$\mathcal{Set}$ を集合の圏とし、$\mathcal{C}$ を小圏 (全ての射の集まりが集合である) とします。このとき、前層 $\hat{\mathcal{C}} = \mathcal{Set}^{\mathcal{C}^{op}}$ がトポス (topos) であること、つまり、以下の性質を満たすことを証明します。
- $\hat{\mathcal{C}}$ は全ての有限極限を持つ
- 冪を持つ
- 部分対象分類子 (subobject classifier) を持つ
ただし、以下の知識を前提とします。
- 極限、随伴
- 関手圏の極限は各項毎に計算できること
- 米田の補題、米田埋め込み
- 米田埋め込みが連続であること
目次
有限極限の存在
関手圏の極限は各項ごとに計算でき、$\mathcal{Set}$ が小完備であることから $\hat{\mathcal{C}}$ の任意の有限極限が存在する事がわかります。(証明は別記事「米田埋め込みは連続である」に書いています。)
終対象と pullback が存在すれば任意の有限極限が存在することが知られていますので ([L] 演習問題5.1.39)、その二つを具体的に計算してみます。
終対象
$\mathcal{Set}$ の終対象を $*$ とします。$\hat{\mathcal{C}}$ における終対象が存在すれば、それは各 $c \in \mathcal{C}$ を $*$ に移します。$\mathcal{C}$ の射 $f: c \to d$ の行き先は、$*$ が終対象であることから $\mathrm{id}_*$ になります。よって関手 $\Delta(*) \in \hat{\mathcal{C}}$ が $\hat{\mathcal{C}}$ の終対象になります。終対象は $1$ ( $= \Delta(*)$ ) と表します。
pullback
$P, Q, R \in \hat{\mathcal{C}}$ に対し、自然変換 $\theta: P \to R$ と $\tau: Q \to R$ が与えられているとします。このとき pullback $P \times_R Q \in \hat{\mathcal{C}}$ は、各 $c \in \mathcal{C}$ において以下の図式
\[ \xymatrix{ P \times_R Q(c) \ar[r]^{\mu_c} \ar[d]_{\eta_c} & P(c) \ar[d]^{\theta_c} \\ Q(c) \ar[r]^{\tau_c} & R(c) } \]
を pullback にします。さらに、$\mathcal{C}$ の射 $f: c \to d$ に対し、
$$P \times_R Q(f): P \times_R Q(d) \to P \times_R Q(c)$$
は $P \times_R Q(c)$ の pullback の普遍性から定まる唯一の射になります。また、 $\{\mu_c\}_{c \in \mathcal{C}^{op}}: P \times_R Q \Rightarrow P$ と $\{\eta_c\}_{c \in \mathcal{C}^{op}}: P \times_R Q \Rightarrow Q$ は自然変換になります。
冪の存在
$P, Q \in \hat{\mathcal{C}}$ とし、米田埋め込みを $h_{(-)}: \mathcal{C} \to \hat{\mathcal{C}}$ とおきます。もし冪対象 $Q^P$ が存在したとすれば、米田の補題から任意の $c \in \mathcal{C}$ に対して
$$Q^P(c) = \mathrm{Hom}_{\hat{\mathcal{C}}} (h_c, Q^P) \simeq \mathrm{Hom}_{\hat{\mathcal{C}}} (h_c \times P , Q)$$
を満たします。よって
$$Q^P := \mathrm{Hom}_{\hat{\mathcal{C}}} (h_{(-)} \times P , Q)$$
と定義して、$Q^P$ が冪対象であることを示します。そのためには、任意の $X \in \hat{\mathcal{C}}$ に対して $\mathrm{Hom}_{\hat{\mathcal{C}}}(X, Q^P)$ が $\mathrm{Hom}_{\hat{\mathcal{C}}}(X \times P, Q)$ と一致することを示せば良いです。
任意の $X \in \hat{\mathcal{C}}$ はある余極限 $\varinjlim h_{F(-)}$ で表される事が知られています ([M] III章 7節) 。計算すると、
\begin{align} \mathrm{Hom}_{\hat{\mathcal{C}}}(X, Q^P) &= \mathrm{Hom}_{\hat{\mathcal{C}}}(\varinjlim h_{F(-)}, Q^P) & &\\ &= \varprojlim \mathrm{Hom}_{\hat{\mathcal{C}}} (h_{F(-)}, Q^P) & &\textrm{(米田埋め込みの連続性)} \\ &= \varprojlim Q^P(F(-)) & &\textrm{(米田の補題)}\\ &= \varprojlim \mathrm{Hom}_{\hat{\mathcal{C}}} (h_{F(-)} \times P , Q) & & \textrm{(定義から)} \\ &= \mathrm{Hom}_{\hat{\mathcal{C}}}(\varinjlim (h_{F(-)} \times P), Q) & & \textrm{(米田埋め込みの連続性)} \\ &= \mathrm{Hom}_{\hat{\mathcal{C}}}(\varinjlim (h_{F(-)}) \times P, Q) & & \textrm{(各項毎に計算)} \\ &= \mathrm{Hom}_{\hat{\mathcal{C}}}(X \times P, Q) & &\end{align}
となり、求めたかった等式が得られます。米田埋め込みの連続性については以下で補足します。
小圏 $J$ と圏 $\mathcal{D}$ と図式 $F: J \to \mathcal{D}$ に対して、$\varprojlim F$ が存在すれば
$$\varprojlim h_{F(-)} = h_{ \varprojlim F} $$
が成り立ちます (証明は別記事「米田埋め込みは連続である」)。$\mathcal{D}^{op}$ にこれを適用すると、$F$ の射の向きを逆にしただけの関手 $\bar{F}: J \to \mathcal{D}^{op}$ と米田埋め込み $\bar{h}_{(-)}: \mathcal{D}^{op} \to \widehat{\mathcal{D}^{op}}$ に対して
$$\varprojlim \bar{h}_{\bar{F}(-)} = \bar{h}_{ \varprojlim \bar{F}} $$
が成り立ちますが、左辺は
$$\varprojlim \bar{h}_{\bar{F}(-)} = \varprojlim \mathrm{Hom}_{\mathcal{D}^{op}}(-, \bar{F}) = \varprojlim \mathrm{Hom}_{\mathcal{D}}(F, -)$$
であり、右辺は
$$ \bar{h}_{ \varprojlim \bar{F}} = \mathrm{Hom}_{\mathcal{D}^{op}}(-, \varprojlim \bar{F}) = \mathrm{Hom}_{\mathcal{D}^{op}}(-, \varinjlim F) = \mathrm{Hom}_{\mathcal{D}}(\varinjlim F, -)$$
なので、
$$\varprojlim \mathrm{Hom}_{\mathcal{D}}(F, -) = \mathrm{Hom}_{\mathcal{D}}(\varinjlim F, -)$$
が成り立ちます。先ほどは $\mathcal{D} = \hat{\mathcal{C}}$ の場合に適用しました。
部分対象分類子の存在
$\hat{\mathcal{C}}$ におけるmono射
まずは $\hat{\mathcal{C}}$ におけるmono射がどのようなものであるか確認しましょう。定義から、任意の $P, Q \in Ob(\hat{\mathcal{C}})$ に対し $\theta: P \to Q$ が monic である条件は、任意の $R \in Ob(\hat{\mathcal{C}})$ と $\eta, \mu: R \to P$ に対して $\theta \circ \eta = \theta \circ \mu$ ならば $\eta = \mu$ を満たすことです。
もし任意の $c \in \mathcal{C}$ に対して $\theta_c$ が monic ならば、各 $c$ に対して $\theta_c \circ \eta_c = \theta_c \circ \mu_c$ が成り立ち、$\theta_c$ が monic なので $\eta_c = \mu_c$ となります。よって $\eta = \mu$ となり、$\theta$ は monic になります。
逆に $\theta: P \to Q$ が monic であるとして、任意の $c \in \mathcal{C}$ に対して $\theta_c$ が monic になることを示します。そのために、ある $c \in \mathcal{C}$ に対して $\theta_c$ が monic でないとして矛盾を導きます。$\theta_c: P(c) \to Q(c)$ は集合間の射で、monic でない、つまり単射でないので、異なる $2$ 点 $x, y \in P(c)$ で、$\theta_c(x) = \theta_c(y)$ を満たすものが存在します。米田の補題により、それぞれに対応する自然変換 $\mu^x, \mu^y: h_c \to P$ が存在し、$\mu^x_c(\mathrm{id}_c) = x$, $\mu^y_c(\mathrm{id}_c) = y$ を満たします。$x, y$ の取り方から、
$$\theta_c \circ \mu^x_c(\mathrm{id}_c) = \theta_c \circ \mu^y_c(\mathrm{id}_c)$$
が成り立つので、米田の補題より
$$\theta \circ \mu^x = \theta \circ \mu^y$$
が成り立ちます。$\theta$ が monic であるから、$\mu^x = \mu^y$ が成り立ちますが、これは $x \neq y$ に矛盾します。
これで $\theta$ は monic であることと、任意の $c \in \mathcal{C}$ に対して $\theta_c$ が monic であることが同値である事がわかりました。
mono射 $\theta: P \to Q$ は各 $c \in \mathcal{C}$ に対し包含写像
$$P(c) \subset Q(c)$$
を与えていますので、$\hat{\mathcal{C}}$ のmono射を部分関手とも言います。
部分関手とsieve
もし $\hat{\mathcal{C}}$ に部分対象分類子 $\Omega$ が存在するとすれば、任意の $c \in \mathcal{C}$ に対して部分対象分類子の定義から
$$\Omega(c) = \mathrm{Hom}_{\hat{\mathcal{C}}}(h_c, \Omega) = \{h_c \textrm{の部分関手全体の集合}\}$$
となります。それでは $h_c$ の部分関手はどのようなものなのでしょうか。
$\iota: P \to h_c$ を部分関手とすると、各 $d \in \mathcal{C}$ に対して $P(d) \subset \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(d, c)$ とみなせます。この見方において $f \in \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(d, c)$ に対して $P(f) = – \circ f$ とみなせます。よって、以下の図式において $f \in P(d)$ ならば $f \circ g \in P(e)$ となります。
\[ \xymatrix{ e \ar[r]^g & d \ar[r]^f & c \\ P(e) \ar[d]^{\cap} & P(d) \ar[d]^{\cap} \ar[l]_{P(g)}& P(c) \ar[d]^{\cap} \ar[l]_{P(f)} \\ h_c(e) & h_c(d) \ar[l]_{- \circ g} & h_c(c) \ar[l]_{- \circ f} \\ } \]
そこで、$c$ への射の集合 $S_c$ で以下の条件を満たすものを考えます。
$f \in S_c$ ならば $f \circ g$ が定義できる任意の射 $g$ に対して $f \circ g \in S_c$ が成り立つ
この条件 (右からの合成で閉じている) を満たすものを $c$ 上の sieve と言います。先ほどの議論によって、$h_c$ の部分関手 $P$ に対して
$$\coprod_{d \in \mathcal{C}} P(d)$$
は $c$ 上の sieve になります ( $\mathcal{C}$ は小圏なので上記の直和が存在し、集合になります)。
逆に $c$ 上の sieve $S_c$ に対して部分関手が以下のように得られます。各 $d \in \mathcal{C}$ に対して、
$$P(d) = \{f \mid f \in S_c \textrm{ かつ } f \in \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(d, c)\}$$
とし、$g: e \to d$ に対して $P(g) = – \circ g$ で定めると、$P$ は明らかに部分関手になります。また、この対応が 1 対 1 であることも明らかです。よって
$$\{h_c \textrm{の部分関手全体の集合} \} = \{c \textrm{ 上の sieve 全体の集合} \}$$
と言い換えられます。([MM]には任意の局所小圏でこの対応が成り立つと書いてあります。)
部分対象分類子の構成
$\hat{\mathcal{C}}$ における部分対象分類子 $\Omega$ を構成します。そのためには
- 関手 $\Omega$ の構成
- 終対象 $1$ からの射 $t: 1 \to \Omega$ の定義
- 部分関手 $\theta: P \to Q$ の特性射 $\chi_\theta: Q \to \Omega$ の構成
- 上記の射から構成される図式が pullback であることの証明
を行う必要があります。
関手 $\Omega$ の構成
$c \in \mathcal{C}$ に対して
$$\Omega(c) = \{S \mid S \textrm{ は } c \textrm{ 上の sieve }\}$$
とします。また、$f: d \to c$ に対して $\Omega(f): \Omega(c) \to \Omega(d)$ を、$S \in \Omega(c)$ に対して
$$\Omega(f)(S) = \{g \mid f \circ g \in S\}$$
\[ \xymatrix{ && d \ar[d]^{f} \\ a \ar[r]^{h} & b \ar[ru]^{g} \ar[r]_{f \circ g} & c } \]
と定めます。$\Omega(f)(S)$ が sieve であること及び $\Omega(\mathrm{id_c}) = \mathrm{id}_{\Omega(c)}$, $\Omega(g \circ f) = \Omega(f) \circ \Omega(g)$ を満たすことは定義から明らかです。
よってこのように定めた $\Omega$ は $\mathcal{C}^{op}$ から $\mathcal{Set}$ への関手となります。
$t: 1 \to \Omega$ の定義
$h_c$ に対応する sieve は $c$ を値域に持つ全ての射の集合となります。これを maximal sieve といい、$m_c$ と書きます。$t_c(*) = m_c$ と定めたとき、$t$ が自然変換になるためには、$f: d \to c$ に対して
$$\Omega(f)(m_c) = \Omega(f) \circ t_c(*) = t_d(*) = m_d$$
を満たせば良いです。$m_c$ は $c$ を値域に持つ全ての射を含むので、$d$ を値域に持つ任意の $g$ に対して $f \circ g \in m_c$ となります。よって $d$ を値域に持つ任意の $g$ に対して $g \in \Omega(f)(m_c)$ となり、これは $m_d$ に一致します。
部分関手の特性射の構成
$\theta: P \to Q$ を部分関手とします。この $\theta$ に対して、$\chi_\theta: Q \to \Omega$ を構成します。まずは、$c \in \mathcal{C}$ に対して $(\chi_\theta)_c: Q(c) \to \Omega(c)$ を定義します。そのために、各 $x \in Q(c)$ を $c$ 上の sieve $S$ に対応させます。
以下の図式において、
\[ \xymatrix{ e \ar[r]^g & d \ar[r]^f & c & \\ P(e) \ar[d]^{\cap} & P(d) \ar[d]^{\cap} \ar[l]_{P(g)}& P(c) \ar[d]^{\cap} \ar[l]_{P(f)} & \\ Q(e) & Q(d) \ar[l]_{Q(g)} & Q(c) \ar[l]_{Q(f)} & x \ar@{}[l]|{\ni} } \]
もし $Q(f)(x) \in P(d)$ とすると、図式の可換性から $Q(f \circ g)(x) \in P(e)$ となります。よって射の集合 $S_x$ を
$$S_x = \coprod_{d \in \mathcal{C}} \{f \mid f \in \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}} (d, c) \textrm{ かつ } Q(f)(x) \in P(d)\}$$
とおくと、$S_x$ は sieve になります。$(\chi_\theta)_c(x) = S_x$ とおきます。
もし $x \in P(c)$ であれば $S_x = m_c$ であり、もし $c$ を値域にもつ任意の射 $f$ に対して $Q(f)(x) \notin P(d)$ ならば $S_x = \emptyset$ となります。つまり $S_x$ の大きさは $x$ が $P$ に含まれる度合いを表しているといえます。
$\{(\chi_\theta)_c\}_{c \in \mathcal{C}}$ が自然変換であるためには、$f: d \to c$ に対し
$$(\chi_\theta)_d \circ Q(f) = \Omega(f) \circ (\chi_\theta)_c \tag{*}$$
を満たす必要があります。任意の $x \in Q(c)$ に対して、左辺は
\begin{align} (\chi_\theta)_d \circ Q(f) (x) &= S_{Q(f)(x)} \\ &= \coprod_{e \in \mathcal{C}} \{g \mid g \in \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}} (e, d) \textrm{ かつ } Q(f \circ g)(x) \in P(e)\} \end{align}
であり、右辺は
\begin{align} \Omega(f) \circ (\chi_\theta)_c(x) &= \Omega(f) (S_x) \\ &= \{g \mid f \circ g \in S_x\} \\ &= \coprod_{e \in \mathcal{C}} \{g \mid g \in \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}} (e, d) \textrm{ かつ } Q(f \circ g)(x) \in P(e)\} \end{align}
となります。よって $(*)$ が示され、$\{(\chi_\theta)_c\}_{c \in \mathcal{C}}$ が自然変換であることがわかりました。
図式が pullback であること
ここまで構成してきたものたちを組み合わせると、以下の図式が出来上がります。
\[ \xymatrix{ P \ar[r]^{!_P} \ar[d]_{\theta} & 1 \ar[d]^{t} \\ Q \ar[r]_{\chi_\theta} & \Omega } \]
この図式が pullback であれば、$\Omega$ が部分対象分類子であることが証明されます。
$\mu: R \to Q$ が $\chi_\theta \circ \mu = t \circ !_R$ を満たすとします。このとき、$\eta: R \to P$ を以下のように構成します。
$c \in \mathcal{C}$ に対し、以下の図式
\[ \xymatrix{ x \ar@{}[r]|\in & R(c) \ar@{.>}[rd]^{\eta_c} \ar@/^10pt/[rrd]^{!_R} \ar@/_10pt/[rdd]_{\mu_c} && \\ & & P(c) \ar[r]^{!_P} \ar[d]_{\cap} & 1 \ar[d]^{t} \\ & & Q(c) \ar[r]_{(\chi_\theta)_c} & \Omega(c) } \]
において、$x \in R(c)$ は
$$(\chi_\theta)_c \circ \mu_c(x) = t \circ !_R (x) = m_c$$
を満たします。つまり、$\mu_c(x)$ は $(\chi_\theta)_c$ によって maximal sieve $m_c$ に写されます。よって $\mu_c(x) \in P(c)$ を満たします。これを改めて $\eta_c(x)$ とおきます。
これが自然変換であるためには、$f: d \to c$ に対して
$$P(f) \circ \eta_c = \eta_d \circ R(f)$$
を満たせば良いです。つまり以下の図式の左側の四角が可換であれば良いです。
\[ \xymatrix{ R(c) \ar[r]^{\eta_c} \ar[d]_{R(f)} & P(c) \ar[r]^{\theta_c} \ar[d]_{P(f)} & Q(c) \ar[d]_{Q(f)} \\ R(d) \ar[r]^{\eta_d} & P(d) \ar[r]^{\theta_d} & Q(d) \\ } \]
$\mu$ と $\theta$ が自然変換なので、外側の四角と右の四角は可換です。よって
$$\theta_d \circ \eta_d \circ R(f) = Q(f) \circ \theta_c \circ \eta_c = \theta_d \circ P(f) \circ \eta_c$$
を満たします。ここで、$\theta$ がmono射なので、$\theta_d$ もmono射です。よってmono射の定義から $P(f) \circ \eta_c = \eta_d \circ R(f)$ を満たします。これで自然変換 $\eta$ が構成されました。
最後に、$\eta$ が一意的であることを確認します。もし $\eta^{\prime}: R \to P$ で、$\theta \circ \eta^{\prime} = \mu$ を満たすものが存在すれば、$\theta \circ \eta = \theta \circ \eta^{\prime}$ が成り立ち、$\theta$ がmono射であることから $\eta = \eta^{\prime}$ となります。
以上で最初の図式が pullback であり、$\Omega$ が部分対象分類子であることがわかりました。
参考文献
[J] P.T. Johnstone. Topos Theory
[L] Tom Leinster. ベーシック圏論
[M] S. マックレーン. 圏論の基礎
[MM] Saunders MacLane, Ieke Moerdijk. Sheaves in Geometry and Logic: A First Introduction to Topos Theory
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