際、収束半径が $R$ 以上であることは円盤内で収束することから明らかで、もし収束半径が $R$ より大きければ、半径 $R + \delta$ の閉円盤上で冪級数が収束するのでその円盤上で正則で、従ってコンパクト集合上で連続なので有界となります。これは $\lim_{n\to\infty}|f(z_n)| = \infty$ を満たす点列が存在することに反します。よって収束半径は $R$ となります。

正則関数 $g(z)$ が $g(c) = 0$ を満たせば、$c$ に収束する任意の点列 $\{z_n\}$ に対して $\lim_{n\to\infty}\frac{1}{|g(z_n)|} = \infty$ となります。よって $g(z)$ の零点が存在すれば $\frac{1}{g(z)}$ のべき級数展開の収束半径は、べき級数展開の中心から零点集合までの最短距離と一致します。

複素微分と実 2 変数関数の微分との関係

複素関数は、実軸と虚軸を分けて考えることで、実 2 変数関数と見なすことができます。このとき、正則関数の定義がどのように表されるかを確認します。

複素関数を実 2 変数関数と見なす

$z = x + iy$ に対して $\begin{pmatrix}x \\ y\end{pmatrix} \in \mathbb{R}^2$ を対応させることで、複素関数 $f(z)$ は $\tilde{f}: \mathbb{R}^2 \to \mathbb{R}^2$ と見なすことができます。$f$ の正則性と $\tilde{f}$ の微分との関係を確認しましょう。

$$f(z) = u(x, y) + i v(x, y)$$

と表したとき、$\tilde{f}$ は

$$\tilde{f}(x, y) = \begin{pmatrix}u(x,y) \\ v(x,y)\end{pmatrix}$$

と表されます。また、複素数の積は

\begin{align} z_1 z_2 &= (x_1 +iy_1)(x_2 +iy_2) \\ &= x_1 x_2 -y_1y_2 +i(x_1 y_2 + x_2 y_1) \\ &\mapsto \begin{pmatrix}x_1 x_2 -y_1y_2 \\ x_1 y_2 + x_2 y_1 \end{pmatrix}\\ &= \begin{pmatrix}x_1 & -y_1 \\ y_1 & x_1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix}x_2 \\ y_2 \end{pmatrix} \end{align}

と対応します。実は

$$z = x +iy \mapsto \begin{pmatrix}x & -y \\ y & x \end{pmatrix}$$

という対応は、$\mathbb{C}$ から $2 \times 2$ の行列環への環の単射準同型を与えます。

複素微分可能性とコーシー・リーマン方程式

記事冒頭の正則関数の定義は、右辺を左辺に移項して絶対値を取ることで

$$\lim_{z \to z_0} \frac{f(z) -f(z_0) -c(z-z_0)}{|z -z_0|} = 0 $$

を満たす $c \in \mathbb{C}$ が存在することと同値であることがわかります。(分子も絶対値を取っても良いですが、$0$ に収束するので取らなくても良いです。)

このとき、

\begin{gather} z \mapsto \begin{pmatrix}x \\ y\end{pmatrix}, \ \ z_0 \mapsto \begin{pmatrix}x_0 \\ y_0\end{pmatrix}, \ \ c \mapsto \begin{pmatrix} a \\ b\end{pmatrix} \\ h = \begin{pmatrix}x \\ y\end{pmatrix} -\begin{pmatrix}x_0 \\ y_0\end{pmatrix}, \ \ M = \begin{pmatrix} a & -b \\ b & a\end{pmatrix} \\ \end{gather}

とおけば

\begin{align} \lim_{h \to 0}\frac{\tilde{f}(x, y) -\tilde{f}(x_0, y_0) -Mh } {|h|} = 0 \end{align}

を満たします。これは $\tilde{f}$ の実 2 変数関数としての $(x_0, y_0)$ での微分が $M$ であることを意味し、このとき

$$\begin{pmatrix} {\displaystyle \frac{\partial u}{\partial x}} (x_0, y_0) & {\displaystyle \frac{\partial u}{\partial y}}(x_0, y_0) \\ {\displaystyle \frac{\partial v}{\partial x}}(x_0, y_0) & {\displaystyle \frac{\partial v}{\partial y}}(x_0, y_0) \end{pmatrix} = M = \begin{pmatrix}a & -b \\ b & a\end{pmatrix} $$

が成り立つので

\begin{align} \frac{\partial u}{\partial x}(x_0, y_0) &= \frac{\partial v}{\partial y}(x_0, y_0), \\ -\frac{\partial u}{\partial y}(x_0, y_0) &= \frac{\partial v}{\partial x}(x_0, y_0)\end{align}

が成り立ちます。この式をコーシー・リーマン方程式といいます。

議論を逆に辿れば、$u, v$ が $(x_0, y_0)$ で微分可能で、コーシー・リーマン方程式が成り立てば $f$ は $z_0$ で複素微分可能であることがわかります。

領域 $D$ においては、$u, v$ が $D$ で $C^1$ 級 (偏導関数が存在して、$D$ で連続) であれば $u, v$ は $D$ で微分可能なので、$u, v$ が $D$ で $C^1$ 級かつコーシーリーマン方程式を満たせば $f$ は $D$ 上で正則であることがわかります。

ディーバー方程式

形式的に

\begin{align} \frac{\partial}{\partial z} &= \frac{1}{2}\left(\frac{\partial}{\partial x} -i\frac{\partial}{\partial y}\right) \\ \frac{\partial}{\partial \bar{z}} &= \frac{1}{2}\left(\frac{\partial}{\partial x} +i\frac{\partial}{\partial y}\right) \\ \end{align}

とおくと、

$$\frac{\partial f}{\partial \bar{z}} = 0$$

は (実部 $=0$、虚部 $=0$ を計算して) コーシー・リーマン方程式を意味し、これが成り立つとき

$$f^{\prime}(c) = \frac{\partial f}{\partial z} (c)$$

であることがわかります。

特に

\begin{align} \frac{\partial z}{\partial z} = 1, \ \ \frac{\partial z}{\partial \bar{z}} = 0 \\ \frac{\partial \bar{z}}{\partial z} = 0, \ \ \frac{\partial \bar{z}}{\partial \bar{z}} = 1 \\ \end{align}

であり、$f(z) = z$ は正則関数、$f(z) = \bar{z}$ は正則関数でないことがわかります。

連続曲線上の線積分

[杉浦] では線積分の定義の際に、曲線が $C^1$ 級であることを仮定していますが、実は線積分の定義には、曲線が連続で長さが有限である、という仮定で十分であることが知られています (例えば [吉田])。

ここでは [吉田] の方法に倣って、$D$ を $\mathbb{C}$ の領域、$f$ を $D$ 上の (複素数値) 連続関数、$\gamma: [a, b] \to D$ を連続な曲線としたときに、$\gamma$ の長さが有限である、という条件だけから $\gamma$ に沿った $f$ の線積分を定義します。

ただし $\gamma$ の長さ $L(\gamma)$ は、$\Delta$ を $[a, b]$ の分割全体、つまり $a = t_0 < t_1 < \cdots < t_n = b$ を満たす有限個の実数の組 $(t_0, \cdots, t_n)$ 全体の集合としたとき

$$L(\gamma) = \sup_{(t_0, \cdots, t_n) \in \Delta} \sum_{k=0}^{n-1} |\gamma(t_{k+1}) -\gamma(t_{k})|$$

で与えられます。

弧長パラメーター

曲線 $\gamma: [0, b] \to D$ が任意の $t \in [0, b]$ に対して $t = L(\gamma|_{[0, t]})$ を満たすとき、$\gamma$ は弧長をパラメーターとする曲線であるといいます。

曲線 $\gamma: [a, b] \to D$ と $t \in [a, b]$ に対して

$$s(t) = L(\gamma|_{[a, t]})$$

とおくと、$s: [a, b] \to \mathbb{R}$ は単調増加関数になります。また、$t \in [c, d] \subset [a, b]$ で $\gamma(t)$ が一定であるような区間 $[c, d]$ が存在すれば、その区間を 1 点に縮めてできる曲線 $\gamma^{\prime}$ を考えることで、$s$ は狭義単調増加になります。

$s$ が狭義単調増加かつ連続で、長さが有限であれば、逆関数 $s^{-1}: [0, L] \to [a, b]$ が存在するので、$\gamma \circ s^{-1}$ は弧長をパラメーターとする曲線になります。以下、$\gamma$ の長さが有限の場合に $s$ が連続であることを示します。それによって、長さ有限の任意の曲線に対して弧長をパラメーターとする曲線を作ることができます。

$s$ が連続であること

分割 $p = (t_0, \cdots, t_n) \in \Delta$ に対して

$$L_p(\gamma) = \sum_{k=0}^{n-1} |\gamma(t_{k+1}) -\gamma(t_{k})|$$

とおきます。また、

$$|p| = \max_{0 \leq k \leq n-1}\{t_{k+1} -t_k\}$$

とおきます。このとき、任意の $\varepsilon > 0$ に対して $\delta > 0$ が存在して、分割 $p$ が $|p| < \delta$ を満たすならば

$$L(\gamma) -\varepsilon < L_p(\gamma) < L(\gamma)$$

を満たすことが知られています。

これを前提に $t \in (a,b]$ を 1 つ固定すると、$\gamma$ が連続であることから任意の $\varepsilon > 0$ に対して $\delta > 0$ が存在し、$0< t -u < \delta$ のときに $|\gamma(t) -\gamma(u)| < \varepsilon$ を満たすように取れます。また、同じ $\varepsilon$ に対して $\delta^{\prime}$ が存在して、分割 $q = (u_0, \cdots, u_n)$ が $|q| < \delta^{\prime}$ を満たせば

$$s(t) -\varepsilon < L_{q}(\gamma|_{[a, t]})$$

を満たします。$\delta, \delta^{\prime}$ の小さい方を改めて $\delta$ とおけば、$u_{k+1} -u_k < \delta$ のとき

\begin{align} & s(t) -\varepsilon < L_{q}(\gamma|_{[a, t]}) \\ = \ & \sum_{k=0}^{n-2}|\gamma(u_{k+1}) -\gamma(u_{k})| + |\gamma(t) -\gamma(u_{n-1})| \\ < \ & s(u_{n-1}) +\varepsilon \leq \lim_{u \nearrow t} s(u) + \varepsilon \end{align}

となります。$\varepsilon$ は任意なので

$$s(t) \leq \lim_{u \nearrow t} s(u)$$

となりますが、$s$ は単調増加なので逆の不等式も成り立ちます。よって

$$s(t) = \lim_{u \nearrow t} s(u)$$

となります。逆側の極限は、$u_{n-1} \leq t < u_n = u$ となるように分割を取れば

\begin{align} & s(u) -\varepsilon < L_q(\gamma|_{[a, u]}) \\ < \ & s(u_{n-1}) + \varepsilon \leq s(t) + \varepsilon \end{align}

となるので

$$s(t) = \lim_{u \searrow t} s(u)$$

も同様に示され、$s$ が連続であることがわかりました。

線積分の定義

領域 $D$ 上の関数 $f$ の、曲線 $\gamma: [a, b] \to D$ に沿った積分を定義します。ただし $L(\gamma) < \infty$ とします。

$[a, b]$ の分割 $p = (t_0, \cdots, t_n)$ に対して、$t_k \leq \tau_k \leq t_{k+1}$ を満たすように $\tau_0, \cdots, \tau_{n-1}$ を取ります。そして

$$S_p = \sum_{k=0}^{n-1} f(\gamma(\tau_k))(\gamma(t_{k+1}) -\gamma(t_{k}))$$

という和を考えます。この和が分割を細かくしていったときにある値 $I$ に収束するなら、それは$\gamma$ に沿った $f$ の積分であるといえます。以下、ある値 $I$ に収束することを示します。

$S$ が収束すること

別の分割 $p^{\prime} = (t^{\prime}_0, \cdots, t^{\prime}_{n^{\prime}})$ と $t^{\prime}_{k^{\prime}} \leq \tau^{\prime}_{k^{\prime}} \leq t^{\prime}_{k^{\prime}+1}$ を取って、

$$S_{p^{\prime}} = \sum_{k=0}^{n^{\prime}-1} f(\gamma(\tau^{\prime}_{k^{\prime}}))(\gamma(t^{\prime}_{k^{\prime}+1}) -\gamma(t^{\prime}_{{k^{\prime}}}))$$

とおきます。このとき、まず任意の $\varepsilon > 0$ に対して $\delta > 0$ が存在して、$|p|, |p^{\prime}| < \delta$ を満たすならば、

$$|S_p -S_{p^{\prime}}| < \frac{\varepsilon}{2}$$

を満たすことを示します。

まず、$f(\gamma(t))$ は $a \leq t \leq b$ で連続なので、$|t -t^{\prime}| < \delta$ ならば

$$|f(\gamma(t)) -f(\gamma(t^{\prime}))| < \frac{\varepsilon}{4 L(\gamma)}$$

となるように $\delta > 0$ を取ることができます。(これはコンパクト距離空間 $X$ から距離空間 $Y$ への連続写像 $f$ が一様連続であること {ハイネ・カントールの定理というらしい} からわかります。証明は、各 $x \in X$ に対して $f(x)$ を中心とした半径 $\varepsilon/2$ の開球の逆像 $U_x$ をとり、$U_x$ に $x$ を中心とした半径 $2 \delta_x$ の開球が含まれるように $\delta_x$ を取り、中心 $x$, 半径 $\delta_x$ の開球による $X$ の開被覆を考えます。$X$ はコンパクトなので、有限部分被覆が取れて、その中で $\delta_x$ のうち一番小さいものを $\delta$ とおけば条件を満たします。)

このとき、$p$ と $p^{\prime}$ の共通の分割 $p^{\prime\prime}$ をとると、$t_k = t^{\prime\prime}_l$, $t_{k+1} = t^{\prime\prime}_{l+h}$ だとすれば

\begin{align} & \left|f\big(\gamma(\tau_k)\big)\big(\gamma(t_{k+1}) -\gamma(t_k)\big) -\sum_{i =l}^{h+l-1} f\big(\gamma(\tau^{\prime\prime}_{i})\big)\big(\gamma(t_{i+1}) -\gamma(t_i)\big)\right| \\ \leq \ & \sum_{i =l}^{h+l-1}|f(\gamma(\tau_k)) -f(\gamma(\tau^{\prime\prime}_{i}))||\gamma(t_{i+1}) -\gamma(t_i)| \\ < \ & \frac{\varepsilon}{4 L(\gamma)}\sum_{i =l}^{h+l-1}|\gamma(t_{i+1}) -\gamma(t_i)| \end{align}

となるので、分割 $p^{\prime\prime}$ に対する和を $S_{p^{\prime\prime}}$とおけば

\begin{align} |S_p -S_{p^{\prime\prime}}| & < \frac{\varepsilon}{4 L(\gamma)}\sum_{i =0}^{n^{\prime\prime}-1}|\gamma(t_{i+1}) -\gamma(t_i)| \\ & \leq \frac{\varepsilon}{4 L(\gamma)} \cdot L = \frac{\varepsilon}{4} \end{align}

となります。同様に $|S_{p^{\prime}} -S_{p^{\prime\prime}}| < \varepsilon / 4$ も示せるので、

$$|S_p -S_{p^{\prime}}| \leq |S_p -S_{p^{\prime\prime}}| +|S_{p^{\prime}} -S_{p^{\prime\prime}}| < \frac{\varepsilon}{2}$$

となります。

ここで、$[a,b]$ を $n$ 等分する分割に対する和を $S_n$ とおけば、$n > \displaystyle \frac{b-a}{\delta}$ のとき、任意の $m > 0$ に対して

$$|S_{n + m} -S_n| < \frac{\varepsilon}{2}$$

を満たします。これは $S_n$ がコーシー列をなすことを意味し、よって極限 $\lim_{n\to\infty} S_n$ が存在します。これを $I$ とおくと、$n > \displaystyle \frac{b-a}{\delta}$ ならば

$$|I -S_n| \leq \frac{\varepsilon}{2}$$

が成り立ちます。また、分割 $p = (t_0, \cdots, t_{n^{\prime}})$ が $|p| < \delta$ を満たせば、$|S_p -S_n| < \varepsilon / 2$ なので、

$$|I -S_p| < |I -S_n| +|S_n -S_p| < \varepsilon$$

となります。これで、分割を細かくすれば $S$ は $I$ に収束することがわかりました。

この $I$ を $\gamma$ に沿った $f$ の (線) 積分と呼び

$$\int_{\gamma} f(z) dz$$

と表します。

積分が曲線のパラメーターの取り方によらないこと

$\gamma: [a, b] \to D$ を連続な曲線とします。連続写像 $\varphi: [c, d] \to [a,b]$ が与えられたとき、$\gamma \circ \varphi$ は連続曲線になります。もし $\varphi$ が単調増加、つまり $u, u^{\prime} \in [c, d]$ が $u \geq u^{\prime}$ を満たすときに $\varphi(u) \geq \varphi(u^{\prime})$ を満たすなら、$\gamma \circ \varphi$ は $\gamma$ と同じ軌跡を辿るので、$\gamma$ の別のパラメータ表示を与えているといえます (単調増加でなければ逆戻りする)。

連続写像 $\varphi: [c, d] \to [a,b]$ が単調増加のとき、$\gamma$ に沿った積分と $\gamma \circ \varphi$ に沿った積分は一致します。実際 $\varphi$ は (ハイネ・カントールの定理から) 一様連続なので 、任意の $\delta > 0$ に対して $|u -u^{\prime}| < \delta^{\prime}$ ならば $|\varphi(u) -\varphi(u^{\prime})| < \delta$ を満たすように $\delta^{\prime}$ を選ぶことができます。よって自然数 $n$ を $n > \displaystyle \frac{d -c}{\delta^{\prime}}$ を満たすようにとり、$[c, d]$ を $n$ 等分した分割に対する和を

\begin{gather}T_n = \sum_{k=0}^{n-1} f(\gamma \circ \varphi(u_k)) (\gamma \circ \varphi(u_{k+1}) -\gamma \circ \varphi(u_k)) \\ \end{gather}

とおき、$\varphi$ が単調増加であることから $[c,d]$ の分割から $[a,b]$ の分割が得られ、その分割に対する和を $S_n$ とおいたとき

$$\left|\int_\gamma f(z) dz -T_n\right| \leq \left|\int_\gamma f(z) dz -S_n\right| + \left|S_n -T_n\right| < \varepsilon$$

となり、$\varepsilon$ は任意なので

$$\int_\gamma f(z) dz = T_n$$

となります。

曲線が $C^1$ 級の場合

$\gamma: [a, b] \to D$ が $C^1$ 級である場合、つまり

$$\gamma(t) = \gamma_1(t) + i \gamma_2(t)$$

とおいたとき、$\gamma_1$ と $\gamma_2$ が $t$ に関して微分可能で (端点 $a, b$ では片側からの微分をとる)、かつ連続であるとします。このとき

$$\frac{d\gamma}{dt} = \frac{d\gamma_1}{dt} + i \frac{d\gamma_2}{dt}$$

とおきます。

[杉浦] では $\gamma$ が $C^1$ 級であるときに線積分を

$$\int_a^b f(\gamma(t)) \frac{d\gamma}{dt} dt$$

と定義しましたが、これがこの記事や [吉田] のように分割による近似で定義したものと一致すること、つまり

$$\int_\gamma f(z) dz = \int_a^b f(\gamma(t)) \frac{d\gamma}{dt} dt$$

が成り立つことが知られており、具体的な計算を行う場合はほとんどこの式を用います。以下、この式が成り立つことを示します。

証明

任意の $\varepsilon > 0$ に対して分割 $p = (t_1, \cdots, t_n)$ をうまくとれば、

$$S_p = \sum_{k = 0}^n f(\gamma(t_k)) (\gamma(t_{k+1}) -\gamma(t_{k}))$$

とおいたとき

$$\left|\int_\gamma f(z) dz -S_p\right| < \varepsilon$$

を満たします。また、$f(\gamma(t)) \frac{d \gamma}{dt}$ は $[a, b]$ 上の連続関数なので可積分で、

$$T_p = \sum_{k = 0}^n f(\gamma(t_k)) \frac{d \gamma}{dt}(t_k) (t_{k+1} -t_k)$$

とおけば

$$\left|\int_a^b f(\gamma(t)) \frac{d\gamma}{dt} dt -T_p\right| < \varepsilon$$

を満たすように分割 $p$ を取ることができます。このような $p$ は共通に取ることができます。よって後は、$|S_p -T_p| < \varepsilon$ となることを示せば良いです。

ここで、

$$S_p = \sum_{k = 0}^n f(\gamma(t_k)) \frac{\gamma(t_{k+1}) -\gamma(t_{k})}{t_{k+1}-t_k}(t_{k+1}-t_k)$$

と表すことができ、$\gamma(t) = \gamma_1(t) + i \gamma_2(t)$ とおいたとき、平均値の定理から

\begin{align} \frac{d \gamma_1}{dt} (\theta_{k, 1}) &= \frac{\gamma_1(t_{k+1}) -\gamma_1(t_{k})}{t_{k+1}-t_k} \\ \frac{d \gamma_2}{dt} (\theta_{k, 2}) &= \frac{\gamma_2(t_{k+1}) -\gamma_2(t_{k})}{t_{k+1}-t_k} \\ \end{align}

を満たす $t_k < \theta_{k, 1}, \theta_{k, 2} < t_{k+1}$ が存在します。よって

\begin{align} & |S_p -T_p| \\ = \ & \left|\sum_{k = 0}^n f(\gamma(t_k)) \left(\frac{d \gamma_1}{dt}(\theta_{k, 1}) +i\frac{d \gamma_2}{dt}(\theta_{k, 2}) -\frac{d \gamma}{dt}(t_k)\right)(t_{k+1}-t_k)\right| \\ \leq \ & \sum_{k = 0}^n |f(\gamma(t_k))| \left|\frac{d \gamma_1}{dt}(\theta_{k, 1}) +i\frac{d \gamma_2}{dt}(\theta_{k, 2}) -\frac{d \gamma}{dt}(t_k)\right| |t_{k+1}-t_k| \end{align}

となりますが、$\frac{d\gamma}{dt}$ は仮定から $[a, b]$ で連続なので一様連続で、任意の $\varepsilon > 0$ と任意の $t \in [a, b]$ に対して $\delta > 0$ が存在して、$|t -t^{\prime}| < \delta$ ならば

\begin{align} & \left|\frac{d \gamma_1}{dt}(\theta_{k, 1}) +i\frac{d \gamma_2}{dt}(\theta_{k, 2}) -\frac{d \gamma}{dt}(t_k)\right| \\ \leq \ & \left|\frac{d \gamma_1}{dt}(\theta_{k, 1}) -\frac{d \gamma_1}{dt}(t_k) \right| +\left|\frac{d \gamma_2}{dt}(\theta_{k, 2}) -\frac{d \gamma_2}{dt}(t_k)\right| \\ < \ & 2 \varepsilon \end{align}

を満たします。よって $\gamma$ 上の $f$ の最大値を $M$ とおけば、分割を $p$ を十分細かく取れば

$$|S_p -T_p| < 2 \varepsilon M (b-a)$$

が成り立ちます。よって

\begin{align} & \left|\int_{\gamma} f(z) dz -\int_a^b f(\gamma(t)) \frac{d \gamma}{dt}dt \right| \\ \leq \ & \left|\int_{\gamma} f(z) dz -S_p\right| + \left|S_p -T_p\right| + \left|T_p -\int_a^b f(\gamma(t)) \frac{d \gamma}{dt}dt \right| \\ \leq \ & (2 + 2M(b-a)) \varepsilon \end{align}

となり、$\varepsilon$ は任意なので

$$\int_{\gamma} f(z) dz =\int_a^b f(\gamma(t)) \frac{d \gamma}{dt}dt$$

が成り立ちます。

参考文献

[吉田] 吉田 洋一. 函数論 第2版.

[杉浦] 杉浦 光夫. 解析入門 II


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